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タイヤ特性を見極め勝利を手繰り寄せるのはどのチーム? 第4戦 ツインリンクもてぎ・プレビュー
2017年8月10日
夏休みに入る直前の7月上旬に、富士スピードウェイで開催された第3戦。劇的な展開となったこのレースから約1ヶ月半を経て、全日本スーパーフォーミュラ選手権第4戦が、いよいよ来週末、栃木県ツインリンクもてぎで開催される。
今年開場から20周年という節目の年を迎えたもてぎは、富士とは全くキャラクターの異なるサーキット。もともとロードコースとオーバルコースが組み合わされる形で作られており、ロードコースの方はストップ&ゴーのレイアウトとなっている。加減速が多く、ブレーキには非常に厳しいサーキットだ。以前は、カレンダー上でも最終戦近くに行われていたが、現在は夏の真っただ中に行われるということもあり、よりブレーキには過酷。各チームも温度が上がり過ぎないように、気を使わなければならない。また、コース幅がそれほど広くないことから、オーバーテイクが容易ではないと言われているのもこのコースの特徴。特に、現在のスーパーフォーミュラで使用されているSF14は、空力的に優れた特性を持っていることから、逆によりオーバーテイクが難しくなっている。
そんな状況に変化を持たせるために、昨年から実施されているのがタイヤの2スペック制。現在、シリーズにワンメイクタイヤを供給している横浜ゴムの英断によって、もてぎでは通常のレースで使用されているミディアムタイヤに加え、ソフトスペックが追加される。しかも、今年は春先からのエンジン開発テストで、さらに柔かい方向に振ったという新たなソフトタイヤを数スペック試しており、その中から最終スペックを決定。それが、もてぎに持ち込まれることになった。この新ソフトタイヤは、レースをよりエキサイティングなものとする目的を持っており、わざわざ昨年以上にグリップ力が高まり、ライフが短くなるよう設計されたもの。このタイヤをどう使いこなすかが、結果を大きく左右することになる。もてぎの路面はスムースで、もともとそれほどタイヤへの攻撃性が高くないと言われているが、どれだけの周回を速いタイムを維持したまま走り続けられるのか。そのスイートスポットを見つけ出すことが重要だ。同じヨコハマタイヤということで、キャラクター自体は同じ方向性ということだが、一体誰が好タイムを刻むのだろうか。
この専有走行に引き続いて注目されるのが、土曜日に行われる予選ということになる。昨年は、関口雄飛が唯一Q1をミディアムタイヤで突破。Q2、Q3に向けて、2セット供給されるソフトタイヤを温存したことで、見事にPPを獲得したのが記憶に新しい。金曜日の段階で、新ソフトタイヤとミディアムタイヤにどれだけタイム差が現れるかによっても違ってくるが、Q1をミディアムで突破できるという自信があるチーム&ドライバーは、昨年の関口同様の作戦を取ってくる可能性が大いにある。ただし、現在のスーパーフォーミュラは、全車のタイムが非常に拮抗しているだけに、作戦によっては番狂わせが起こる可能性も。19台がほぼ同時にアタックするQ1では、トラフィックの影響を受ける場面も出てくるだけに、誰がどのタイミングで、またどのタイヤを装着してアタックに向かうのか、注意深く見守っていただきたい。このQ1の結果次第で、Q2、Q3の戦い方も変わってくるはずだ。
決勝レースでは、ドライの場合、今年も両スペックのタイヤを装着することが義務付けられる。だが、前述のように、ソフトタイヤの決勝でのライフやタイムの落ち込みに関しては、現時点では未知数。どのチームも、データを持っていない状態だ。これを確認するのが、日曜日朝のフリー走行ということになる。また、スタート時にどちらのタイヤを装着するのか、そのタイヤで何周ぐらい走行してからピット作業を行うのかも見所。グリッドが後方であれば、燃料補給のウィンドウが開いたところでピットに入り、空いたところでプッシュするという作戦を取るだろうが、その場合はソフトでスタートしてミディアムに交換する可能性が高い。一方、グリッド前方のドライバーは、ミディアムでスタートし、ある程度引っ張り、燃料が軽くなったところで給油とソフトタイヤに交換するのがセオリー。しかし、ライバルを出し抜こうと思ったら、ソフトでスタートすることも充分に考えられる。いずれにしても、ソフトとミディアムでのレースペースにどれぐらいの差があるのか、そのデータをもとに各チームが作戦を決めることになる。
