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「テクラボ流」第4戦レビュー 雨ニモマケズ、技ト知恵ノカギリヲツクシ

2018年7月24日

両角岳彦

日本列島を覆う梅雨前線の下で

今日は、この二人のマッチレースになる。スタートの鍔迫り合いがひとまず落ち着いて、19台のSF14が富士スピードウェイの長いストレートを一線の隊列で駆け抜けてゆくようになった3周目あたりで、既にそのストーリーが浮かび上がってきた。混乱の予選で一発のアタックを決めてポールポジション獲得、そこから確実にスタートしてトップを守ったN.キャシディと、その背後のグリッド3番手からジャストミートのスタート、アウト側からキャシディに並びかけつつ1コーナーで2番手を確保した石浦宏明。この二人だけが、後続よりも毎周1秒かそれ以上速いラップタイムで走り続けていたのである。
もちろんこの時点での「マッチレース」のシナリオは、「この後、状況を擾乱するような“何か”が起こらなければ…」という条件付きでの話。この週末、日本全体を覆い続けた梅雨前線が送り込んでくる雨雲が、何より大きな擾乱要素となっていた。
スーパーフォーミュラの「次期戦闘機」となるSF19が日本に初お目見えした水曜日から、雨と風と霧が入れ代わり立ち代わり富士スピードウェイの上にやってくる状況が続いていた。第4戦のタイムテーブルが稼働する金曜日も昼頃までは雨。スーパーフォーミュラの専有走行が始まる13時50分には雨粒は落ちてこなくなってはいたが、2日間にわたって降り続けた雨で路面が水の膜で覆われているだけでなく、その路床や周辺の土に大量の水が浸透している状況であって、SF14が走るとそのタイヤから、そして車両の後方に白いウォータースプレーが巻き上がる状況だった。1時間の走行の終盤ではドライタイヤを試した車両もあったが、ラップタイムはウェットタイヤとほとんど変わらない1分33秒前後で、いわゆる「クロスオーバー」の状況。しかもセッションが終わるとまた、雨のカーテンが風とともに次々と通過して行く荒れ模様の空が戻ってきた。

一夜明けて土曜日朝のフリー走行も、雨はほぼ上がったかに見えて路面はフルウェットという状況で始まり、前日よりもグリップが悪くラップタイムが伸びない状況で推移した。金曜日はウェットタイヤの使用制限がないので、各車手持ちのユーズドタイヤを使い、このセッションから「1イベントの競技期間を通して4セット」というウェットタイヤの使用枠の中で走ることになる。セッション終盤になると乾いたラインが見えてくる状況。 ストレートなどでは路面に水が残る場所を選んで走り、トレッド面を冷やそうとするドライバーも多かったが、ラップタイムが伸びないわりにはウェットタイヤのブロックがちぎれ摩耗を起こしやすい「ダンプ(ちょい濡れ)」のコンディションになっていた。そこを1時間走り続けたウェットタイヤ1セットはこれでお役御免となり、エンジニアとドライバーは予選、そして決勝が雨になるようならば残り3セットをどう使うかにも思いを巡らす必要が出てきた。

縞状の雨雲に翻弄されたアタック

 
その予選、雨雲の悪戯に皆が振り回されることになる。
まずはQ1。昼をはさんでいったんドライ路面になっていた状況の中、全ての車両がドライタイヤ(いうまでもなくQ1はミディアムを使うことが指定されている)を装着してピットロード出口の信号がグリーンに変わるのを待つ。しかしセッション開始5分前頃からパラパラと雨が落ち始める。とはいえここでウェットタイヤを選ぶ意味はなく、皆そのままコースインしていった。路面温度26℃、日照なしとあってミディアムタイヤが暖まるのにはそれなりに走り込む必要がある。アウトラップからさらにもう2周したあたりでようやく1分24秒台のラップタイムが表示されるようになり、この時点でトップは関口雄飛の1分23秒954。2番手の山本尚貴からQ1で足切りとなる15番手の野尻智紀まで、0.82秒の中に14車が詰まる状況となった。
そしてルーティンどおり残り8分を切ったところで各車が新品のミディアムタイヤを履いてコースに向かったのだが、そのエンジン・サウンドが雨雲に響くのと時を同じくして最終コーナー側に雨のスクリーンが降りてきた。それが1コーナー方面に移動してコース全域がみるみる雨に覆われ、路面もスリックタイヤの表面も水で光る状況に移行する。こうなるともうタイムは出ない。しかしウェットタイヤに履き替えるにはもう時間がない。1回目の走行で出したタイムがQ1の持ちタイムになることが決定的な中、野尻とT.ディルマンはピットに戻らずもう1周走り続けるが、それも無駄に終わった。

