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エンジニアたちの作戦計画
第1戦 鈴鹿サーキット

B-Max Racing with motopark

3ニコラス・ラア

ドライバー:ハリソン・ニューウェイ

1.2019年シーズンに向けて

新たにトラック・エンジニアとして活動される方、移籍された方、担当するドライバーに変更があった方、それぞれ自己紹介、担当車両・ドライバーの紹介をお願いします。

私はオーストリア出身で、この冬にレースエンジニアとしてチームMotoparkに入社しました。 その前の1年半、大学卒業直後にF3のシミュレーション・エンジニアとしてすでに彼らと一緒に働いています。今年、私はハリソン・ニューウェイが乗る#51を担当することになりました。 ハリーは、F4とFIA-F3のシングルシーターで走ってきたブリティッシュ・ドライバーです。彼はまた昨年から今冬にかけて、ELMSの耐久レースにレーシングプロトタイプで出場しています。

*ELMS:European LeMans Series。世界耐久選手権の下部カテゴリーとしてヨーロッパ圏内で開催。

3月・2回のテストを通して、SF19との「対話」は進みましたか? どんなキャラクターのマシンだと受け取られていますか? セットアップの「鍵」はどのあたりにありそうですか?

スーパーフォーミュラのような高いレベルの環境の中で働くことは、私自身にとって素晴らしい挑戦です。 クルマのセットアップからして、完璧なバランスを見出すべく、詳細なディテールにまで踏み込んで様々に考えを巡らせ作業を進める、それが我々にとっては非常に興味深いチャレンジなのです。

担当されるドライバーは、競技運転者としてどんな個性、ドライビングのリズムの持ち主でしょうか? ずっとコンビを組んでいて、ファンの皆さんに良く知られているドライバーでも、この際、ぜひ一言(以上)お願いします。

           

ハリソンは、これまでシングルシーターズやエンデュランスのカテゴリーでレースで積んだ経験を元に、スーパーフォーミュラで初めてのシーズンに立ち向かいます。これまで参戦したすべてのチャンピオンシップを見れば彼にはポテンシャルがあるはずで、スーパーフォーミュラでその才能を見せてくれると、私たちはとても楽観的にとらえています。彼はいつも多くのことを考え、また車両の技術面についてできるだけ多くを知りたいと考えるドライバーです。

ドライバーはSF19についてどんな印象を語っていますか?

これまでのところ、ドライバーからはクルマについてポジティブなフィードバックしか得ていません。彼らはダウンフォース、コーナリングスピード、エンジン性能、全てのレベルに感銘を受けていて、彼らはスーパーフォーミュラの「レーシング・スピリット」を心から楽しんでいます。

2.開幕戦・鈴鹿サーキットに向けて

2回のテストの状況、成果を踏まえつつ、鈴鹿における緒戦に向けて、SF19のセットアップは空力、足回りなど、それぞれどのあたりがポイントになると考えていますか?

これはいつものことですが、タイヤをその作動領域の「ウィンドウ」(温度と内圧)に持って行くこと、空力とメカニカルのバランスをその「ウィンドウ」に合わせることが、ドライバーたちが自信を持って走れるかどうかの「鍵」になります。とりわけ鈴鹿は、ほとんどのコーナーが速い向き変えを伴う高速コーナーなので、ここが重要です。 でも、T11(ヘアピン)と最後のシケインでの脱出加速のトラクションのことを忘れないこともまた重要です。
*空力(特性)とメカニカル(グリップ)のバランス:車両運動の基本はタイヤの摩擦力。ダウンフォースを増やせばタイヤを路面に押し付ける荷重が増え、摩擦力を高められるが、それは速度の二乗に比例して変化=効くのは中高速コーナー。車両姿勢変化にも影響される。タイヤの接地状態、そこで発生する摩擦力を安定させ、車体との間でいかにうまく運動につなげるか、がメカニカル・グリップ(サスペンション・セッティング)。*トラクション:駆動力、つまりエンジンの力をタイヤが受け止めて車両を前に押し出す力、その強さのこと。競技運転では、旋回の中から駆動輪(SF19では後輪)の粘着状態を保ち、蹴り出してゆく時が重要。

「持ち込み」セットアップからまず予選、そして決勝に向けてセッティングを煮詰めてゆく中では、どんなことに着目して進めてゆきますか? 例えばコースを走る状態の着眼点、タイムや速度、タイヤ、ドライバーのコメントなど、現時点で想定している範囲でお答えいただければと思います。

ハリーはルーキーであり、競技として鈴鹿を周回したことは限られています。そこでまずはコースをどう使うか、クルマの位置(=レーシングライン)について、できるだけ早く学習すること。他のドライバーたちが、コースだけでなく過去にSF14のレースを経験していることはよくわかっているので、我々は、イベントの前の時間をハードに働き、準備を整えることに集中しています。ヨコハマのタイヤを理解することは、2つの異なるコンパウンドを使う予選、そして250kmのレースにおいて、きわめて重要です。

レース戦略、タイヤ選択と履き替え(ピットストップ)のタイミングなど、どんなパターンが想定されているでしょうか? 現状、何パターンほど考えていますか?

基本的に、フリー走行を終えて、私たちが車両、タイヤおよびコース・コンディションについての情報を収集したところで(レース戦略を)決定することになります。おそらはくいくつか異なるオプションが存在します。

今シーズンは、オーバーテイクシステム(OTS)がレース中の総使用時間100秒、一度作動させた後は100秒の間隔が設定されている、と作動条件が大きく変わりましたが、どんな使い方が考えられるでしょうか?

OTSをどう使うかは、レースの状況に大きく依存します。レース週末にドライバーたちと詳細に話し合い、ラップタイムとオーバーテイクに最適な選択肢を整理することにします。

鈴鹿での開幕戦での目標(成績だけでなく、エンジニアとして“見つけたい”“仕上げたい”ことなどについても)はどのあたりに置いていますか?

私たちのドライバーだけでなく、私たちもスーパーフォーミュラに、そして日本のレースに参戦するのは初めてのことです。したがって、まずは全ての段取りを、つまり、何が、いつ行われるか、それに対して自分たちの作業容量をどのように使うのが良いか、を学ぶことに多くを費やすことになるでしょう。それ以外は、車両仕上げとデータ収集です。予選とレースで、良いクルマのバランスを良くすることに焦点を絞っているので。

今シーズン全体をどう戦ってゆこうと考えているか、最終的なターゲットをどこに置いているか、について教えてください。

私たちは、自分たちの競争力がどのくらいなのかを見きわめる必要があります。私たちが車両や日本のコースについて学ぶことはまだまだたくさんあります。まず私たちが自分たちの能力を最大限に発揮しなければならない。それが最も重要で、あとは我々が何かの折に見出すでしょう。

最後に、スーパーフォーミュラを観戦し、楽しまれているファンの皆様に一言お願いします。

私は、とてもエンスージァスティックで、私たちのスポーツをおおいに楽しんでくれている、日本のファンが大好きです。私たちは皆さんのために、可能なかぎり最高のショーを見てもらうよう、最善を尽くします。そしてこちらは、私たちがすることに皆さんが興味を抱いて見てくれることを楽しんでいます。すでに多くの方々がテストの時に仲間に入ってくれたのも見ましたので、私は本当にレースを楽しみにしています。シーズン中ずっと、コースの周りにいるのを見たいです。あなた方は間違いなく、世界で最高のファンです。一緒に素晴らしいシーズンを過ごしましょう。

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