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野尻智紀が初タイトルに王手! 完勝で今季3勝目
2021年8月29日
前日の真夏の太陽が和らぎ、空が雲に覆われた8月29日(日)の栃木県・ツインリンクもてぎ。午後には全日本スーパーフォーミュラ選手権・第5戦の決勝レースが行われた。35周で行われたこのレースで優勝を果たしたのは、PPからスタートした野尻智紀(TEAM MUGEN)。野尻は今季3勝目を挙げ、初のチャンピオンタイトルに王手をかけた。2位には関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)、3位には松下信治(B-Max Racing Team)。終盤、その松下をオーバーテイクしようと、幾度もアタックを仕掛けた平川亮(carenex TEAM IMPUL)が4位となっている。
気温31℃、路面温度36℃と、予選の時に比べてかなり涼しいコンディションとなったもてぎ。いよいよ午後2時にはフォーメーションラップがスタートした。19台のマシンが1周の隊列走行を終えて、正規グリッドに着くと、後方でグリーンフラッグが提示。そして、シグナルオールレッドからブラックアウト。全車が35周先のゴールに向けて一斉にスタートを切った。ここでホールショットを奪ったのはPPの野尻。今季ここまでのレースで幾度もスーパースタートを決めている2番グリッドの関口は、今回のスタートはまずまずということで、1コーナーで野尻の前に出ることはできなかった。この後方で好スタートを切ったのは、5番グリッドの平川。平川は中央突破のラインを通ると、大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)の前に出て、3番グリッドの松下に迫る。しかし、1コーナーではアウト側の松下の方に速さがあり、平川の先行を許さなかった。そこからトップ5台、野尻、関口、松下、平川、大湯はいずれもオーバーテイクシステムを稼働させながら5コーナー辺りまで攻防を見せたが、ここでのポジションの入れ替わりはなかった。これに続いたのは、阪口晴南(P.MU/CERUMO・INGING)、大津弘樹(Red Bull MUGEN Team Goh)。しかし、その後方では、オープニングラップのV字コーナーでアクシデントが発生する。8番手争いを展開していた福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)の後方に山下健太(KONDO RACING)が迫り、ブレーキングで山下が福住のリヤのテールに接触。福住がバランスを崩してハーフスピンしたところに、行き場をなくした塚越広大(ThreeBond Drago CORSE)が乗り上げる形となって、クラッシュした。さらに後方のマシンはアクシデントの現場で減速を余儀なくされたが、大嶋和也(NTT Communications ROOKIE)は中山雄一(KONDO RACING)に追突されてスピン。エンジンがストップしてしまい、再スタートが切れなかった。結果、ここで一気に3台が姿を消すことになる。またその先の90度コーナーでは、9番手争いの坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)、牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、ジュリアーノ・アレジ(Kuo VANTELN TEAM TOM’S)の3台が接近戦のバトル。坪井にアウトから迫った牧野のインをアレジがうかがう。コーナーに入る所では、アレジの左フロントが牧野の右リヤに接触する場面もあった。
コース上にはここでセーフティーカーが導入。V字コーナーのマシン回収とコース上に散らばったデブリの回収を行うためだ。福住、塚越、大嶋、3台のマシン回収が終わると、4周終了時にレースはリスタートされた。
ここからトップの野尻は、ファステストラップを連発。関口を引き離して行く。逆に関口、松下、平川は一つのパックになり、6周目の90度コーナーでは平川がオーバーテイクシステムを作動させながら、松下に迫る場面もあった。その後方では、7番手争いに動きが。最終コーナーの縁石に乗り、姿勢を崩したことがきっかけで、大津のマシンはアンチストールシステムが作動して失速。立ち上がりでもすぐには加速できず、11番手とポイント圏外に後退してしまう。代わって、山下が7番手、坪井が8番手、牧野が9番手、リスタート後にアレジをかわした宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)が10番手に浮上した。その翌周、7周目には、アレジがオーバーテイクシステムを稼働させながら、3コーナーで大津の背後に迫るが、ここでの逆転はならず。逆に同じ周、アレジは後方から迫った国本にパスされてしまうことになった。