 そこからQ2まで10分間のインターバルの間に雨はまたも降り止み、路面も軽く濡れている程度。どっちのタイヤで出るか、悩ましい状況の中、ピットロード出口のシグナルはグリーンに。ウェットタイヤを選んだのは石浦、国本雄資、山本、関口、中嶋一貴、J.ロシター、伊沢拓也とちょうど半数。しかし彼らはアウトラップだけで(関口のみ2周)ピットに飛び込み、タイヤを履き替えて急ぎコースに戻る。こうなると7分間のセッション最後の周回が最良タイムのチャンス。そこでまず塚越広大が1分24秒フラット、さらに平川亮、続いてキャシディが1分23秒台をマーク。山本が1分24秒2をわずかに切り、続いて関口がセッション終了のチェッカードフラッグを受けながらソフトタイヤでの2周目、他より1周かそれ以上少ないウォームアップで1分24秒358を記録。たが、国本が1分23秒200でトップに抜け出し、石浦も最後の最後に1分23秒台を記録したことで、関口はQ3進出ぎりぎりの8番手に収まったのだった。

残り5分でドライからウェットへ

 ドライタイヤで走れたQ2を終えたところで、再び雨が落ち始めた。いったん雨粒が目に見えるような降り方になったかと思えば、またほとんど止み、路面もQ2終盤とほぼ変わらない状態になりそうだったので、各車ドライ(ソフト)タイヤを装着してコースイン…というタイミングでまた雨粒がはっきり見える降り方になった。ここでウェットタイヤを最初から履いて出て行ったのが中嶋。そのマシンが最終コーナーから直線の前半ではウォータースプレーが巻き上がるが、フィニッシュラインを通過して1コーナーに向かうところでは水しぶきが薄く上がるだけ、というのが1周目の状況。しかしコース後半は完全に濡れてドライタイヤではもうタイムは出ない。中嶋以外の7台はアウトラップだけでまたピットに飛び込んで、今度はウェットタイヤに履き替える。一人ウェットタイヤのウォームアップを進めた中嶋は計時2周目で1分38秒840をマーク。他は残り4分を切ったこの時点からタイヤを作動状態に持っていってタイムを出せるか、何周できるのか…という状況に追い込まれた。残り1分40秒が、セッション終了までにあと2周できるか、次の1周でタイムを出すしかないかの分かれ目。その前に計時ラインを通過できたのが塚越、キャシディ、山本。他の4台はここが最終周回、というアタックでまず石浦が1分38秒786を出して中嶋のベストタイムをわずかに上回る。そしてもう1周を走ってきたキャシディ、山本が最後にタイミングモニターの最上列とその下に飛び込んできた。
雨に擾乱された今回の予選を走り終えて、ポールシッターのキャシディを担当する田中耕太郎エンジニアと一瞬の立ち話。
「ドライ(路面)に合わせたセッティングをしておいたところから、手を付けられるモノからウェット仕様に。まずエアロはHDF(ハイ・ダウンフォース)。アンチロールバー(注:旋回時の前後グリップ・バランスを左右する)はドライでもなくウェットでもなく、という設定。キャンバーは(Q2からQ3へ)『さぁドライだ』と思って寝かせたらウェット履き替えでしょ。もうしようがないからそのまま。いやー、すごく中途半端なセッティング。(長年、トラック・エンジニアをやってきた)私でもほとんど経験がないような…。ドライバーが残り時間を(無線で)聞きながらよく走ってくれたよね。それと(アタックラップで前を走っていた)塚越のスリップ(ストリーム)も効いたかな。向こうもアタックしているから1周ずっとちょうど良い距離で」。

やっと乾いた路面をどう攻略するか?

