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ニック・キャシディが初のタイトルを獲得

2019年10月27日

野尻智紀(TEAM MUGEN)がフロントロウから自身2勝目をマーク
2位に入ったニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)が初のタイトルを獲得

10月下旬としては、非常に暖かな晴れの1日となった10月27日(日)。今シーズンの締めくくりとなる全日本スーパーフォーミュラ選手権の最終戦決勝が行われた。43周で争われたこのレースでは、セーフティーカーの導入などは全くなく、序盤にミディアムを装着したドライバーと終盤にミディアムタイヤを装着したドライバーのガチンコ勝負となる。他のサーキットとは違い、ソフトとミディアムのタイム差もそれほど大きくなかったため、まさにコース上での決着と言って良かった。その勝負を制したのは、予選2番手からソフトタイヤでスタートした野尻智紀(TEAM MUGEN)。2位には同じくソフトタイヤスタートのニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)が入賞。この結果によって、キャシディは昨年わずか1ポイント差で逃したチャンピオンタイトルを参戦3年目にしてもぎ取った。3位には、福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が入賞。全日本スーパーフォーミュラで自身初の表彰台を獲得している。4位にはやはりソフトタイヤでのスタートした関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)。関口は予選グリッドから11も順位を上げる殊勲のレースだった。予選5番手だった山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)はチームメイトの福住と比べるとペースが上がらず5位に終わった。また、ルーキーながらタイトル争いに加わっていたアレックス・パロウ(TCS NAKAJIMA RACING)はPPスタートでトップを守ったものの、その後失速。ノーポイントに終わっている。

