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新タブロイド紙「STAGE」特別インタビュー フェリックス・ローゼンクヴィスト編_part2
2017年8月11日
Q.今、スーパーフォーミュラにも出場していますが、日本のレースについて知り始めたのはいつ頃ですか?
FR:アジアでレースをしてから、常に日本のレースには注目してフォローしていたよ。全日本F3やフォーミュラ・ニッポン/スーパーフォーミュラ、スーパーGT。そういう選手権のことは、うんと前から知っていた。でも、実際に日本に来るたびに、ここがとてもいいっていうことに気づかされる。特に、日本のファンの人たちは素晴らしいよね。ヨーロッパと比べて、とても印象的だ。
Q.実際に来る前、誰か日本に知り合いや友人はいましたか?
FR:僕のマネージャーのステファン(・ヨハンソン)は、日本でレースをしていたけど、だいぶ昔のことだよね。エイエ・エルグやビヨン・ビルドハイム、マーカス・エリクソンも日本でレースしていたし、彼らはみんな日本のレースが素晴らしいっていう話をしていたよ。それに、去年はニック・キャシディとチームメイトで、彼が僕の目をさらに開いてくれたっていう部分もある。ニックは日本で走ることをとてもハッピーに思っているし、ヨーロッパのドライバーにとって日本はとてもいい場所だと思うよ。
Q.以前から日本のレースをフォローする中で、あなたにとって最も興味深いシリーズはどれでしたか?
FR:クルマという意味では、間違いなくスーパーフォーミュラだね。ものすごく速いし、そういうクルマでレースするっていうのは、僕にとってひとつの夢だった。F1に最も近いパフォーマンスがあるクルマだと思う。レースとしては、スーパーGTかな。さらに一歩、クールなレースだと思うよ。日本で一番の選手権だとも思うしね。でも、いずれも同じぐらいいいと思う。僕自身は、フォーミュラカーが好きだから、今スーパーフォーミュラにいられてハッピーだよ。
Q.F3に長年留まっていましたけど、その後、GP2に行くチャンスとか、そういうものはなかったんですか?
FR:ないね。僕にとって、GP2に行くっていうのはターゲットになったことがない。GP2に行こうと思ったら、メーカーのバックアップを得るか、あるいは500万ユーロ(約6億5千万)という巨額な資金を2~3年に渡って見つけなければならない。トップチームで乗って1年目に勉強して、2年目にタイトルを争うという計画を立てたら、それだけの資金が必要だ。そんな資金を得られる可能性はなかったし、GP2は全く射程圏内になかったよ。だから、それよりDTMとかフォーミュラEを見ていたんだ。資金を探して走り回るんじゃなく、自分自身をもっと安定した状況に置くためにね。まずそういう状況を作れば、その後、何かが起こるかも知れないし。
Q.スウェーデンでは、スポンサー探しはどれぐらい難しいんですか?
FR:その点では、僕はラッキーだったと思う。僕が育ったエリアの人たちは、とても協力的で、多くの小さな会社が僕を助けてくれた。ここまで毎年のように僕をサポートしてくれたことに、とても感謝しているよ。多くのドライバーが母国でのスポンサー探しに苦しんでいるっていう話はよく聞くけど、僕はその点では恵まれていた。他の多くのドライバーよりも、状況は良かったと思う。
Q.今、マーカス・エリクソンがF1に乗っていますよね? 彼はスウェーデンのレース関係者やスポンサーの全面的な後押しを受けてF1まで行きましたが、F3でのパフォーマンスなどを見ると、あなたの方が良かったぐらいではないかと思います。なぜ、スウェーデンの関係者はあなたのことをF1にプッシュしないんでしょうか?
FR:F1に乗るためには巨額の資金が必要だし、誰も彼もサポートするっていうわけにはいかないからね。3人も同時にF1に送り込むのはムリだし、誰か1人だけ選んでプッシュするしかない。その点で、当時マーカスが若くて才能を見込まれたから、彼らもマーカスをプッシュしようって決めたんだと思うよ。それは正しい決断だったと思う。毎年プログラムの中で、こっちにしよう、あっちにしようっていうのは良くないからね。今、現在の状態で、僕にチャンスがあったら、準備はできているよ。だけど、マーカスはフォーミュラBMW、F3、GP2と順調にスクールを通り抜けて、その時点でF1に行く充分な準備ができていたと思うんだ。その時期、まだ僕は準備が整っていなかった。F3しかやっていなかったし、長年そこで過ごしてしまったから。でも、マーカスは出場するカテゴリーで常に僕の一歩先を行っていたし、彼がF1に乗っているのは納得できる。それに、彼がチャンスを得たことに対しても、僕はハッピーに思っているよ。
Q.あなたにとっては、タイミングが悪かったということなんでしょうか?