 日曜日、何とか雨雲は去りつつあって、朝のフリー走行が始まる頃には箱根外輪山との間に青空ものぞくようになっていた。この週末初めての完全ドライ路面。ここで最初からソフトタイヤを履いて出たのは石浦、国本、野尻、T.ディルマン、D.ティクトゥム、山本、小林可夢偉、関口、平川、中嶋、ロシターといった面々。そこからピットに戻ってしばらく止まる車両も多く、やっと皆、決勝レースに向けたセットアップのファイン・チューニングに取りかかっていることがうかがえた。そんな中、キャシディは残り時間が半分、15分を切ったところでピットイン。ミディアムからソフトに履き替えてコースに戻ると計時3周目に1分25秒フラットまでタイムアップ、そこでいったんピットに戻って何やら微調整の後にコースに戻ると、すぐに1分25秒フラット、次の周回では1分24秒988とこのセッションではただ一人1分25秒を切るタイムを刻んで、他より早めにピットに戻った。
 レースフィニッシュ直後のTECHNOLOGY LABORATORYトークショーのステージに足を運んでくれた田中エンジニアの言によれば、「ソフトタイヤがどのくらいもつかはシーズン直前のここ、富士でテストしていました。(気候、路面状況は異なるけれど)そこは経験で予測できます。この前のSUGOでは(ソフトで)レース距離を走りきれるという判断から燃料搭載量によって決まる『窓』(満タンまで補給してゴールまで走りきれる周回、いわゆるピット・ウィンドウ)が開いたらすぐ、5周でピットインさせましたが、ここ富士はタイヤに対してはるかにキビしいので、まぁ30周ぐらい(が限界)かな…と」「前の方からスタートする者にとっては、やはり蹴り出しとそこからの加速、1コーナーと、ソフトのグリップが高いことが効いてきます。私自身がグリッドでまわりのクルマを見たところでも3列目まででミディアムを履いたのは塚越ぐらいで、1周目で前に出たのは皆ソフトでしたね」。
  かくしてこの戦いは、冒頭のシーンに至るのである。

ソフトでどこまでロングランできるか?

レースも序盤にしてキャシディと石浦は後続との速さの違いを明確に見せつけ、ソフトタイヤで「行けるところまで行く」態勢に入った。一方、ミディアムタイヤでスタートして後方の塊の中を走る面々の中からは、前戦SUGOでキャシディ、中嶋、ディルマンが早めのタイミングでソフトに履き替えて2~4位を獲得したことにインスパイアされたのか、「ピット・ウィンドウが開く」ぎりぎりの9周目から(燃料流量上限=リストリクター設定がSUGOの90kg/hに対して富士では95kg/h、コース特性から全開時間も長いので、燃料消費は多くなる)、ピットに飛び込んで給油とソフトへのタイヤ交換を行う車両が現れた。まず伊沢、ディルマン、小林。続く10周目には平川、野尻、N.カーティケヤン。11周目に国本、塚越、ロシター、山下健太。
この後、レース終末までの状況をここで記してしまえば、残り44~46周を走り続けた彼らのソフトタイヤは、ゴールにまだ10周ほどを残すあたりで「パフォーマンスの崖」(グリップ性能が一気に低下すること。今年のソフトではトレッド層が全摩耗に近づいたところでこの症状が現れる)に到達したことを示す、ラップタイムの急な落ち込みを示した。田中エンジニアによる「(ソフトのもちは)富士では30周あたり」という予測どおりの症状である。

 この先行ピットストップ組の中でまず小林はピットアウトしたところでトップ2車に周回遅れにされ、その前を行くカーティケヤンとディルマンが接近戦になっていた。14周目、この二人にトップのキャシディが追いつく。前の2車はソフトタイヤを履いたとはいえ燃料搭載量はキャシディ、石浦よりも10周分・15kgほど重く、1分27秒台半ばのラップタイム。キャシディとしては前をふさがれる状況になり、石浦との差も1秒まで縮まってしまう。この状態で10周近くを走り続けることになったのだが、ラップタイム推移からソフトタイヤの消耗傾向を推測すると、キャシディと石浦のラップペースが前走車の存在によって落ち込んだのは5~6周ぐらい。その初期に1周1秒かそれ以上を失っているが、20~23周目あたりになるとソフトでまだ10周強走っただけの前走2車とほぼ同じペースまで落ちてきていて、抜くのは意外に難しい状態になっていたと思われる。2車をパスして前方が空いた25~27周目にかけて、キャシディのラップタイムは1分27秒8~28秒0と、序盤よりも2秒は遅くなっている。

