エンジニアたちの作戦計画
第1戦 富士スピードウェイ
ThreeBond DragoCORSE
12伊与木 仁
ドライバー:タチアナ・カルデロン
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今季の担当車両・ドライバーとコンビを組むのはいつからですか? ご自身の移籍、担当ドライバー変更などがあれば、それも書き添えてください。
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昨年、2020年シーズンから
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簡単に(でなくてもいいのですが)自己紹介をお願いします。またモータースポーツ・エンジニアとしての経験・経歴についても語っていただければと思います。
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SFは昨年から担当していますが、それ以前から、ThreeBondのF3については、長い間お仕事をご一緒させていただいてました。Dorago CORSE 道上監督とはSuperGTの15号車の時からご一緒させていただいてます。
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モータースポーツの仕事に就かれる前の経歴、他の職種からの転職など、お教えください。
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学生時代に「FL500」という、軽自動車のエンジンを搭載したフォーミュラーカーのカテゴリーがあり、兄弟や友人たちとそのレースを始めたのがきっかけ。当時は、自分たちで見様見真似でフォーミュラーカー作って、自分たちで運転していた、という良い時代でした。
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開幕前2度のテストでは、今シーズンに向けてどんな狙いでプログラムを消化しましたか?「このくらいなら書いてもいいかな」というところで、大きな流れだけでも良いので教えてください。「全部、内緒」でもかまいませんけれど…
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昨年末・富士でのテストは良い手応えで終えられて、シーズン開幕に向け、期待感は高かったのですが、この2回のテストともに望みえた速さが得られず、現在、超焦り中です。誰かヒント教えてッ!
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開幕前のテストを通して、ドライバーのマシンとのコミュニケーション、手足のように操る一体感は深まった様子でしたか? そのポイントはどのあたりでしょうか?
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去年、初めて日本に来てSF19を学んで、またヨコハマタイヤにも慣れた感じだったのですが、今年2回のテストで「振り出しに戻った」感じ。今の自分を跳び超えて欲しいなァ。そうすればその先が見えると思うのですが…。
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SF19のセットアップを仕立て、仕上げる中でご自身として「ここが肝心」と考えているポイントはどのあたりでしょうか? もちろん複数あると思いますが、重視する度合いで言えば、どんな順番、あるいは流れになるでしょうか?
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全ての要素のバランスだと思うのですが、バネ、ダンパー、アンチロールバー、3rdデバイスを最適化してタイヤの路面へのコンタクトを最大限に増やし、コース特性に合わせダウンフォースとストレートスピードのバランスを、前後の車高設定とともに図る。タイヤのデグラデーションを鑑みることも大事。
注)アンチロールバー: 車体に対して左右の車輪が逆方向にストロークする(ロール運動)のに対して、ばねの効果を利用してその動きを押さえる(アンチロール)機構。同時に左右の荷重移動も、ロールを止めようとすると大きくなるので、車両の旋回運動・瞬間的な向きの変化などに影響を与える。
注)3rdデバイス(またはエレメント):左右輪が同じ方向にストロークする動き、すなわち車体の上下動だけに対して作用するばね+ダンパー・システムのこと。1輪ごとのばね+ダンパー、アンチロールバーに加わった「第3のばね系」という意味でこう呼ぶ。
注)デグラデーション:タイヤは走行距離を重ねるにつれて摩耗し、それに伴って摩擦とたわみの特性が変化してゆく。自動車競技はとくにその摩擦力をいかに多く引き出すか、なのであって、摩耗の進行に対して摩擦力の低下、レースの場合はラップタイムが遅くなってゆくこと、その度合いを「デグラデーション」=漸進的な劣化、と言っている。 -
今年の目標を教えてください。
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毎レース、ベストを尽くす。そうすれば、望むところの結果はやって来る。
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最後に新しいシーズンに向けてSFを愛するファンの皆様に一言。
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コロナ禍の今、サーキットに足を運ぶのも大変と思いますが、皆さん一緒に、熱い心でレースを盛り上げましょう。