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アレックス・パロウ(TCS NAKAJIMA RACING)が独走劇でルーキー初優勝

2019年7月14日

アレックス・パロウ(TCS NAKAJIMA RACING)が独走劇でルーキー初優勝
坪井翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)が2位表彰台を獲得

小雨がそぼ降るコンディションの中、セーフティーカースタートで行われた全日本スーパーフォーミュラ選手権第4戦決勝。だが、コース上では各所でバトルが展開され、エキサイティングなレースに観客も歓喜した。そのレースでPPからスタートし、独走劇を見せて優勝したのは、これが4戦目となるルーキーのアレックス・パロウ(TCS NAKAJIMA RACING)。予選2番手の坪井翔(JMS P.MU/cerumo・INGING)が、終盤後方から迫ったニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)の追撃を凌ぎ切って、2位。初の表彰台を獲得した。3位には予選5番手からスタートしたキャシディが入賞している。

小雨の朝を迎えた静岡県富士スピードウェイ。午前8時40分からのフリー走行は完全なウェットコンディションのもとで行われた。その後、富士の天候は回復方向に。お昼頃には完全に雨が止み、サポートレースのTCRジャパンが行われている頃には、少しずつ路面も乾き始めた。そのため、決勝前に8分間で行われたスーパーフォーミュラのウォームアップ走行では、スリックタイヤを装着するドライバーも。しかし、グリッドへの試走が近づくと、再び灰色の空から小糠雨が降り始め、路面は完全なウェットコンディションに戻ってしまった。中には、関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)のように、スリックタイヤでダミーグリッドについたドライバーもいたが、最終的には全車レインタイヤを装着してレースに臨むこととなった。また、コンディションが悪化したこともあり、レースはセーフティーカースタートによって行われることが決定している。
午後1時45分、気温22℃、路面温度23℃というコンディションのもと、レースはスタート。2周に渡って隊列走行が行われる。そして、3周を終了したところでセーフティーカーがピットロードへ。ここから実質的にレースがスタートした。

ここで一気に2番手とのギャップを広げたのは、PPスタートのパロウ。坪井、関口がそれに続く。その後方では4番手争いが激化。ヘアピンでキャシディが野尻智紀(TEAM MUGEN)に並びかける。ここでは野尻がポジションを守ったが、続くダンロップコーナーのブレーキングではキャシディが野尻のインに飛び込み、ポジションを上げることに成功した。また、さらに後方では、平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)とルーカス・アウアー(B-Max Racing with motopark)が国本雄資(KONDO RACING)をオーバーテイク。小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG)と山下健太(KONDO RACING)がアーテム・マルケロフ(UOMO SUNOCO TEAM LEMANS)をオーバーテイクするなど、ポジションの入れ替わりが見られた。この中から、最も勢いある走りを見せたのは、可夢偉。可夢偉は5周目のGRスープラコーナーで国本を捉えると、7周目のダンロップコーナーではブレーキングでルーカス・アウアー(B-Max Racing with motopark)のインに飛び込み、さらにポジションをあげた。
一方、トップ争いは、パロウが1分43秒台前半のタイムを連発して逃げの体制。今回は各ドライバーとも燃費がギリギリということでセーブする走りを強いられたが、最初からリフト&コーストの走りに徹した坪井は次第に引き離されていった。3番手の関口、4番手のキャシディも状況はほぼ同じ。パロウも途中からは燃費走行に徹し、レース中盤にはどのドライバーも一人旅状態となった。その後方では、5番手の野尻に石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO・INGING)が接近、さらに9番手争いの山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、中嶋一貴(VANTELN TEAM TOM’S)、福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、可夢偉も一つの集団となってくる。石浦は再三、野尻のテールに迫ったが、なかなか前に出ることは叶わない。一方、9番手争いに関しては、18周目に動きが出た。GRスープらコーナーの立ち上がりで、山本がバランスを崩してスピン。一貴、福住、可夢偉が先行する。可夢偉はこの時の勢いのまま、最終コーナーで福住のインに飛び込んだが、立ち上がりでハーフスピン。ここは福住がポジションを守った。さらに福住攻略を諦めない可夢偉は、合間を詰めていくものの、1コーナーでオーバーラン。なかなか前に出ることはできなかった。