FR:そうかも知れないね。僕はより険しい道で学んできたし、レースのために必死で戦ってきた。だけど、僕にとっては、そこを潜り抜けてきた経験もすごくいいいことだったと思う。ビジネスということに関してより学べたと思うし、それによってより長いキャリアを形成することができると思うんだ。だから、何も後悔していないよ。
Q.でも、あなたはメルセデスに何年も待たされて、スウェーデンの人たちは、あなたが現れる前に、他のドライバーをF1に送り込んだんですから、少し不運でしたね?
FR:多分少しはそうかも知れないし、それを不運っていうこともできる。だけど、さっきも言ったように、僕自身、他の多くのドライバーと比べて、ラッキーだったっていうこともあるんだよ。カート時代、回りにはとてもいいドライバーがたくさんいたけど、毎年何人もがカートを止めなくちゃならなかったんだ。資金的な問題でね。僕はそこで何とか毎年生き残ってきたわけだし、ラッキーだったと思うんだ。それに、メルセデスも政治的な理由か、何か他の理由があって、僕にドライブの機会を与えられなかったんだと思う。誰でも何らかの理由があるし、実現しなかったっていうのも、それはそれまでだよ。
Q.でも、その後、あなたはDTMに参戦しましたよね? モスクワが最初で、全部で4戦出場しています。実際に出場したDTMに対しては、どのような印象を持ちましたか?
FR:最初のレースの時、僕のクルマには多くのウェイトが載っていたんだけど、それでもポイントを獲ることができたし、上手く行ったんだよ。クルマにもすぐに慣れることができたし、パフォーマンスを示すこともできた。誰にとっても、それは予想外だったみたいだけど。すごくタフな選手権だし、クルマも難しいからね。でも、僕はシーズンの極めて終盤にデビューしたわけだし、明らかにチームの中でも優先権がなかった。だから、常にチームメイトをサポートしなければならなかった。まぁ、僕はデビューした時点で選手権の中でも最下位だし、そうしなければならないのが普通だよね。ファクトリーのドライバーになったら、時々そういうことをしなければならないんだ。でも、それと同時にフォーミュラEを始めて、そっちの方が僕のレーシングスタイルに合っているって気づいたんだよ。チームメイトが1人いるだけだし、それ以外のドライバーとはどんな戦いをしようと自由だから、ハッピーに感じた。自分がやっていることをハッピーに感じられるっていうのは重要だからね。それが自分自身をもっと強くしてくれる。フォーミュラEを始めた時、これは今までとは違う何か新しいものだと感じたし、僕はあの選手権が大好きなんだ。正直言って、DTMよりフォーミュラEの方が好みだよ。
Q.少し戻りますけど、DTMはあなたにとって初めてのツーリングカーでしたよね? それでもすぐに順応できたっていうことですよね?
FR:スーパーGTと同じで、DTMのクルマもすごくフォーミュラカーに近いからね。だけど、実際に出てみて、DTMは最もタフな選手権のひとつだという風に感じたよ。時には、全ドライバーが予選で1秒以内に並ぶっていうこともあるしね。だから、いい経験だったと思う。それと同じ年、去年はインディライツにも出たけど、それも人々に僕がF3以外のクルマでもちゃんと走れるっていうところを証明したかったから。6年間もF3しかやっていなくて、他のクルマに乗っていなかったんだから、何か別のクルマで違うレースをしたかったんだよ。自分にとって新しいレース、新しいサーキット、新しい大陸を発見したいっていう好奇心も強かったしね。そう思う中で、ビラルディ・レーシングからオファーをもらって、インディライツに出たんだ。それも楽しかったよ。僕はフル参戦してはいなくて、2~3回欠場しているんだけど、10レースした中で3回優勝することができたし、面白かったね。今でも、アメリカのチームとは連絡を取り合っているし、すでにチップ・ガナッシ・レーシングでインディカーのテストも1回した。あんなトップチームでテストできたなんて素晴らしかったし、そこでも少し夢が叶ったっていう感じだったね。その後も話はしているし、アメリカでレースするっていうのもいいかもね。
Q.去年はブランパンにも出場しているんですね?
