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開幕戦は平川 亮がポール・トゥ・ウイン
2020年8月30日
残暑厳しい8月30日(日)の栃木県ツインリンクもてぎ。午前中の予選終了から約3時間の間に、チームやドライバーたちは準備を整え、午後2時15分からは全日本スーパーフォーミュラ選手権の開幕戦が行われた。昨年の最終戦からほぼ10ヶ月ぶりとなるこのレースを制したのは、予選PPからスタートした平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)。2位には好スタートを決めた山下健太(KONDO RACING)、3位には注目ルーキーのサッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)が入賞し、表彰台を獲得している。
朝と比べれば、時々雲に太陽が遮られるコンディションとなったもてぎ。午後1時半からは、決勝スタートに向けて、ウォームアップ走行が開始される。新型コロナウィルス感染拡大防止の意味もあり、今回の開幕戦は昨年の51周から16周短い35周(もしくは70分間)のスプリント。給油が禁止されており、タイヤ交換の義務付けもないため、スタートからゴールまで、ドライバーは自分の腕だけで戦わなければならない。そこで大きな鍵を握るのは、何と言ってもスタートとなる。さて、その注目のスタートに向けて、ダミーグリッドに着いたのは18台のマシン。名取鉄平(Buzz Racing with B-Max)は、レース前にチームからリタイヤ届けが提出され、決勝への出走を見送っている。
その後、雲が切れて再び晴れ渡ったもてぎは気温40℃、路面温度46℃まで上昇。ドライバーにもマシンにもタイヤにも厳しいコンディションのもと、午後2時15分にフォーメーションラップがスタート。ペースカーの後ろで、18台のマシンがゆっくりとタイヤに熱を入れていく。そして、1周の隊列走行を終えると、全車正規のグリッドに整列。後方でグリーンフラッグが振られると、シグナルオールレッドからブラックアウトし、一斉にスタートが切られた。
ここでまずまずの動き出しを見せてホールショットを奪ったのは平川。予選2番手のフェネストラズは若干加速が遅れる。そのアウト側からいい動き出しを見せて2番手に浮上したのは、山下。山下はここからオーバーテイクシステムを使って平川攻略を試み、2コーナーや3コーナーでは横に並びかけるところまで行ったが、前に出ることは叶わなかった。さらにスーパースタートを決めて中央突破を試みたのが中嶋一貴(VANTELN TEAM TOM’S)。フェネストラズに詰まる形で少し遅れを取った大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)を1コーナーまでにオーバーテイクした一貴は、フェネストラズにも迫ったが、2コーナーではフェネストラズがポジションを守っている。さらに1コーナーで一番アウト側のラインを取った関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)はそのまま大外を回ってイン側にいた大湯の前に出ただけでなく、一貴にも迫ったが、2コーナー立ち上がりの縁石に乘る形となって若干バランスを崩し、一貴攻略はならなかった。さらには8番手スタートの小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG)は一番イン側のラインを選択すると、2コーナーも小さく回り、4コーナーの立ち上がりまでに大湯をパス。さらに福住も5コーナーで大湯をかわして行った。その後方では、同じ5コーナー手前で坪井翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)がタイヤからスモークを上げ、止まり切れずにコースアウト。グラベルにストップして、早くも戦列を去る。坪井は3コーナーで国本雄資(carrozzeria Team KCMG)と接触して、左フロントタイヤにダメージを負っていた。さらにヘアピン立ち上がりでは、スタート後にポジションを落としていた大湯がスローダウン。大湯はスタート後のつばぜり合いの中で関口と接触しており、フロントウィングにダメージを負って、ピットへと戻った。