「1秒」の中のせめぎ合い

こうしてトップ2車がそれぞれにぎりぎりのドライビング、その差は1秒前後で微妙に伸び縮みするという状況が続くと、どちらがいつピットに飛び込むか、が戦いの焦点になってきた。レースもほぼ半ばという24周目にはソフトでスタートして走り続けていた中からまず関口がピットストップ、コースに戻った位置は早めソフト履き替え組の中で先行する国本、平川の後ろになった。27周完了で山本がピットストップ、関口の後方に戻る。
30周完了でティクトゥムもピットストップするが、トップを行くキャシディのすぐ前に戻ってきて、次の周の100Rではラインを塞ぐ形になってしまう。これでペースが落ちたキャシディに近づいた石浦は、アドバンコーナーから300Rにかけてオーバーテイクシステム発動。さらに間隔を詰めてゆくが、その先のダンロップコーナーで並ぶところまでは近づけない。しかしその後、前が空いてもラップタイムが1分28秒台に止まったことでキャシディと田中エンジニアは「ソフトの崖が来た」と判断、35周完了でピットロードに飛び込んできた。静止時間12秒でタイヤ4本交換完了(このチームのフロントジャッキは手動なのだが、作業時間は短い)、燃料補給もそれに合わせてクルーはキャシディをコースに送り出す。
 石浦はもちろん、ここで可能なかぎり速く走ることを試みていた。36周目から39周目にかけて1分27秒7のラップタイムを並べる。コースの全ての場所で、この時のソフトタイヤのグリップを限界まで使うドライビングだったはずだ。しかし新品のミディアムタイヤを履いてコースに戻ったキャシディのドライビングも見ものであって、37周目には早くも石浦とほぼ同じ1分27秒765で走り、38周目には石浦の1分27秒730に対して1分27秒644、39周目にはこの日のミディアムタイヤ最速となる1分27秒226を叩き出し、この周だけで石浦のリード、言い換えればピットストップのための持ち時間を0.5秒ちかく削り取った。
この状況に石浦と村田卓児エンジニアも反応、40周完了でピットロードに滑り込む。39周完了時点でのリードは44秒462。40周目のセクター1ではキャシディが0.329秒速く、セクター2では逆に石浦が0.280秒速いという、ぎりぎりのせめぎ合い。その周回もキャシディのラップタイムは1分27秒469。石浦のピット作業も順調に進んだが、発進の瞬間、石浦のクラッチミートとフロントジャッキの退避にわずかなずれがあり、一瞬の遅れが入ったことで静止時間は手元計測で13秒フラット。ピットロードを出てコースに合流する瞬間、石浦の左横をキャシディが通過して前に出た。

改めて言うまでもなく、この時キャシディのタイヤは十二分に暖まっていたのに対して、石浦のミディアムタイヤはまだ転がし始めたばかり、ここから暖めてゆく状況で、キャシディに前に出られてしまえば打つ手はもはやない。
さらに蛇足としての「たられば」結果論を書くならば、キャシディのほうがソフトタイヤの「崖」が来たと判断して先にピットインしてコースに戻ったその周回(36周目)、石浦のリードは45秒あった。ピットロード走行による遅れと作業静止時間を合わせたロスタイムは概算44秒(タイヤ交換作業次第でさらに1秒程度は詰まる状況になってきたが)。だからあと1秒でもいいからマージンを増やそうと走り続けたのだったが、思いの外にキャシディがミディアムタイヤの「最初の一撃グリップ」を引き出した。それを確かめた瞬間にピットに向かったとしても38周目の段階でリードはまだ45秒あった。あるいは、ライバルが先に動いた場合はその周回を思い切り速く走って1周後にピットイン、オーバーカットを狙う、というセオリー(らしき)選択もあっただろう。キャシディがピットインした36周目のセクター1と2でも石浦の方が約0.2秒速く、37周目はラップタイムでさらに1秒速く走っているのだから、実質45+秒のリードに、ピットアウトしてタイヤを暖めるキャシディがセクター2までで0.6秒ほどロスして周回してくるのを加えて、計算上はピットアウトした時にその前に出ることは可能だったはずだ。キャシディがピットアウトから1周しかしていない状況であれば、ミディアムタイヤの暖まり具合の差もまだ少なく、石浦をもってすれば押さえきれたかもしれない。
 一方で田中エンジニアは「石浦(のソフトタイヤ)、早くタレて!」と念じつつ、キャシディを送り出した後の2~3周は「ホントにどうなることか、と思ってた」と振り返る。ドライバー二人はそれぞれのパフォーマンスをフルに絞り出し、その裏側では田中耕太郎と村田卓児、二人の知恵者トラック・エンジニアの読みの勝負が続いていたわけだ。
  しかしこのピットストップの応酬とその前後の攻防を含めて、この2日間、誰よりも速く走り続けたのがキャシディであり、それが彼自身にとってスーパーフォーミュラ初めての勝利に結実した。そういう“シンプルな”レースだったのである。