さて、トップの野尻が10周目に差し掛かると、ピットロードは一気に慌ただしくなる。多くのチームがタイヤ交換の準備を始めたからだ。そして、野尻が10周目のセーフティーカーラインを超えると、2番手走行中の関口、5番手の大湯、6番手の阪口、7番手の山下、さらには大津、国本が一気にピットになだれ込んできた。この6台の中では、ポジションの入れ代わりも発生。阪口が大湯の前に出ることに成功している。
またその翌周には、トップの野尻がピットイン。野尻のクルーは、7秒7という時間で作業を終え、野尻は関口の前でコースに戻ることに成功した。山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)、中山、小高一斗(KCMG)もこの周ピットに入った。また、この直前、山下にドライブスルーのペナルティーが出される。これは福住に追突したことが原因。ルーティンのピット作業を終えていた山下は、再びピットロードを通過。大きくポジションを落とすこととなった。
これで前が開ける形となったのは、松下。だが、タイヤを交換した野尻や関口の方が、松下よりもコンマ4〜5秒ラップタイムが速かった。そのため、松下は15周を終えた所でピットインするが、この段階では野尻に対して24秒386、関口に対して25秒825というマージンだったこともあり、作業を終えてコースに戻った時は、2人の後ろ。ポジションの逆転はならなかった。
さらに松下がピットに入ったことで、クリーンエアの中での走行が可能になったのは、平川。平川は、ここから1分34秒台のタイムを連発し、野尻との見えない差を削りたい所だった。しかし、野尻も平川とほぼ同等のタイムで周回。2台の差は20周を終えた所で24秒025、25周を終えた所でも25秒103と、なかなか思うようには広がっていかなかった。一方、この時点で平川と関口の差は26秒827、平川と松下の差は28秒611。ピット作業での逆転が視野に入ってきた。
そして、26周を終えた所で平川はピットイン。しかしわずかに作業に手間取り、8秒というストップ時間。平川はオーバーテイクシステムを作動させながらメインストレートに入ってきた関口と松下の間でコースに戻る。ただ、冷えたタイヤだったこともあり、1コーナーでは松下の先行を許すこととなった。平川は再逆転したい所だったが、その気持ちが先行したのか、アウトラップの5コーナーではブレーキロックする場面も見られた。
しかし、その後はタイヤがより新しい平川が、再三再四、松下に揺さぶりをかける展開。32周目の3コーナーで、松下が若干ブレーキをロックさせると平川は背後に迫り、バックストレートではオーバーテイクシステムを作動させながらインから松下攻略を試みる。だが、松下も上手くラインを塞いだ。さらにインに動いた平川は激しくブレーキロック。ここでの逆転はならなかった。それでも平川は諦めず、34周目のS字の進入では再びオーバーテイクシステムを作動させながら、松下のインに飛び込んだ。ところが、平川はここで止まり切れずにオーバーラン。スピンこそ免れたが、松下の前に出ることはできなかった。
一方、最終盤はトップ争いもかなり白熱。残り3周という時点で、トップの野尻は3秒008というマージンを保っていたが、ラップタイムは1分35秒台。それに対して2番手の関口は1分34秒台のタイムを連発。ファイナルラップに入る所で2秒103まで迫ってきた。さらに、ファイナルラップに入ると、関口は残っていたオーバーテイクシステムを使い切るまで作動させ続ける。バックストレートに入る所ではすでに残量が少ないことを示す赤いランプの点滅となったが、追撃の手を緩めなかった。
しかし、残念ながら、最後の逆転はならず、野尻がトップチェッカー。今季3勝目を挙げた。これに続いたのは、2戦連続の表彰台となる関口。3位には、第3戦・オートポリス以来2度目の表彰台となる松下が入賞した。以下、平川、ピットでの逆転を果たした阪口、大湯、牧野、宮田、坪井、大津までが入賞を果たしている。
ランキングでは、ここまでもトップだった野尻が23点を加算。76ポイントまでポイントを伸ばし、初のタイトルに王手をかけた。今回、6位で5点を加算した大湯が41ポイントでランキング2位、関口が39.5ポイント、今回リタイヤに終わった福住が34ポイント、平川が31ポイント。計算上、残り2戦でタイトルの可能性が残っているのは、この5人ということになるが、野尻以外はいずれも自力でのタイトル獲得が不可能な状況となっている。次戦は10月、今回と同じもてぎでのレースとなるが、最終戦を待たずに、ここで野尻が初戴冠を果たすのか。それとも何かしらの波乱が起こるのか。いずれにしても、非常に楽しみな1戦となりそうだ。