FR:うん。去年はスパ24時間に出場して2位になったんだ。スパ24時間は僕にとってお気に入りのレースだったから、すごく良かったよ。
Q.去年になって、色々なカテゴリーに出始めましたが、今年はどうして日本に来る道を選んだんでしょうか?
FR:まずフォーミュラEの契約書にサインしたんだよね。フォーミュラEはいいシリーズだし、プロとしての契約を結ぶこともできた。そして、このレースは去年の秋に始まって、今年の夏まで続くシリーズだ。だけど、僕は他にも何か別のシリーズに出る必要があると感じていたんだよ。フォーミュラEは1デーのイベントだし、週末の間に走れる距離もものすごく短い。去年、たくさんクルマに乗っていたから、フォーミュラEだけじゃなくて、もっと乗らなくちゃって思ったんだ。そこで他の選手権を探したんだけど、大抵何回かは日程の重複があった。DTMもそうだしね。だから、最初はフォーミュラEだけをやろうと思ったんだけど、その後、チーム・ルマンがシートの空きがあるって、僕のマネージャーに連絡を取ってきた。それで、日程を確認したら、バッティングがなかったんだ。それに、これは僕の状態をキープするのにも完璧だなって思った。ものすごく速いクルマだし、すごく力強い選手権だしね。フォーミュラEと並行して参戦するなら、スーパーフォーミュラが最適だって思ったんだよ。再び新しい国、日本で発見することもあるだろうし、それは僕がやりたいと思っていたことだ。僕は、これまで常にF3のことで、トムスの小海(進)さんと連絡を取り続けていたんだよね。彼はいつも僕に日本に来るよう、強く進めていた。だから、最終的に日本に来られて、とても嬉しいよ。
Q.小海さんから誘いを受けていた時は、毎年ずっと『ノー』と言っていたんですか?
FR:日本にはすごく来たかったんだけど、当時の僕にはヨーロッパでやっていたこともあるし、向こうに留まる方が理に叶っていたんだ。だから、今年ようやく日本に来ることができて、すごく嬉しいんだ。
Q.小海さんから最初に連絡があったのは、いつだったんですか?
FR:だいぶ前だよ。確か2012年とか。そこから特にオフシーズンは、連絡を取り合っていて、日本に来ないかって言われていた。でも、実現しなかったんだ。ちょうどその頃だと思うけど、日本のチームも資金的に苦しんでいて、何年かは多少資金を持ち込まないと乗れなかったんだよね。だから、ヨーロッパにいる方がいいだろうって思ったんだ。向こうの方が資金を見つけるのが容易だったから。だけど、今は日本にいるんだから、ハッピーだ。
Q.フォーミュラEとスーパーフォーミュラのクルマは、どこがどういう風に違いますか?
FR:フォーミュラEは、これまでとは全く違うクルマだからね。電気自動車で重量が重いし、スーパーフォーミュラと比べたら、すごくスピードも遅い。スーパーフォーミュラの“怪物”とは余りにも違い過ぎて、比べるのは簡単じゃないよ。それに、走る場所も全く違うからね。フォーミュラEが行われるのは、すべてストリートサーキットで、距離も1.5kmと短いし、とてもタイトだ。一方、スーパーフォーミュラは通常のサーキットで行われる。だから、比べるとしたらF3が適当なんだろうけど、スーパーフォーミュラはF3よりもうんと速いよね。けど、ドライビングスタイルは似通っているし、ドライバーにとってはいいレース。長いレースでより体力が必要だし、タイヤや燃料のことを気にしないでずっとプッシュできるからね。
Q.最初にこのクルマをテストしたのは、オフの鈴鹿テストでした。気温も低く、路面コンディションも非常に良かったと思いますが、初体験の時の感想は?
FR:クールだったよね。鈴鹿のテストはこれまでで最高のコンディションだったし、毎日のようにコースレコードも更新されていたし、それがF1のラップタイムにものすごく近かった。あのコンディションでドライブできたっていうのは、素晴らしい経験だったよ。レースウィークに入ったら、それよりは少し遅かったけどね。だけど、テストの時はものすごく感動した。それまで乗ったどのクルマよりも速かったから。僕はインディカーやGP2など、似たようなパワーのクルマに乗った経験もあって、それがある程度は参考になったけど、冬のテストで鈴鹿の1コーナーに入って行く時にかかる約5Gっていうのは印象的だったよ。だけど、スーパーフォーミュラの契約書にサインしたのが、テストのたった1週間前で、自分が肉体的に十分準備する時間がなくて、テストの時に苦しんだっていうのはかなり残念だったね。今では大丈夫だし、大きな問題ではなかったけど。
Q.最初のテストを終えて、自分の選択は正しかったと思いましたか?