Q3に残った8車のアタック状況を、時系列で追ってみた。セッション開始は15時17分。そこで各車がコースインしていったところで雨が強まり、最初からウェットタイヤで出た中嶋以外の7車は計時ラインを通過せずにピットロードに駆け込んできた。各車の最初のプロット(点)はこの瞬間のもの。中嶋だけはここから計時対象の周回に入る。ウェットタイヤに履き替えに戻った面々のアウトラップは富士のコースレイアウト上、ピットでの停止・作業時間も含めたものとなり、実質的にはコースに戻ったところからタイヤがその瞬間瞬間に出すグリップをぎりぎりまで使って走っていることが読み取れる。その間もずっとウェットタイヤで走っていた中嶋は計測1周目でまず1分38秒840。アウトラップ1周でタイヤを暖めなけれぱならない他のドライバーがこれを越えるのは難しいかと思われたが、チェッカードフラッグが提示される15時24分まで20秒を切ったところで塚越、13秒前にキャシディ、2.7秒前というぎりぎりで山本が通過。もう1周のアタックに入っていった。その後方ではアウトラップに少し時間をかけてタイヤを暖めた石浦が一気に1分38秒766へ。最後にキャシディ、山本がフロントローを決めるラップタイムを記録している。


決勝レース上位8位までに入った車両の55周のラップタイムを追ってみる。スタートから10周をすぎるあたりまで、キャシディと石浦のラップタイムが他のソフト装着車よりも1秒ほど速く、ここでレースの流れが形作られた。13周目から急にペースが落ちているのは早めのピットストップで周回遅れ寸前になったカーティケヤンとディルマンに前を押さえられる状況になったため。しかしレース全体のタイム推移を描いてみると、この前走車の存在によってラップタイムが落ちたのは5周程度で、その後はソフトタイヤのグリップが徐々に低下して行く状況を推定したラインに乗ったタイムになっている。そして30周目あたりからはミディアムタイヤでの速い周回と変わらないペースにまで落ちてくる。そこで前走車(ティクトゥム)に高速コーナーで前を塞がれたのが32周目。その後もラップタイムが回復しなかったキャシディはピットストップする。ここで石浦が1分27秒台後半までペースを上げたのはさすがだが、すでに状態の良いミディアムのほうが速いところまでソフトが消耗していたことは、ピットアウトしてきたキャシディのラップタイムと比較すれば明らかだ。ミディアムでスタートし早めにソフトに履き替える戦略を選んで3、4位にまで順位を上げた国本と平川にしても、履き替え直後は燃料も満タンで重いことを考えても、トップ2人の序盤のペースには及ばず、ソフトで30周前後を走ったところから明確にペースダウンする傾向を示している。他のソフト・スタートを選んだ車両は20周を越えるところから一気にタイムが落ちている。ソフトの消耗をどこまで押さえられるかはドライビングとセッティングによって変わってきそうだ。


こちらももうおなじみになったかと思うが、各車の計時ライン追加時刻から、周回毎の優勝車両を基準としたタイム差の推移をグラフ化、同時に周回毎の順位変動を追うラップチャートを描いたもの。全周回を通してキャシディと石浦の“マッチレース”であったことが、このグラフにも明快に現れている。石浦のピットストップ時期選択も45秒あったリードが44.5秒に削られた、というシビアな状況の中での話である。ミディアム・スタートから早めのソフト履き替えを選択した中では国本と平川が前を走るソフト・スタート組よりも速く走って、とくに関口、山本、中嶋、松下との位置関係をその中盤で逆転していったこと、グリッド12番手からソフトでスタートした大嶋がスタートでは前にいた何車かが早めにソフトに履き替えるもペースが上がらない状況を活かして順位を上げたことなども、お互いのラインの推移から読み取れる。

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