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2022年第5戦 SUGO大会プレビュー
2022年6月13日
昨年のスタートシーン
晴天に恵まれた第4戦オートポリスから約1ヶ月。全日本スーパーフォーミュラ選手権は、6月18日(土)〜19(日)、早くも前半戦の締めくくりとなる第5戦を迎える。このレースの舞台となるのは、宮城県スポーツランドSUGO。このサーキットでは、毎年のように思わぬドラマが展開されるが、今年はどんなドラマが待っているのか。
そのスポーツランドSUGOは、コース長が3.5km余りと、他のサーキットに比べて短いのが特徴。全体にアップダウンの多いコースであり、中でも最終コーナーからコントロールラインにかけての10%上り勾配は見応えがある。コース幅は決して広くないため、オーバーテイクはそこまで容易ではないが、1コーナーから3コーナーにかけて、馬の背コーナーなど、状況によっては順位が入れ替わる場面も見られる。また、各コーナーでのエスケープゾーンが広くないため、決勝中にコースアウト車両が出た場合やアクシデントが発生した場合には、セーフティーカーが導入されることも多い。それがレース結果を大きく左右するというケースも出てくるため、”魔物が棲む”と評されることもある。一昨年から今年にかけては、「伝統・機能・スタイリッシュ」をコンセプトに、ピット棟やパドック周りなど、多くの場所でリニューアル工事が行われ、今年3月に完成。装いを新たにした菅生では初のビッグレースということで、多くのファンに楽しんでもらえるはずだ。
さて、前述のように、菅生はそこまでオーバーテイクが容易なコースではない。その分、予選のポジションが重要になってくるのは、他のサーキットと同様。今回も、ノックアウト予選は土曜日の午後、Q1、Q2を通じて争われる。前回のオートポリス戦では、Q1、Q2ともに、アウトラップを終えてすぐアタックするドライバー、アウトラップに加えてウォームアップラップを挟んでからアタックするドライバーと、チームによって作戦が分かれた。そのためにトラフィックに引っかかって思うように結果を出せなかったドライバーも現れた。その点、菅生の場合はコース長が短く、各ドライバーがアウトラップとウォームアップラップを走ってからアタックに入るのが定石と見られる。セッション最終盤の方が路面コンディションが良くなるため、誰もが最後にアタックを行いたい所だが、同時にアタックする充分なスペースも確保したい。コースアウト車両が出て、赤旗中断になる可能性も考慮しなければならない。そのため、コースに出るタイミングには各チーム、各ドライバーが頭を悩ませる所だ。しかも、例年、各車のタイム差は100分の1秒、1000分の1秒という超僅差。距離にすると、ほんの数センチの差で明暗が分かれることも多い。Q1は今回、Aグループが10台、Bグループが11台。他の大会と同様、各グループから6台がQ2に駒を進めるが、今回のQ1ではBグループの争いが特に熾烈となりそうだ。さらに、Q2はQ1よりも走行する台数が多く12台での争い。ここでもピット位置やコースに出るタイミング、コース上でのスペース確保など、様々な要素が絡んでくるだろう。その中でPPを獲得するのは誰になるのか。菅生を得意としている関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)や、初優勝の地が菅生の野尻智紀(TEAM MUGEN)、またデビュー以来、菅生で常に速さを見せている牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)らは注目の存在だ。また、今シーズン安定して上位に食い込んでいるサッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)や宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)、速さはあるもののここまで納得の結果を出すことができていない坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)、さらには前回のオートポリスで初表彰台を獲得した三宅淳詞(TEAM GOH)や佐藤蓮(TEAM GOH)といったルーキー勢の走りにも期待がかかる。もちろん、ル・マン24時間レースを終えた翌週、スーパーフォーミュラに戻ってくる小林可夢偉(KCMG)と平川亮(carenex TEAM IMPUL)も気になる存在。特に、前回のオートポリス戦で、予選8番手からの大逆転で今季2勝目を挙げている平川は、ランキングトップの野尻との差を7ポイントまで縮めてきており、今回の菅生でもさらに野尻に迫りたい所。あるいは逆転を狙っているかも知れない。対する野尻も、相性のいい菅生で平川を突き放しておきたい所だろう。この2人の争いからは目が離せない。
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ランキング1位 野尻智紀(TEAM MUGEN)
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ランキング2位 平川亮(carenex TEAM IMPUL)
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ランキング3位 サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)
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ランキング4位 宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)
53周で争われる決勝では、まずスタートが注目のポイント。菅生は、グリッドから1コーナー進入までの距離が短いが、アウト側グリッドのドライバーが1コーナーでイン側のマシンをかわしていくシーンが比較的多く見られる。また、まだタイヤが温まっていないオープラングラップでは、随所で激しいバトルが見られるはず。その中で、接触やコースアウトが発生する可能性もある。昨年は、スタートから一度もセーフティーカーが導入されないというクリーンなレースになったが、今年はどうなるのか。いざ、何かあればセーフティーカー導入ということになるため、チームにとっても息つく暇はない。また、今回もドライであれば4本のタイヤ交換が義務付けられる。交換のウィンドウは、先頭車両が10周回目の第1セーフティーカーラインを超えてから、最終ラップに入るまでとなる。このウィンドウが開いた時点で、もしセーフティーカーが導入されていれば、多くのドライバーがピットロードに雪崩れ込んでくることになる。また、通常のレース状態でウィンドウが開いた場合でも、トラフィックに捕まっていれば早目のタイヤ交換をするドライバーが出てくるはずだ。この場合は、前に誰もいないフレッシュエアーの中で、他のドライバーとのタイム差を削っていく神経戦となる。同時に、早めのタイヤ交換を行うドライバーたちは、その後にセーフティーカーが出れば圧倒的に有利。逆に、何も起こらなかった場合には、終盤タイヤが厳しくなり、ペースが落ちることも考えられる。一方、早めにタイヤ交換をしたドライバーたちのタイムの推移を気にしながら、中盤、あるいは終盤までタイヤ交換を引っ張るドライバーも出てくるはず。コース上での争いもさることながら、そうした作戦面での駆け引きも、菅生では見所となる。もちろん、各ドライバーが計200秒使用できるオーバーテイクシステムを使用しての攻防も見所のひとつ。その中で、新たなウィナーが誕生するのか。あるいは、実力者たちが覇権を握るのか。思いがけない物語が展開されることだろう。
そんなドラマの舞台装置のひとつとして、最も気になるのはやはり天候。6月6日には、早くも関東・甲信地方が梅雨入り。東北南部も中旬には梅雨入りするものと見られている。昨年もレースウィークの土曜日には梅雨入りしていたが、決勝レースは一転して天候が回復し、ドライコンディションの中で行われた。現段階の予報では、今年のレースウィークも好天の可能性があるが、こればかりは実際の走行時間を迎えてみないと分からない。ただ、ドライにしてもウェットにしても、各ドライバーにとってはチャレンジングな予選・決勝となるはずだ。