一方、山本がいなくなったことで前が開けた一貴はペースアップ。8番手を走行していた牧野任祐(TCS NAKAJIMA RACING)に迫っていく。牧野も必死でポジションを守っていたが、一貴の後ろには福住と可夢偉も追いつき、4台による攻防となった。その中で、22周の1コーナーでは一貴がオーバーテイクシステムを使用しながら、牧野のイン側に並びかける。ここでも牧野は守っていたが、コカ・コーラコーナーで一貴が前に出ることに成功する。さらに、牧野は続く100Rでコース外に大きくオーバーラン。その間に、福住と可夢偉も牧野の前に出た。この後、福住と可夢偉は何周にも渡って接近戦を展開。だが、なかなか可夢偉は前に出ることができない。この2人がバトルしている間に、一貴は自分のペースで差を広げ、前を行く大嶋和也(UOMO SUNOCO TEAM LEMANS)に追いついていった。そして、ペースが上がらなくなっていた大嶋を32周目の1コーナーでアウトから豪快にオーバーテイク。またひとつポジションを上げている。この一貴に続きたい可夢偉は、33周目の1コーナーやヘアピンで福住に迫るも、逆転はならず。逆に、34周目の1コーナーでは、一貴にかわされてポジションを落とした大嶋に福住が迫る。しかし、福住はここでオーバーシュート。コカ・コーラコーナーでは大嶋がポジションを守った。この前の動きを見逃さなかったのが可夢偉。可夢偉は同じ周の最終コーナーで福住のインに飛び込むと、ストレートではオーバーテイクシステムを起動させ、ようやく福住の前に出ることに成功した。可夢偉はその後、37周目の最終コーナーで大嶋もパス。予選19番手からついに入賞圏内までポジションを上げてきた。
 一方、この頃、にわかに白熱し始めたのは2番手争い。35周を過ぎたところから、3番手の関口と4番手のキャシディがペースを大きくあげて、坪井とのギャップを削り取っていく。42周を終えたところで坪井と関口の差は2秒6余り、関口とキャシディの差は3秒1余りということで、終盤は三つ巴になるものと見られた。ところが、関口は43周を終えたところで給油のためにピットイン。可夢偉の後ろでコースに戻ることに。前が開けたキャシディは、ここから坪井に迫っていった。
 その後方では、5番手争いも激しくなる。野尻攻略に手こずっていた石浦に一貴が迫り、47周目のヘアピンでオーバーテイク。一貴はそのまま48周目の最終コーナーで野尻のインに飛び込む。ここからの立ち上がりは野尻の方が速く、一貴は49周目の1コーナーに向かうところでオーバーテイクシステムを起動させる。しかし、もう残り秒数がなく、一貴のシステムはダウン。逆に野尻はまだ残っていたオーバーテイクシステムでこの場を凌いだ。それでも一貴は野尻に食らいつき、同じ周の最終コーナーで前に迫るが、ここでミスを犯してオーバーラン。その隙に石浦が一貴からポジションを取り返す。しかし、一貴は52周目には再度、石浦を攻略。もう一度、野尻を追うことになった。
 この頃、坪井とキャシディの2番手争いも最接近。50周目のダンロップコーナーのブレーキングから最終コーナーにかけて激しい攻防となる。最終コーナーではキャシディが坪井のインに飛び込むが、坪井はアウトから上手く被せてポジションを死守。51周目の1コーナーでは2人ともオーバーテイクシステムを使用しながらのバトルとなるが、ここでも坪井が前を守る。結局、坪井は最後まで2番手のポジションを明け渡すことはなかった。その後方では、可夢偉が1コーナーで石浦をパス。ついに6番手まで浮上した。
 この段階で、レースの残り規定時間は2分弱。そのため、55周ではなく、95分間のタイムレースとなり、53周終了時にチェッカーが提示される。このチェッカーを最初にくぐったのは、坪井に13秒余りの差をつけて独走となったパロウ。TCS NAKAJIMA RACINGにとっては、2010年開幕戦での小暮卓史以来、9年ぶりの優勝を果たした。これに続いたのは、坪井とキャシディ。4位には、後方からのアタックを凌ぎ切った野尻が入った。以下、素晴らしい追い上げを見せた一貴、可夢偉。そして、石浦、関口までがポイントを獲得している。今回、山本がノーポイントに終わったのに対し、キャシディが6点を加算したことで、2人の差は5ポイントに縮小。初優勝を果たしたパロウがランキング3位、坪井がランキング4位に浮上した。

決勝リザルト

優勝したアレックス・パロウ(TCS NAKAJIMA RACING)
2位表彰台を獲得した坪井 翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)
3位表彰台ニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)

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