FR:うん。すごくハッピーだったし、イケてるって思ったよ。
Q.スウェーデンだけでなく、かつて日本で走ったことがあるヨーロッパのドライバーたちからは、この選手権に関して、どんなことを聞いていましたか?
FR:日本で走っているドライバーは、いいドライバーがすごく多いって聞いていた。日本では多くのドライバーがGTとフォーミュラの両方でレースしているし、常に同じサーキットでレースが行われているから。だから、誰もが日本のサーキットでは、とてもいいドライバーになるって。毎月のように、同じサーキットで何周も走っているわけだからね。ヨーロッパの場合は、いつも違うサーキットで走っているんだよね。だから、日本のドライバーがヨーロッパに来た時には、少しそれで苦労するっていうのが、いつも言われていることなんだ。でも、彼らは日本ではものすごく速いし、ドライビングのレベルもすごく高い。だから、アンドレ(・ロッテラー)みたいなドライバーでも、日本人を倒すのが簡単じゃないんだなって、確信できたよ。
Q.日本人と仕事をするのも初めてだと思いますが、日本のチームに対する印象は?
FR:ヨーロッパとはかなり違うよね。僕のチーム(チーム・ルマン)は、仕事のやり方がかなりヨーロッパに近いと思うけど、メンタリティーの違いもあるし、日本には英語が喋れる人もそれほど多くない。お互いを分かり合うのに、言葉が最も大きな問題だと思う。例え、英語が喋れたとしても、日本人はヨーロッパ人とは全く違うから、難しいよね。何かが起こった時の反応も、違うと思う。それに関しては、少しずつ学んでいる所だし、日本の文化にも合わせられるようになると思うよ。だけど、みんな親切だし、僕が来た時もこれまでの経歴からドライバーとしてすごく尊重してくれた。誰もがレースに対して情熱を持っているし、僕も日本に対しては全体的にとてもポジティブな気持ちを持っている。
Q.ところで、これまでのキャリアの中で、あなたはストリートサーキットでのレースに非常に強く、マカオをはじめ、ポーやセント・ピーターズバーグ、トロント、ノリスリンクなどで優勝。“ストリートサーキット・スペシャリスト”とも言われています。なぜ、それほどストリートサーキットが得意なのでしょうか?
FR:ストリートサーキットは、普通のサーキットとは全く違っているんだ。普通の道を使うわけだから、途中で路面の変化もあるし、グリップレベルも違う。もし小さなミスを犯したら、すぐにクラッシュしてしまうしね。これは違うタイプのゲームなんだ。普通のサーキットだったら、ブレーキを遅らせて少しはみ出しても戻って来られる。でも、ストリートではすぐクラッシュだ。僕はそういうチャレンジが好きだし、いつも結果がいいんだよね。だから、どの選手権も、最低1回はストリートサーキットでのレースを持つべきだって思うよ(笑)。ストリートサーキットで上手くやるためには、自分自身とクルマの限界を知ることが大切だと思う。行き過ぎないように。だけど、そこに最も近づくように。そこが僕の強みなんだと思う。オーバープッシュもアンダープッシュもしないで、ちょうどいいウィンドウに入れるっていうことが得意なんだと思うよ。そのギリギリのところを狙うには勇気も必要だ。多分30%ぐらいのドライバーは、僕と同じように、ストリートサーキットが得意だと思う。だけど、残りの70%は分からない。ストリートで速く走ろうと思ったら、違うメンタリティーが必要だからね。ドライバーなら、僕が言っていることはみんなが分かると思う。
Q.最近のF1サーキットはオーバーシュートしても、戻って来られますよね? その点、スーパーフォーミュラが行われるコースのほとんどはそうではありません。それに関しては、どう思います?
FR:F1トラックで、僕が大嫌いな部分がそれなんだよ。オーバーシュートできて、コースアウトしても戻って来られて。たとえ全くダメなドライバーでも、コースの限界まで行けるからね。あれは、レースを破壊すると思う。レースっていうのは、ドライバー同士がギリギリのところで接近戦をやるものだし、それができた時に“ふぅ”と息を付くようなものだ。だけど、コースアウトしても戻って来られるなら、誰も恐怖を感じないし、心拍数も上がらない。だから、根本的に何かが間違っていると思うよ。だから、岡山とか鈴鹿、菅生といった日本のサーキットは素晴らしいね。コースアウトしたら、即クラッシュだからイケてるよ(笑)。