そんなもてぎのレースで、これまで強さを見せてきているのは、ITOCHU ENEX TEAM IMPULやVANTELIN TEAM TOM’S。昨年の関口は貫録の優勝だったが、過去にインパルとトムスが死闘を演じた例は多い。また、SUNOCO TEAM LEMANSにとってももてぎは得意なコースのひとつ。前回の富士戦で初表彰台を獲得し、持ち前の実力を見せた“職人”ドライバー、フェリックス・ローゼンクヴィストが今回も見せ場を作るのか期待したい。さらに、ここ何年かで安定的な強さを身に付けたP.MU/CERUMO・INGINGも、もてぎで上位争いの常連。富士での優勝でランキングトップに立った石浦宏明、一方前回悔しいトラブルに泣いた国本雄資。この2人の戦いからも目が離せない。これに対して、そろそろ優勝争いに絡んで欲しいのが、ホンダエンジンユーザーたち。TEAM MUGENのピエール・ガスリーと山本尚貴は、開幕後もかなりの好調ぶりを維持しているが、ホームコースのもてぎで表彰台をもぎ取ることができるのか。また、ドライバーとして今波に乗っている野尻智紀、かつてはもてぎを得意にしていたTCS NAKAJIMA RACINGなどにも期待がかかる。
Race Format:第4戦 ツインリンクもてぎ
決勝レース距離:249.672 km(4.801379km×52周)
予選方式:ノックアウト予選方式 Q1(全車): 20分間 → Q2(14台): 7分間 → Q3(8台): 7分間
タイヤ:横浜ゴム製ワンメイク/ドライ2スペック(ミディアム,ソフト)、ウェット 各1スペック
タイヤ使用制限:
・ドライ(スリック) 競技会期間中を通して7セット
そのうち新品はソフト(新仕様)3セット+ミディアム2セット
前戦までに使用した“持ち越し”タイヤ2セット(当然、今回はミディアムのみとなる)
・ウェット 競技会期間中を通して4セット
決勝中のタイヤ交換義務:あり
・2種別のドライタイヤ(ミディアム, ソフト)を1セットずつ使用しなければならない。
・レースでウェットタイヤを使用した場合、このタイヤ交換義務は適用されない。
・タイヤ交換義務を完了せずにレース終了まで走り続けた車両は失格となる。
・赤旗中断の間にタイヤ交換を行った場合、このタイヤ交換義務を満たしたとは認められない。
・52周完了前に赤旗中断となり、そのままレースが終了した場合、タイヤ交換を行っていなかったドライバーはレース結果に40秒が加算される。
*決勝レースまでの走行セッションを通してソフトによる走行機会がなかった場合(全セッションが雨、などの状況)、決勝レースでソフトタイヤは使用しない。
燃料最大流量(燃料リストリクター):90kg/h(122.8L/h)
オーバーテイク・システム(OTS):最大燃料流量10kg/h増量(90kg/h→100kg/h)
*1回につき20秒間作動×レースを通して5回まで作動
*1回の使用による燃料消費増加は55.6g(約75.8cc)。5回使用で277.8g(約378.9cc)増。
決勝中の給油作業義務:なし
備考(観戦のポイント)
■燃料タンク容量: およそ90+L
* 満載時のガソリン重量 約70kg
* 燃料流量上限(リストリクター)90kg/hにおける燃料消費2.4km/Lと仮定した場合、レース完走に必要な燃料総量は約105L+低速周回3周分(ピット→グリッド/フォーメーションラップ/ゴール→車両保管)+OTS作動による消費量増加分
*上記想定で1周あたりの消費量 約2L 重量にして約1.47kg
今戦はタイヤ4本交換義務があり、この作業を作業要員6名中3名(他は燃料補給、車両誘導、消化器それぞれに1名を配置)で実施するのに必要な静止時間は14秒ほど。その間、燃料補給装置を接続し続けた場合、差し込み・引き抜きに要する時間を除いた12秒ほどの中で補給できる燃料量はおよそ28L(約20.5kg)程度。この分だけスタート時の燃料搭載量を減らす(79L程度搭載/約11kg減)とすれば、”ピットウィンドウ”(燃料補給のピットストップが1回で済む周回数)は5~39周完了の間のどこか、と見込まれる。フルタンクでスタートした場合、ピットウィンドウは47周完了まで伸びる。(いずれもセーフティカー先導周回も含めて極端な燃料消費節約走行をしない、という前提で)
ウェットレースとなりタイヤ交換義務が無くなった場合も、フルタンクでスタートするのが定石だが、ウェット路面では燃料消費も少なくなるため、ピットウィンドウはさらに広がる。このケースの燃料補給時間は推定6秒以下。ピット静止時間は8秒以下。
*上記想定値はいずれも実戦観察からの概算であって正確なものではない。あくまでレース観戦の参考までに。
■レース中ピットレーン走行・停止/発進によるロスタイム: 約20秒(近年の実績から概算した目安程度の値)。
タイヤ交換を行った場合、ピットアウトしてからタイヤが暖まるまでのタイム低下分も考慮する必要がある。