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天候次第で波乱の予感 第3戦プレビュー
2020年10月15日
坪井翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)の劇的な初優勝に終わったシリーズ第2戦岡山大会から3週間。全日本スーパーフォーミュラ選手権第3戦は10月17日(土)〜18日(日)、宮城県スポーツランドSUGOに舞台を移して開催される。これまで6月あるいは9月に行われてきた菅生大会だが、今季は新型コロナウィルス蔓延の影響によって、カレンダーが大きく改変。菅生では、初の10月開催となる。秋本番に入っているということで、例年とはまた違う戦いが展開されるものとみられるが、今回勝利の美酒を味わうのは誰になるのか。
今大会は、シリーズの他大会と同様、予選・決勝を日曜日のワンデーで行うことが定められている。日が短いこともあり、予選から決勝までのインターバルはわずか3時間あまり。チームにとってもドライバーにとっても慌ただしい1日となりそうだ。その菅生大会には、ル・マン24第時間レース出場の影響から岡山大会を欠場した山下健太(KONDO RACING)、小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG)、中嶋一貴(VANTELN TEAM TOM’S)の3人が戻ってくる。彼らにとってはル・マン以来1ヶ月ぶりのレース。スーパーフォーミュラに乗るのは約1ヶ月半ぶりとなるが、どのような走りを見せてくれるのか、期待したい。また、ようやく来日が決定し、今回シリーズにデビューするのがセルジオ・セッテ・カマラ(Buzz Racing with B-Max)。セッテ・カマラがスーパーフォーミュラのステアリングを握るのは、3月末のテスト以来、約6ヶ月半ぶりとなる。しかも舞台がドライバーズサーキットの菅生ということで、彼にとっては非常にチャレンジングな1戦となるだろう。一方、今回のレースも欠場となってしまったのは、先週末ELMSに参戦し、充分な検疫期間が取れないと判断されたタチアナ・カルデロン(ThreeBond Drago CORSE)と、またしても来日が叶わなかったユーリ・ビップス(TEAM MUGEN)。今回も、カルデロンの代わりには塚越広大、ビップスの代わりには笹原右京が起用されるという発表がすでになされている。
3月末の合同テスト以来となるセルジオ・セッテ・カマラ(Buzz Racing with B-Max)
さて、そんな菅生は、例年様々なハプニングが起こることでも知られている。コース幅が狭いだけでなく、エスケープゾーンも少ないことから、セッション中に赤旗が提示されたり、レース中にセーフティーカーが導入されることも多い。ドライバーにとっても、走行機会が少ないサーキットだけに、その時々のコンディションに合わせ込んでいくのが難しくなる。今回、それをさらに難しくしそうなのが天候だ。日本列島の南側をUターンするような形に進んだ台風14号の通過後、一気に気温が上昇。各地で季節外れの夏日となったが、今週末には強い寒気が南下し、一気に気温が下がると予想されている。しかも、土曜日には広い範囲で雨が降るという予報だ。菅生もどうやら土曜日は雨絡みとなりそう。次第に曇りの天候になると予想されるが、それまでにどれぐらいの雨が降るのか。また当日は最高気温が15℃前後と見られているが、セッション中に路面は乾ききるのか。その日、スーパーフォーミュラは午前中に専有走行、午後からフリー走行が予定されているが、スリックタイヤでの走行ができるかどうかが予選に向けても重要なポイントとなるだろう。もしスリックでの走行が叶わなかった場合、日曜日朝の予選はまさにぶっつけ本番となる。
日曜日の予選は、今回もノックアウト方式。Q1は2グループに分けられ、各10分間の走行。Q2、Q3は各7分間となる。特に菅生はコース全長が短く、タイム差がつきにくい。ほんのわずかなドライバーのミス、タイヤ内圧やセットアップの違いも大きな代償として返ってくるだけに、気が抜けないはずだ。もちろん経験が少ないルーキーたちにとっては、クラッシュすることなくアタックを終えるというのが最重要ミッションのひとつ。予選終了後からフォーメーションラップスタートまでの時間が、レギュレーションで決められた最低3時間のインターバルをわずかに超えるだけなので、もし予選でクラッシュした場合にはダメージ次第で決勝に間に合わなくなる可能性もある。そして、岡山同様、今回も最激戦となるのは、Q2。Q2では14台のマシンが同時にコースに出ることになるが、菅生ではトラフィックが間違いなく発生するだろう。気温だけでなく路面温度も低いことが予想されるだけに、充分タイヤを温めるためには3周程度(アウトラップ+ウォームアップ2周)必要になると思われるが、セッションの時間はわずかに7分。もちろん誰もが自分のペースでタイヤを温めたいところだが、そのスペースを確保するだけでも大変だ。開始直後から順次コースに入ったとしても、最後にコースインしたドライバーはタイムアタックに間に合うかどうかギリギリ。またアタック中にコースアウトが発生した場合には、赤旗が提示される可能性もある。このQ2を勝ち抜けるかどうかは、菅生戦の大きな鍵になるはずだ。Q3は8台でのアタックとなり、トラフィックは起きづらいだろうが、誰がトップタイムを刻むのか。開幕2連続PPの平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)が菅生でも調子の良さを維持するのか。現在、各カテゴリーで勢いを見せている坪井が今回も魅せるのか。あるいは昨年の菅生で速さを見せた山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)や野尻智紀(TEAM MUGEN)が好タイムを刻むのか。予選は最後まで息もつけないほどのめまぐるしさとなるだろう。
2年連続でSUGOを制している山本 尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
今季3戦連続P.Pを狙う平川 亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)
決勝レースに関しては、例年よりも距離が短縮され、53周で争われるが、第2戦と同様、今回もタイヤ交換が義務付けられる。交換が可能となるのは、スタート後先頭車両が10周目に入ったところから。作戦としては、できるだけ早めにピットインしてしまうか、最後まで引っ張るか、いずれかがメインとなってくるはずだ。ただし、前述のように、菅生の場合はレース中にセーフティーカーが導入される場面がたびたびある。終盤にピットインする作戦を採った場合には、せっかく稼いだマージンがセーフティーカーランで帳消しになるリスクも考慮しなければならない。かといって、誰も彼もがミニマム周回でピットに入ってきた場合には、大きくポジションアップすることもできなくなるため、ここは予選ポジションなども含めてチーム&ドライバーが頭を悩ませるところでもある。また、路面温度の低さから、タイヤ交換後のタイヤのウォームアップにも、いつも以上に時間がかかる。そのため、ポジション争いをしているライバルより早くピットに入るのが得策なのか、後に入った方が得策なのかということも考えなければならない。こうした作戦面が、レースの中では見どころとなってくるだろう。もちろん、その前に、決勝ではスタートが大きな注目ポイント。誰が好ダッシュを決めるのか。また、直後の1〜3コーナーあたりでは、激しいつばぜり合いも見られるはず。その迫力を堪能していただきたい。