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サッシャ・フェネストラズが悲願の初優勝

2022年6月19日

朝から好天に恵まれた6月19日(日)の宮城県スポーツランドSUGO。午後からは全日本スーパーフォーミュラ選手権・第5戦の決勝レースが行われた。天気予報では、午後に雷雨が降る可能性があり、実際グリッド試走の時には空から大粒の雨が落ちた。しかし、その後は天候が回復。レースはドライコンディションで行われた。スタート直後から2度のセーフティーカーが出る荒れた展開となったレースでは、タイヤ交換の作戦も大きく分かれた。その中で、スタートを決め、その後も冷静に走り切って嬉しい初優勝を果たしたのは、サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)。好スタートとピット作業の速さでポジションを上げた大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)が2位。逆にスタートとピット作業でひとつずつ順位を下げる形となったPPスタートの野尻智紀(TEAM MUGEN)が3位となっている。

午後1時40分から行われた8分間のウォームアップ走行に続き、各ドライバーがダミーグリッドに着くタイミングが迫る午後1時55分頃。それまで晴れていたSUGOの空からは、バチバチと音を立てて大きな雨粒が降り始めた。この雨粒は、みるみる路面を濡らし、コース上も全体的に濡れてしまうことに。しかし、その5分後、午後2時には雨が止み、再び真夏のような陽射しが戻ってくる。そのため、コース上もあっと言う間にドライアップ。ウェット宣言が出されることもなく、午後2時30分にフォーメーションラップがスタートした。この時点での気温は30℃、路面温度は43℃。ストレートには軽い追い風が吹くような状況だった。

21台のマシンが1周の隊列走行を終えて正規グリッドに着くと、後方ではグリーンフラッグが振られ、シグナルオールレッドからブラックアウト。各ドライバーが53周(もしくは70分)先のゴールに向けて、一斉にスタートを切る。だが、ここでPPの野尻は動き出しが鈍った。一方、予選2番手のフェネストラズは抜群の動き出し。1コーナーまでに野尻の前に出ることに成功する。この2台に続いたのは、好スタートを決め、一番アウト側のラインを取った大湯。これに大津弘樹(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)と続いた。その後方では、予選7番手の山下健太(KONDO RACING)の加速が鈍り、国本雄資(KCMG)が先行。さらに後方から迫った9番グリッドの牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が山下のアウト側に並びかけ、11番グリッドの山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)が山下のインに迫った。1コーナーの進入では、その山本のフロントウィングと山下の右リヤタイヤが軽く接触。山下はスピンし、1コーナーイン側の芝生にマシンを止めてしまう。直前の雨で芝生が滑りやすく、自力では脱出できない山下。そのため、コース上には間も無くセーフティーカーが導入された。

オープニングラップを終えてのオーダーは、フェネストラズ、野尻、大湯、大津、宮田、福住仁嶺(ThreeBond Drago CORSE)、国本、牧野、12番グリッドからポジションを上げた松下信治(B-Max Racing Team)、山本。さらに佐藤蓮(TEAM GOH)、スタートでポジションを上げてきた平川亮(carenex TEAM IMPUL)、坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)、笹原右京(TEAM MUGEN)、ジュリアーノ・アレジ(Kuo VANTELN TEAM TOM’S)、関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)、阪口晴南(P.MU/CERUMO・INGING、小林可夢偉(KCMG)、大嶋和也(docomo business ROOKIE)、そして三宅淳詞(TEAM GOH)。三宅はスタートでエンジンストールしたものの、セーフティーカーが導入されたことで、同一周回のまま隊列の後ろに戻ることに成功した。

山下のマシン回収が終わり、レースがリスタートしたのは7周終了時点。セーフティーカーのライトが消えると、トップのフェネストラズはSPアウトコーナーを立ち上がり、最終コーナーに入る直前から一気に加速。野尻はその加速についていくタイミングが一歩遅れ、後方から大湯が迫った。大湯はその勢いのまま、8周目の1コーナーではアウトから野尻に迫る。しかし、大湯はここでブレーキロックしてしまい、野尻攻略はならなかった。
その後方では、牧野と8番手争いをしていた松下にブレーキトラブルが発生。松下は、1コーナーでコースアウトして激しくクラッシュしてしまう。牧野はギリギリの所で松下との接触なく、コース上に留まった。このアクシデントで、コース上にはすぐさま2回目のセーフティーカーが導入された。
松下のマシン回収にはかなりの時間を要し、セーフティーカーランの状態のまま、タイヤ交換のウィンドウが開く。そのため、10周を終えると、トップのフェネストラズ、2番手の野尻、3番手の大湯、4番手の大津、6番手の福住、7番手の国本と上位陣が続々ピットイン。さらに、山本、佐藤、坪井、笹原、阪口もピットになだれ込んできた。このピット作業ではフェネストラズがトップをキープしてコースに戻る。しかし、2番手争いは逆転。先にピット作業を終えた大湯が野尻の前に出ることに成功した。また、この周ピットに入った山本は、翌周もピットに入り、右リヤタイヤだけを再交換。これで最後尾まで後退することとなった。


