Headline News
番狂わせも期待される2年ぶりの開催は、初めてのヨコハマタイヤと2スペック制 第5戦 オートポリス・プレビュー
2017年9月5日
ピエール・ガスリーの初優勝で幕を閉じた全日本スーパーフォーミュラ選手権第4戦 ツインリンクもてぎ。それから3週間のインターバルを挟んで、今週末には大分県 オートポリスでシリーズ第5戦が開催される。昨年は、震災の影響でやむなくキャンセルされたが、今年は2年ぶりに火花散る熱戦が帰ってくることとなった。使用するタイヤがヨコハマタイヤになってからは初開催。しかも、今回はオートポリスとしては初めて2スペックのタイヤが使用される。合同テストも行われていないことから、もてぎ同様、不確定要素が満載。誰が勝つか分からないという部分でも興味をそそる。また、九州や中国地方のファンの方々にとっては、久々に国内トップフォーミュラならではの迫力あるスピードを体感するチャンスとなるはずだ。
実は、このオートポリスでは、今年各チームが持ち回りで担当する開発車によるエンジンテストがすでに行われ、チーム インパルとチーム・ムゲンが参加。同時に、横浜ゴムが前回のツインリンクもてぎに持ち込んだ、新しいソフトタイヤの最終確認テストも実施している。その分、この2チームには多少オートポリスでの経験はある。というものの、開発テストはあくまでも“開発”がメイン。チームがセットアップに費やす時間は余りなく、各ドライバーの走行時間が限られる。そのため、このテストが大きなアドバンテージになるとは言い切れず、今回もレースウィークの金曜日午後に行われる1時間の専有走行がクルマの状況を確認する上で重要となってくるはずだ。震災によってダメージを受けたコースは路面が張り替えられており、以前よりはスムーズになったというものの、持ち込んだセットアップが正解なのかどうか。もてぎ大会から持ち越したユーズドのソフトタイヤでの予選シミュレーションタイムはどれぐらいなのか。グリップの持ち具合は何周ぐらいなのか。また、オートポリス未体験のドライバーにとっては、ある程度の慣熟も必要ということで、チームにとってはアッという間のセッションになるだろう。それは、土曜日朝のフリー走行も同様。午後からの予選に向けて、さらにセットアップを煮詰めて行かなければならない。
そして、迎える予選は、今回もノックアウト方式。オートポリス戦に供給される新品のタイヤは、ソフト2セット、ミディアム2セットとなっているが、Q1ではミディアムタイヤの使用が義務付けられることになった。そのため、続くQ2からは、全車がソフトを使用することになるが、従来のレコードタイム更新はあるのか気になるところだ。また、特にQ1、Q2では、コース上でトラフィックが発生する可能性が高いため、ピットアウトするタイミングやアウトラップ&ウォームアップラップでの位置取りやタイヤを温めるペースなども通好みな見所。ちょっとしたトラフィックがアタックタイムに100分の1秒、1000分の1秒という影響を及ぼし、それが予選結果を大きく左右することもあるので、熱心なファンの方にはそうした部分にも注意しながら見ていただきたい。また、オートポリスはコーナーが連続するテクニカルコースということで、ドライバーのほんの些細なミスが大きく順位に関わってくる。その分、各ドライバーの1周に賭ける気合いが走りからも伝わってくるはずだ。その中で、誰が2年ぶりのオートポリスでPPを獲得するのか。どのチームも、多くのデータを持っていないだけに、番狂わせも期待される。
そして、決勝レースだが、まず注目はスタート。1コーナーまでに3ワイドも可能なオートポリスでは、出足がひとつのポイントだ。また、オーバーテイクも可能なコースということで、レース中にも最終コーナーから1コーナーにかけて、また第2ヘアピンの飛び込みなどで、激しい攻防が見られるはず。今回はタイヤが2スペックということもあり、前戦 もてぎと同様、その時装着しているタイヤ次第で順位の入れ代わりも頻繁に起きることが期待されている。過去の戦績から見ると、オートポリスを得意としているのは、セルモ インギングの国本雄資&石浦宏明、チーム トムスのアンドレ・ロッテラー&中嶋一貴、チーム・ムゲンの山本尚貴、リアル レーシングの塚越広大ら。中でも、ランキングでトップから少し遅れている国本や一貴、山本にとってはここが踏ん張りどころ。また、前回のもてぎで2ピット作戦を敢行した塚越が、今回はどんな作戦で来るのかも興味深いポイントとなる。予選のポジション次第では、2ピット作戦で表彰台あるいは優勝を狙える可能性があるからだ。一方、このところ活躍が著しいチーム ルマンのフェリックス・ローゼンクヴィストやガスリー、山下健太らルーキーたちの活きな走りにも注目していただきたい。
