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野尻智紀を止めるのは誰だ!?2021年第3戦プレビュー
2021年5月8日
4月上旬の富士、下旬の鈴鹿。すでに2戦を終えている今季の全日本スーパーフォーミュラ選手権だが、来たる5月15日(土)・16日(日)には、早くも第3戦が開催される。その舞台となるのは、大分県オートポリス。昨年は11月中旬の開催だったが、今年は一昨年と同様の5月開催となった。
その第3戦では、再びレギュラー陣の中で何人かのドライバーが欠場。FIA WEC・世界耐久選手権開幕戦に出場した中嶋一貴(Kuo VANTELN TEAM TOM’S)、小林可夢偉(KCMG)、タチアナ・カルデロン(ThreeBond Drago CORSE)の3名が、帰国後の自己隔離日数不足ということで、オートポリス戦出場を断念する。可夢偉の代役を務めるのは小高一斗、一貴の代役を務めるのはジュリアーノ・アレジ。そして、カルデロンの代役を務めるのは、塚越広大だ。また、この第3戦からシリーズに戻ってくるレギュラードライバーもいる。ようやく体調が回復した牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)だ。これまで牧野の代役を務めてきた笹原右京は、前回の鈴鹿で初表彰台を獲得しているが、残念ながら離脱することとなった。
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ジュリアーノ・アレジ(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)
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塚越広大(ThreeBond DragoCORSE)
牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
そんな中、今季開幕から絶好調なのは、野尻智紀(TEAM MUGEN)。鈴鹿戦を見ても分かるように、今年の野尻は一味違う。たとえフリー走行での結果が悪くても、そこから予選、決勝に向けて立て直してくる強さを身につけ、大きく変貌した。昨年のオートポリスを制していることもあり、野尻は今回も優勝候補の筆頭だ。他のドライバーにとってのテーマは”ストップ・ザ・野尻”ということになるだろう。過去を振り返ると、2008年に開幕から3連勝を挙げた松田次生が2度目のチャンピオンタイトルを獲得しているが、当時はシリーズ8大会・11レースの総合ポイント制。対して、今年のスーパーフォーミュラは全7大会・7レースで、5レース分の有効ポイント制だ。つまり、ここで野尻の独走を許せば、チャンピオンタイトルの行方もほぼ決まってしまうと言っていい。だからこそ、ライバルたちにとっては、重要な1戦となる。
その筆頭となりそうなのは、昨年、野尻と同様、最終戦までタイトルを争いながらいくつかの不運もあり、シリーズ2位に終わった平川亮(carenex TEAM IMPUL)。平川は現在もランキング2位につけているが、野尻とのポイント差が22点。昨年のオートポリスでは予選中のスピンなどもありノーポイントに終わっているが、自身にとっては得意なサーキットのひとつということで、野尻との差を詰めて終わりたいはずだ。また、全日本F3時代にオートポリスで鮮烈なレースを展開し、現在ランキング3位につける大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)も注目の存在。そして、前回の鈴鹿でPPを獲得し、決勝でも独走していたものの、まさかのタイヤバーストに泣いた福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)。福住も、ここで巻き返さなければと考えている1人だろう。一方で、小高やアレジを含むルーキーたちの戦いも興味深いものとなるはず。ドライバーたちにとって、走行機会が一番少ないオートポリスで、宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)、大津弘樹(Red Bull MUGEN Team Goh)、阪口晴南(P.MU/CERUMO・INGING)がどんなスピード、どんなレースを見せるのか。そちらにも注目していただきたい。もちろん、ここまで思うような結果を残せていないドライバーたちにとっても、この第3戦をターニングポイントにしたいと考えている者は多いはずだ。
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平川 亮(carenex TEAM IMPUL))
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福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
オートポリスは、阿蘇の山に抱かれる形で作られており、その特徴は、前半と後半、それぞれにダウンヒルとアップヒルがあるというところ。どちらかといえば、前半はハイスピードだが、後半の上り区間は複合コーナーが連続しており、タイヤにも厳しいと言われている。オーバーテイクポイントとしては、1コーナーが定石。しかし、今年はオーバーテイクシステムが全部で200秒間使えるため、通常ではなかなか抜きづらい第2ヘアピンでも多くのポジション入れ替わりが見られるかも知れない。第1ヘアピンからの加速でオーバーテイクシステムを作動させれば、第2ヘアピンでインに飛び込むこともできるのではないかと期待される。そうしたオーバーテイクシステムの使い方も含め、チームとドライバーの戦略は大いに気になるポイント。ドライであれば、タイヤ交換が義務付けられており、そのタイミングも注目だ。オートポリスではレース中のアクシデントによってセーフティーカーの導入もたびたび起こっているだけに、大勢が一気にピットに雪崩れ込んでくる場合もある。その機を上手く活かせるかどうかも結果を大きく左右するだろう。また、ピットの位置が他のサーキットとは逆になっていることから、チームにとってはタイヤ交換そのもののやり方が違ってくる。もちろん各チーム、それに備えて練習してくるが、昨年もミスが発生したチームはあった。その成否が大きく結果に影響するため、やはりピット作業は一つの鍵となるはずだ。ただし、現在の天気予報では、レースの週末、阿蘇地方は雨がらみとなりそうな雰囲気。決勝レースがウェットとなれば、タイヤ交換の義務づけはなくなる。その際には、ドライバーが一人、コース上で戦わなければならないが、誰が強さを見せるのか。42周、あるいは75分間で行われる今回の1戦。いずれにしても、最初から最後まで目が離せない展開となることだろう。