気温 23℃、路面温度26℃というコンディションのもと、フォーメーションラップがスタートしたのは午後2時。今回は先頭車両が7周を終えてからでなければ、タイヤ交換を行うことができないというルールが定められており、スタートに向けてのタイヤ選択も分かれた。上位では、PPのパロウ、予選4番手の福住、5番手の山本がミディアムを選択。これに対して、予選2番手の野尻、予選3番手のルーカス・アウアー(B-Max Racing with motopark) 、予選6番手のキャシディはソフトを選択した。トップ6以降では、塚越広大(REAL RACING)、牧野任祐(TCS NAKAJIMA RACING)、ハリソン・ニューウェイ(B-Max Racing with motopark)、中嶋一貴(VANTELN TEAM TOM’S)、山下健太(KONDO RACING)、平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)、坪井翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)、国本雄資(KONDO RACING)がミディアムを選択。予選15番手の関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)はソフト、小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG)はその後のタイヤ交換義務がなくなるという理由から何とレインを装着。以下、大嶋和也(UOMO SUNOCO TEAM LEMANS)がミディアム、中山雄一(UOMO SUNOCO TEAM LEMANS)、ユーリ・ビップス(TEAM MUGEN)、石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO・INGING)はソフトを選択している。
さて、1周のフォーメーションラップを終え、正規グリッドに着くと、シグナルオールレッドからブラックアウト。43周先のゴールに向けて、各車が一斉にスタートを切る。ここでホールショットを奪ったのは、ミディアムを履くPPのパロウ。ソフトの野尻がそれに続く。アウアーは痛恨のエンジンストール。その隙をついて山本が3番手までポジションアップ。さらに福住、塚越、キャシディと続いた。ソフトを履くキャシディは、そこから猛プッシュ。オープニングラップのスプーンコーナーの一つ目で、まずは塚越をオーバーテイク。2周目には福住、3周目のシケインでは山本も交わして、3番手に浮上してくる。これでオーダーはパロウ、野尻、キャシディ、山本、福住となったが6周目に入るとパロウのペースが落ち始め、野尻がそこに迫っていった。
一方、パロウ、野尻、キャシディが7周を終えたところからは、ピットに入るドライバーが次々に現れる。山本、塚越、山下、牧野、一貴、ニューウェイ、大嶋が7周を終えてピットイン。ニューウェイが牧野、一貴の前でコースに戻る。その頃、トップ争いには動きが。8周目の130Rで野尻がパロウをオーバーテイク。パロウはその直後にピットに向かった。また、パロウと同じ周には、福住、平川、坪井、国本もピット作業を行なっている。また、オープニングラップを終えた時点で可夢偉もレインからソフトに履き替えており、これでコース上は全車がソフトタイヤでの走行となった。見た目上の順位は、野尻、キャシディ、関口、石浦、ビップス、中山、アウアー。それに続いたのはピットインを終えた組で、そのトップに立っていたのは、パロウ。これに福住、山本、塚越、平川、山下、ニューウェイ、牧野が続く形となっていた。
トップに立った野尻は、1分41秒台のタイムを連発してリードを広げていく。キャシディは野尻を深追いすることなく、燃費とタイヤをセーブ。終盤での逆転を狙っていた。また同時にパロウや山本との差もチームは確認していたが、パロウも山本も思ったようにタイムが伸びない。10周を終えたところで、野尻とパロウの差は44秒211。キャシディとは約42秒差だったが、次第にその差は開いていくことになった。これに対して、ペースが良かったのは福住。福住は15周目のシケインでオーバーテイクボタンを使いながら、パロウの攻略を試みるが、パロウがここは防御。シケイン立ち上がりからはパロウもオーバーテイクボタンを使って、福住に対して逃げを打つ。福住はアウト側からパロウに並びかけたが、2コーナーではパロウがポジションを守り切った。しかし、17周目の130Rでは福住がやすやすとパロウをオーバーテイク。その後もパロウはペースを上げることができず、ずるずるとポジションを落としていくこととなった。
これでピットイン組のトップに立った福住だったが、トップの野尻の方がペースは上。レースが後半に入った25周終了時の段階で、野尻と福住の差は50秒904まで広がっていた。キャシディは野尻の3秒後方ということで、福住との差は約47秒となっていた。だが、27周目あたりから、野尻と福住のペースが逆転。福住が次第に差を詰め始める。また、同じ27周終了時には、ミディアムスタート組の中で、まずビップスがピットイン。ビップスは作業が終わって出ていく際にエンジンストール。何とかエンジンをリスタートさせてコースに戻るが、ちょうどキャシディの前に出たことで、キャシディはタイムを少しロスすることとなった。また、翌28周終了時にはパロウが2度目のピットイン。再びソフトに交換してコースに戻っている。
その後、福住のペースアップを見て、トップ集団で最初にピットに入ったのは、関口。関口は29周を終えたところでピットに入ると、ミディアムに交換し、何とか福住の前でコースに戻ることに成功する。しかし、アウトラップの関口を福住がオーバーテイク。その翌周には石浦がピットインしてミディアムタイヤに。石浦も山本の前でコースに戻ることには成功したが、アウトラップのシケインへのブレーキングで山本が石浦の前に出た。これまで2度タイトルを経験している石浦は、そこから諦めることなく山本について行き、32周目の1コーナーではアウトから山本に並びかける。だが、2コーナーまでの攻防の中で、山本がポジションを死守した。
そして、トップの野尻がピットに入ったのは33周を終えた時点。この時点で福住とのタイム差が47秒459まで縮まっていたが、ミディアムタイヤに交換した野尻は、福住の前でコースに戻ることに成功した。そして、その翌周にはキャシディがピットイン。インラップで猛プッシュし、シケインではブレーキングスモークを上げるほど攻めて、キャシディはピットに滑り込んできた。11秒という素早い作業でコースに戻ったキャシディは、野尻にこそ先行されたものの、福住の前でコースに戻ることに成功。ここからキャシディはアウトラップでも必死のプッシュを見せ、オーバーテイクシステムを使いながら、福住を抑え込んだ。そして、36周を終えたところで、アウアーが最後にピットイン。これで全車がピットに入ると、野尻が正真正銘のトップに浮上。それにキャシディ、福住、関口、山本、石浦というオーダーになる。この頃になると、序盤にソフトに変えたドライバーと終盤にミディアムタイヤに交換したドライバーに大きなラップタイムの差はなく、順位の入れ替わりもなかった。
その結果、43周のレースを終えてトップチェッカーを受けたのは、野尻。野尻にとっては、デビューイヤーとなる2014年第6戦・菅生以来、5年ぶりの2勝目となった。また今シーズン、7人目のウィナーともなっている。2位にはシーズンを通じて決勝レースでの強さを見せ、最終戦でも予選6番手から4つポジションを上げたキャシディ。3位には、終始安定したペースで走り切った福住。福住にとっては、これが初表彰台となった。以下、4位には関口、5位には山本、6位には14もポジションアップした石浦、7位には塚越、8位には平川。ここまでがポイントを獲得している。
そして、2位に入賞したキャシディが年間を通じて36ポイントを獲得し、参戦3年目にして見事シリーズチャンピオンを獲得。5位に終わった山本はシリーズ2位。ポールポジションの1ポイントにとどまったパロウは3位。また今回優勝してボーナスポイントも含めた13点を加算した野尻がシリーズ4位に浮上。以下、山下、可夢偉という結果になっている。また、今回、福住と山本の両名が入賞したことで、チームタイトルはDOCOMO TEAM DANDELION RACINGが獲得。2ポイント差でVANTELN TEAM TOM’Sが2位となっている。レースを終えると、勝った野尻、タイトルを獲得したキャシディ、惜敗した山本と目に涙を浮かべたドライバーが何人もいた。それだけドライバーたちの”賭ける”気持ちが伝わってくる1戦だったと言っていいだろう。

今年はニューシャシー導入に加え、毎戦ウィナーが変わるという話題豊富な1年となった全日本スーパーフォーミュラ選手権。来年は一体どんなシーズンとなるのか。どんなドライバーたちが顔を揃えるのかも含めて、今から開幕戦が待ち遠しく感じられる。

第7戦 決勝リザルト

優勝 野尻 智紀(TEAM MUGEN)&中野信治監督

2位 ニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)

3位 福住 仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)

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