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笹原右京(TEAM MUGEN) 大逆転で悲願の初優勝!

2022年7月17日

予選日から一転、好天の汗ばむような陽気となった7月17日(日)。静岡県富士スピードウェイでは、午後から全日本スーパーフォーミュラ選手権第6戦の決勝レースが行われた。スタート直後から多くのアクシデントが発生し、計2回のセーフティーカーが導入されるなど、荒れた展開となった今回のレース。その中で、タイヤ交換のタイミングを上手く合わせたこともあり、嬉しい嬉しい初優勝を果たしたのは、笹原右京(TEAM MUGEN)。悔しい2位には、今季初表彰台の坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)、3位にはスタートと早目のピット作業を成功させたポイントリーダーの野尻智紀(TEAM MUGEN)が入賞。以下、最後尾スタートの宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)、牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、佐藤蓮(TEAM GOH)、山下健太(KONDO RACING)、国本雄資(KCMG)、山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)、大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)までが入賞している。

朝は曇りがちで雨がパラつく時間帯もあった富士。しかし、そこからは晴れ間がのぞき、次第に夏らしい天候となった。そして、気温27℃、路面温度37℃と、今週末を通して最も暖かいコンディションのもと、午後2時30分にフォーメーションラップがスタート。21台のマシンが1周の隊列走行を終えると、正規グリッドに向かった。ところが、ここでハプニングが発生。9番グリッドの松下信治(B-Max Racing Team)がタイヤを温めようとする中、最終コーナーを立ち上がってストレートに入ったところでハーフスピン。松下はそのままコース外の芝生に飛び出す形となり、エンジンもストップしてしまう。そのため、フォーメーションラップがもう1周追加となり、41周の予定だったレースも40周へと1周減算された。松下のマシンはオフィシャルの手を借りて、ピットに戻されたため、ここで権利を喪失。DNS(Do Not Start)となっている。

仕切り直しのフォーメーションラップを終えた20台のマシンは、正規グリッドへ。後方でグリーンフラッグが振られると、シグナルオールレッドからブラックアウト。40周先のゴールを目指して、一斉にスタートが切られた。ここでホールショットを奪ったのは、PPスタートの関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)。2番グリッドの坪井は加速が鈍り、TGRコーナー(1コーナー)では3番グリッドの野尻にアウトから並ばれる。野尻はここで2番手浮上に成功した。これに続いたのは、牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、阪口晴南(P.MU/CERUMO・INGING)、大津弘樹(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)。しかし、その後方ではTGRコーナー(1コーナー)でいきなりマルチクラッシュが発生。上手いスタートを決め、最もイン側のラインを走っていた三宅淳詞(TEAM GOH)が左前方にいた大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)の右リヤに軽く接触。その弾みで、大湯もその左前方、アウト側を走っていた平川亮(carenex TEAM IMPUL)の右リヤに接触する。突然接触された平川はバランスを崩してスピンし、コース上で真横を向く形に。そのノーズ部分に三宅が乗り上げてジャンプした。また、三宅に弾かれた大湯には福住仁嶺(ThreeBond Drago CORSE)も接触。大湯と福住は、いずれもフロントウィングにダメージを追うこととなった。一方、スピン状態となった平川は右リヤタイヤがパンクして、ピットに戻ることができないままリタイヤ。三宅もピットには戻ったものの、フロントサスペンションやフロアにダメージがあったため、そのままリタイヤとなっている。

オープニングラップを終えてのオーダーは、関口、野尻、坪井、牧野、阪口、大津、フェネストラズ。そして、17番手スタートから抜群のスタートを決めた山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)、福住、ジュリアーノ・アレジ(Kuo VANTELN TEAM TOM’S)となっていた。この中で序盤激しいバトルとなったのは、7番手争いのフェネストラズと山本。3周目の1コーナーでは山本がオーバーテイクシステムを稼働させながら、アウトからフェネストラズに並びかける。ここはフェネストラズがポジションを守ったが、山本はオーバーテイクシステムを稼働させたままアウト側のラインから2コーナーへ。フェネストラズも防戦のため、2コーナーの立ち上がりではアウトにラインを振ったが、そこにイン側へとラインを変えようとした山本が接触。フロントノーズでフェネストラズのマシンのリヤのクラッシャブルストラクチャーを引っ掛けるような形となる。その結果、フェネストラズのマシンは高速でスピンし、アウト側のガードレールに激しくクラッシュ。エンジンから後ろの部分がちぎれるほど粉々になった。幸いフェネストラズは自力でコクピットから脱出したものの、このアクシデントにより、コース上にはセーフティーカーが導入される。
このセーフティーカーラン中に、フロントウィングにダメージを負った福住がピットイン。オレンジボールを出された大湯もピットに入った。

フェネストラズのマシンとデブリの回収、コースの清掃などを終え、レースがリスタートしたのは9周終了時。セーフティーカーのライトが消えると、トップの関口は減速して充分なスペースを確保する。そして、最終コーナーの手前から上手い加速を見せると、ポジションをがっちりキープ。オーバーテイクシステムを稼働させた野尻、坪井が2番手争いを見せる。その後方では、福住や大湯のピットインで、9番手までポジションを上げていた笹原と前を行く山本が激しいバトルを展開。オーバーテイクシステムを稼働させた笹原がまずは1コーナーで山本を攻略したが、山本もコカ・コーラコーナーではポジションを奪い返す。だが、笹原は諦めず、100Rからヘアピンにかけて再び前に出ることに成功。続くダンロップでは山本が再逆転を狙ったが、ここは笹原が抑え切った。