 
一方、ここでピットに入らず、ステイアウトを選んだのは、宮田、牧野、平川、アレジ、関口、可夢偉、三宅の7人。中でも、見た目上のトップに立った宮田は、ここからクリーンエアーを得て、フェネストラズに対してマージンを稼いでいく作戦だった。

さて、松下のマシン回収が終わり、レースがリスタートしたのは、14周終了時点。この時点で残り時間は約40分となっており、53周を走り切ることはない状況となった。レースが再スタートすると、宮田はトップを堅持。牧野、平川らステイアウト組が続く。そのステイアウト組の最後尾にいた三宅に迫ったのは、タイヤ交換を終えた中でトップにいたフェネストラズ。そのフェネストラズを攻略しようと、15周目には大湯がオーバーテイクシステムを長時間作動させたが、ここでのポジションの入れ替わりはなかった。逆に、その翌周、今度は野尻がオーバーテイクシステムを作動させながら、大湯に迫る。そのアタックに対して大湯は17周目の1コーナーでブレーキをロックさせながら、ポジションを守った。このように、タイヤ交換組の上位は、2度目のセーフテイーカー明けに、随所で丁々発止のバトルを展開している。

これに対して、見た目上のトップに立った宮田は、1分08秒台のタイムを連発。フェネストラズとのタイム差をジワジワと広げていく。2台の差は、20周を終えた所で13秒231、25周を終えた所で16秒975、30周を終えた所で21秒234まで開く。だが、この頃からは宮田のペースが少しずつ落ち始め、ピットのロスタイム約36秒を稼ぐのは難しい状況となった。また、残り時間も少なくなり始める。

そして、レース終盤に入ると、ステイアウト組がいよいよピットインを開始。38周を終えた所でアレジ、39周を終えた所で平川、41周を終えた所で関口、43周を終えた所で三宅、44周を終えた所で牧野、そして46周を終えた所で、いよいよ宮田と可夢偉がピットに入った。ピットに入る前の周、宮田とフェネストラズの差は27秒044。しかし、その後ろに続いていた大湯や野尻の位置を考えると、宮田も表彰台圏内ではコースに戻れるものと見られていた。ところが、宮田のクルーは右リヤタイヤの交換に手間取り、大きくタイムロス。その結果、宮田は6番手でコースに戻ることになってしまい、表彰台には届かなかった。

全車がピットに入ると、フェネストラズはトップに返り咲き。残り3周をしっかりと走り切ってトップチェッカー。参戦3年目にして嬉しい初優勝を果たす。KONDO RACINGにとっても、2019年第6戦・岡山以来、約3年ぶりの優勝となった。これに続いたのは、大湯。大湯も今季初の表彰台を獲得している。そして3位には野尻が入賞し、今回もポイントを伸ばした。ファイナルラップで、その野尻に対して0.125秒まで迫り、4位に入賞したのは牧野。フレッシュタイヤに履き替えてから、チームメイトの大津をかわした牧野は、その勢いのまま、最後は野尻に迫っている。これに続く5位には大津、6位には宮田。そして、予選ではQ1で敗退し、16番グリッドスタートとなった平川が7位に入賞。牧野と同様、フレッシュタイヤに履き替えてからの平川は鬼神の走りを展開。42周目の馬の背コーナーで笹原を捉えると、44周目の最終コーナーからは佐藤に迫る。早めのタイヤ交換を行なった佐藤もプッシュし続けていたが、勢いは平川が上。45周目の1コーナーでは佐藤がたまらずスピン。その間に平川が前に出た。さらに、47周目の1コーナーでは、平川が国本をオーバーテイク。ファイナルラップの1コーナーでも、平川は福住をかわし7番手まで浮上した。以下、福住、国本、笹原までがポイントを獲得している。

次戦、シーズン後半戦の初戦となる第6戦は7月16日(土)〜17日(日)に行われる。舞台は、開幕戦・第2戦が行われた静岡県富士スピードウェイだが、また新たなウィナーが誕生するのか。はたまたポイントリーダーの野尻やランキング2位の平川、今回の優勝でランキング3位に浮上したフェネストラズら、今季好調のドライバーたちが優勝争いを展開するのか。非常に見応えあるレースが展開されるに違いない。
 

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