オープニングラップを終えてトップで戻ってきたのは平川。これに山下、フェネストラズ、一貴、関口、可夢偉、福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、国本、ニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)というオーダー。もてぎを得意とするチャンピオン経験者の石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO・INGING)は、スタートこそ良かったものの、その後の混乱で行き場所をなくして大きくポジションを落とし、11番手まで後退。一時は入賞圏外を走る状況となっている。
この後、3周目の最終コーナーでは3番手のフェネストラズがバランスを崩してハーフスピン。そこに一貴が迫る。関口、可夢偉、福住らもこの2台に対して僅差まで迫った。だが、フェネストラズは何とか体制を立て直して3番手のポジションをキープ。そこからトップ4台は等間隔で周回を重ねていくこととなった。これに対して、5周目あたりから遅れ始めたのは5番手の関口。金曜日のテストから決勝セットアップでのクルマの挙動に悩まされていた関口は、後方から迫る可夢偉、福住、山本、国本らに対して、防戦一方のレースを強いられた。その集団の中で、6周目には可夢偉がオーバーテイクシステムを使いつつ関口攻略を試みるが、ここは一旦引く形に。また14周目に動きを見せたのは国本。国本は1コーナーからオーバーテイクシステムを使って山本に迫るが、2コーナーで前に出ることはできなかった。さらに、レースを折り返した19周目には福住がヘアピン立ち上がりから可夢偉のスリップに入る。ここから2台はオーバーテイクシステムを使いながらの攻防。その結果、福住は90度コーナーでアウト側から可夢偉をパス。続いて前を行く関口に迫って行った。さらに、その翌周、20周目には山本が可夢偉攻略を試みる。山本は福住と同様、90度コーナーでイン側から可夢偉の前に出ようとしたが、そのブレーキングポイント直前のストレート区間で可夢偉に追突。ここで可夢偉が右リヤタイヤにダメージを負っただけでなく、山本もフロントウィングを破損し、いずれもピットインを余儀なくされた。この2周後には国本もピットイン。そのままマシンをガレージに入れている。山本と可夢偉は、15周目を終えるところでタイヤ交換を行なった笹原右京(TEAM MUGEN)、17周を終えるところでタイヤ交換を行なったタチアナ・カルデロン(ThreeBond Drago CORSE)の後方でコースに戻ることとなっている。
そして、21周目にはいよいよ福住が関口に迫る。2台ともにオーバーテイクシステムを使いながらの攻防となったが、まずは福住が1〜2コーナーでアウトから並びかける。しかし、ここは関口がポジションを死守。3〜4コーナーも関口が守り切った。だが、5コーナーの進入で福住のフロントウィング右側の翼端板が関口の左リヤタイヤに軽く接触。タイヤはそのままパンクし、関口はS字の入り口でスピンアウトすると、ここでレースを終えることとなった。その時点で4番手の一貴と、5番手に浮上した福住の差は18秒余り。ここから福住は他を圧倒するペースで追い上げを開始した。このように上位につけていた他のドライバーが次々脱落していく中、福住に続いたのはキャシディ。さらに野尻智紀(TEAM MUGEN)、石浦、牧野任祐(TCS NAKAJIMA RACING)、大嶋和也(ROOKIE Racing)らがしぶといレースを見せて、これに続く。ここまでが入賞圏内だ。終盤に入ると笹原がポイントを狙って大嶋に迫ったが、大嶋は最後まで動じることなく走り切っている。
一方、トップ4台の攻防は、レース中盤から全くの膠着状態となる。トップの平川も決勝のセットアップが完璧だったわけではなく、2番手の山下を引き離していくことはできなかった。対する山下は、平川との間合いを保っての走行となったが、レース終盤に入ると「自分の方に余裕がある」と感じ、平川の攻略を試みる。ファイナルラップを迎えたところでその差は0秒521。ここからは2台揃ってかなりの長時間、オーバーテイクシステムを作動させながらの攻防となったが、平川が辛くも逃げ切り、今季初優勝をポール・トゥ・ウィンで決めた。結果、平川は合計23ポイントと大量得点を物にしている。2位には山下、3位にはこれがデビュー戦のフェネストラズ。KONDOレーシングが2人揃って表彰台を獲得している。
第2戦・岡山が行われるのは、4週間後の9月27日(日)となるが、次は一体誰が勝利の美酒を味わうのか。興味が尽きない1戦が展開されるのは間違いない。