その翌周、関口が10周を終えると、ピットに動きが出る。まず上位集団でタイヤ交換のためにピットに入ったのは、2番手を走行していた野尻。また、同じタイミングで6番手を走行していた大津、さらには大湯もピットイン。その翌周には、阪口、山下健太(KONDO RACING)もピットに入る。さらに、12周を終えた所では、牧野、小林可夢偉(KCMG)、福住がピットイン。スタート後に4番手まで浮上していた牧野は、クルーが7秒台という素早い作業を見せたが、コースに戻った時にはギリギリ野尻の前。すでにタイヤが温まっていた野尻が、1コーナーでは牧野の前に出ることに成功した。

ここからトップ争いは、関口と野尻のタイムレースの様相。ピット作業分のマージンは40数秒という所だが、12周終了時の2台の差は44秒126。安全マージンを稼ぎたい関口、ニュータイヤで見えない差を削りたい野尻は、ここからいずれも1分24秒台のタイムを出しながらプッシュを続けた。
この頃、序盤のアクシデントに対して、競技団の裁定が出される。まずスタート直後の1コーナーでのアクシデントに関しては、大湯にドライブスルーペナルティーが科せられ、これに続いて2コーナー立ち上がりの大クラッシュに関しても、山本にドライブスルーペナルティーが科せられる。その裁定に従い、14周を終えた所で大湯はピットイン。16周を終えた所では、山本もピットロードに滑り込む。ドライブスルーを終えてコースに戻った山本のポジションはタイヤ交換を終えた野尻の前。まだタイヤが新しい野尻は次第にタイヤ交換前の山本に追いついて行ったが、前にクルマがいることで関口とのタイム差がなかなか思うように詰まっていかない状況に陥る。一方の関口にとっては、この状況が続く限りピットインを引っ張り、終盤はニュータイヤのグリップを生かして逃げ切りたい所だった。

その後、レース折り返しとなる20周終了時には6番手を走行していたアレジがピットイン。しかし、タイヤ交換を終えたアレジは、ギヤボックスに問題を抱えてマシンを発進させることができず、ここでリタイヤとなってしまう。さらに、21周を終えた所ではアレジに変わって6番手に浮上していた国本がピットイン。そして、24周を終えた所で、野尻を抑える形となっていた山本がタイヤ交換のためにピットに入った。
これを見て動いたのが、関口。山本がピットに入った周、関口と野尻との差は42秒919だった。そして、25周を終えた所で関口はピットロードに滑り込む。クルーは5秒3という驚速の作業を見せ、関口を野尻の前でコースに送り出すことに成功した。野尻は最終コーナーからオーバーテイクシステムを稼働させながら差を詰めてきたが、関口がトップを守った形だ。ところがアウトラップのダンロップコーナーを立ち上がった所で、関口が突然スピン、ストップ。左リヤタイヤの脱落がその原因だった。

これとほぼタイミングを同じくして、ピットに滑り込んだのが坪井。坪井は、関口がピットに入ったのを見て、その翌周のピットインを狙っていた。そして、坪井が作業を終えるか終えないかというタイミングで、メインフラッグタワーでは関口のスピンによってセーフティーカー導入のサインが提示される。坪井が作業を終えてピット出口を出ようかという所で、他の全ポストでも黄旗とSCボードが提示された。コースに戻った坪井は、第2セーフティカーラインで野尻の前に出ることには成功。しかし、コース上にはまだセーフティーカーが入っていなかった。SCボードを見ただけでなく、野尻の前に出た坪井は、ここから減速してコースを1周してしまう。一方、このセーフティーカー導入をきっかけに、27周を終えた所でピットに滑り込んだのが、笹原、宮田、佐藤。笹原はタイヤ交換を終えると、坪井の前でコースに戻ることに成功、トップに浮上する。また、宮田も作業を終えると4番手で第2セーフティーカーラインを通過。最後尾スタートだったが、大きくポジションを上げることに成功した。

その後、関口のマシンと外れたタイヤの回収が終わり、レースがリスタートしたのは30周終了時。そこからの10周、トップに立った笹原は危なげなく走り切り、嬉しい初優勝を果たした。これに続いたのは坪井。セーフティーカー導入のタイミングに泣かされる形となり、悔しい2位ではあったが、今季初表彰台を獲得している。リスタート後、3番手の野尻と4番手に浮上した宮田は接近戦を展開。だが、追い上げのためにダウンフォースをギリギリまで削っていた宮田は、コーナー区間で野尻に置いていかれる形となり、逆転はならなかった。野尻はポジションを守り切り3位表彰台を獲得。以下、宮田、牧野、終盤山下をかわした佐藤、山下。さらに国本、山本、大湯までがポイントを獲得した。

ランキング2位の平川、3位のフェネストラズがリタイヤでノーポイントとなった今回のレース。その中で野尻は手堅くポイントを伸ばし、ここまで93ポイントを獲得。平川に対して29ポイント、フェネストラズに対して36ポイントと大きなギャップを築いた。次大会、モビリティリゾートもてぎは2レース制となるが、ここで2 年連続タイトルを決定づけるのか。あるいはもてぎを得意としている平川が2連勝して追いつくのか。いよいよシーズンは終盤戦に突入する。

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