Race Format:第5戦 オートポリス
決勝レース距離:252.236 km(4.674km×54周)
予選方式:ノックアウト予選方式 Q1(全車): 20分間 → Q2(14台): 7分間 → Q3(8台): 7分間
タイヤ:横浜ゴム製ワンメイク/ドライ2スペック(ミディアム,ソフト)、ウェット 各1スペック
タイヤ使用制限
・ドライ(スリック) 競技会期間中を通して6セット
そのうち新品はソフト2セット+ミディアム2セット
前戦までに使用した“持ち越し”タイヤ2セット(ミディアム,ソフトは問わず)
・ウェット 競技会期間中を通して4セット
決勝中のタイヤ交換義務:あり
・2種別のドライタイヤ(ミディアム, ソフト)を1セットずつ使用しなければならない。
・レース中にウェットタイヤを使用した場合、このタイヤ交換義務は適用されない。
・タイヤ交換義務を完了せずにレース終了まで走り続けた車両は失格となる。
・赤旗中断の間にタイヤ交換を行った場合、このタイヤ交換義務を満たしたとは認められない。
・54周完了前に赤旗中断となり、そのままレースが終了した場合、タイヤ交換を行っていなかったドライバーはレース結果に40秒が加算される。
燃料最大流量(燃料リストリクター):90kg/h(121.2L/h)
オーバーテイク・システム(OTS):最大燃料流量10kg/h増量(90kg/h→100kg/h)
*1回につき20秒間作動×レースを通して5回まで作動
*1回の使用による燃料消費増加は55.6g(約74.8cc)。5回使用で277.8g(約374.0cc)増。
決勝中の給油作業義務:なし
備考(観戦のポイント)
■燃料タンク容量: およそ90+L
※上記満載時のガソリン重量 約70kg
※燃料流量上限(リストリクター)90kg/hにおける燃料消費2.4km/Lと仮定した場合、レース完走に必要な燃料総量は約105L+低速周回3周分(ピット→グリッド/フォーメーションラップ/ゴール→車両保管)+OTS作動による消費量増加分
※上記想定で1周あたりの消費量 約1.95L 重量にして約1.45kg
今戦はタイヤ4本交換義務があり、この作業を作業要員6名中3名(他は燃料補給、車両誘導、消化器それぞれに1名を配置)で実施するのに必要な静止時間は14秒ほど。その間、燃料補給装置を接続し続けた場合、差し込み・引き抜きに要する時間を除いた12秒ほどの中で補給できる燃料量はおよそ28L(約20.5kg)程度。この分だけスタート時の燃料搭載量を減らす(79L程度搭載/約11kg減)とすれば、”ピットウィンドウ”(燃料補給のピットストップが1回で済む周回数)は6~40周完了の間のどこか、と見込まれる。フルタンクでスタートした場合、ピットウィンドウは48周完了まで伸びる。
ソフトタイヤの摩耗とそれに伴うラップタイムの低下(デグラデーション)の現れ方によっては、2ストップ(ソフト-ソフト-ミディアム)の可能性もあり、この作戦でレース距離を均等割りした場合、スタート時燃料搭載量を53L(39㎏)まで減らせる。
(いずれもセーフティカー先導周回も含めて極端な燃料消費節約走行をしない、という前提で)
ウェットレースとなりタイヤ交換義務が無くなった場合、フルタンクでスタートするのが定石だが、ウェット路面では燃料消費も少なくなるため、ピットウィンドウはさらに広がる。このケースの燃料補給時間は推定6秒以下。ピット静止時間は8秒以下。
※上記想定値はいずれも実戦観察からの概算であって正確なものではない。あくまでレース観戦の参考までに。
■レース中ピットレーン走行・停止/発進によるロスタイム: 約20+秒(2015年の実績から概算した目安程度の値)
タイヤ交換を行った場合、ピットアウトしてからタイヤが暖まるまでのタイム低下分も考慮する必要がある。