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新しい「道具」を最初に手なずけるのは誰? 「テクノロジー・ラボラトリー」

2019年4月15日

両角岳彦
 

外装だけではない、「走りを変える」進化

SF19、少々手ごわい。
昨年夏、富士スピードウェイでの実車お披露目以来、「SF19ってどんなキャラクターなんだろう」と情報収集、あれこれ考えつつ、この3月初旬からは実戦を走る20台のマシンが走り始めた2回・4日間のテストを観察してきた私の分析は、そこに凝縮されつつある。
私自身の最初の印象も、そして多くの人々の目に映る姿としても、SF19は「SF14のバージョンアップ」と受け止められているに違いない。たしかに、エンジニアリングの基本としてはそのとおりだ。
NRE(Nippon Racing Engine)4気筒+ターボ過給をモノコックタブの背面に剛結する基本レイアウトを変えることはもちろんなく、外観上の大きな変化は、他車の側面などに衝突した時のことを考えてノーズ先端を低く下げたこと(それ以外にも耐衝撃・衝撃吸収性能を最新のF1と同等の国際的な安全基準に適合させている。もちろんヘイローも含めた)、そこで支持するフロントウィングはフラップが2枚に増え、そしてリアウィングもサイズと形状を変更。前輪後方にモノコックタブから短い「シャシーウィング」が生え、サイドポンツーン開口部を取り囲むように「ポッドウィング」が加えられた。ここまでは「見れば、わかる」。外観や基本諸元では見とるのが難しい、しかしレーシングマシンとして、タイヤと路面の摩擦力を引き出して、そのバランスの上で走る4輪車としては非常に重要な「モディファイ」は、まだ他にも複数ある。
まず、これは当初から公表されていて、SF14と並べて見れば明らかに見てわかる変化だが、フロント・タイヤがおよそ20mm幅広になった。タイヤ呼びサイズによれば250(総幅)/620(外径)R(ラジアル構造)13(ホイール径)から270/620R13へ。接地面が少し横に拡がって摩擦面積が増え、その分だけ摩擦力も増える方向だし、併せてタイヤが荷重を支える基本となる空気容量も約8%増えた。いうまでもなく、4輪車としては前側で運動を作り、遠心力を支えるタイヤの摩擦力がその分だけ増強されたわけだ。
これに対してリア側のタイヤにも変化がある。360/620R13というサイズのタイヤそのものは、骨格構造も接地面を形づくるコンパウンド(各種の素材を混ぜ合わせて練った合成ゴム)も変わっていない。しかしその位置が前輪に50mm近づいた。ホイールベースが短くなったのである。
さらにもう一点、些細なことのようでいて今日の純競技車両としてはとても意味の大きな変更が加えられている。ステップドボトムの車体底面中央に固定されるスキッドブロック(プランクなどともいう。圧縮合板のパネル)の厚さが、SF14の10mmから5mmへと薄くなっているのだ。単体部品としてはダラーラのF3と共通だという。わずか5mm、なのだが、スーパーフォーミュラのマシン・セッティングでは「車高」を0.5mm、時には0.2mm単位で調節する。それが車両の底面に働く負圧、すなわちダウンフォースを変化させ、クルマの運動にも影響する。そこで5mm,車体底面全体が路面に近づくのだ。この影響は見る側の想像をはるかに超える。
かくしてSF19は、タイヤ4輪トータルの摩擦力が増え、それを路面に押し付けるダウンフォースも増やす方向へと進化した。車両諸元において速さに対するマイナス要因といえば、およそ7kgあるヘイローがモノコック上面に追加され、そこに加わる衝撃を受け止めるためにモノコックタブのコックピット周辺を補強することによる重量増加、重心も若干高くなったことぐらい。

SF19、「速さ」の中味


そのデザイン・コンセプトを立証するかのように、SF19は3月に2回行われた合同テストで、早くもこれまでのコースレコードを書き替えるラップタイムを刻んでみせた。鈴鹿サーキットではA.パロウが1分35秒904と1周96秒の壁を越えてみせ、山下健太、福住仁嶺も2017年開幕戦で中嶋一貴が記録したコースレコード1分36秒310を凌ぐベストラップで走っている。富士スピードウェイの現状コースレコードはSF14導入初年度、燃料リストリクターの流量上限がまだ100kg/hだった時にA.ロッテラーがたたき出した1分22秒572だが、3月末のテストでは山本尚貴の1分21秒742を筆頭に、山下、平川亮も1分21秒台のラップを記録、彼らを含めて15人のドライバーがコースレコード更新レベルのタイムを残したのだった。
しかし、ここで鈴鹿、富士それぞれのセクタータイムにまで踏み込んで、SF14によるコースレコードのラップと、今回のSF19によるクィックラップ・トライの中身を比較してみると、興味深い傾向が浮かび上がる。別表をご覧いただきたい。
鈴鹿で、セクタータイムが明確に削られているのはまずセクター1、計時ラインを通過してメインストレートを下り、1-2コーナー、S字、逆バンクと左右切り返しコーナーが続くセクション。ここでおよそ0.2秒。続くセクター2、ダンロップ・コーナーを駆け上り、デグナーの2連右コーナーを抜けるまでで約0.1秒。そしてセクター4、130Rから急減速、左右に切り返すシケインを抜けて加速、計時ラインまで。ここで0.1秒ほど。それぞれタイムを削っている。一方、セクター3、ヘアピンを回りスプーンカーブ、そしてバックストレッチというセクションではSF14のコースレコード時とほとんど変わらず。さらに昨年開幕戦の予選最速タイム、山本尚貴のラップと比較してみると、セクター1が明らかに速く、セクター4でもタイムを詰めるが、セクター2と3はほぼ変わらず、という傾向がさらにはっきり見えてくる。
富士に目を移すと、SF14とSF19の「得意分野」の違いはさらに際立ってくる。長いメインストレートの後半、つまり車速が高くなってからの区間から1-2コーナーを回り込む平均速度が250km/hを超えるセクター1では到達速度の低下以上に通過タイムの遅れが現れ、100R、ヘアピン、300Rと高速コーナーが連なり平均速度220km/hのセクター2も山本の最速周回でほぼ同等、山下は直線速度が少し伸びるセッティングにした反面、ここではSF14よりも遅れてしまっている。そしてSF19は、上り斜面の中を左右に深く回り込むコーナーが連なるセクター3で大幅にタイムが上がったことで、これまでのレコードタイムを上回ってきているのである。

速くなる要素、速さを抑える要素

ということは…。
まず、車体前半のリニューアル(目で見てわかるその効果については、別稿を準備中)と底面全体を路面に近づけられるようになったことでダウンフォースが増え、そのトレードオフとしてドラッグ(空気抵抗)が増えたことで、直線で加速を続けた先で到達する速度は落ちる方向。これはスピードトラップと直線部分が占める割合が多いセクターのタイム、両方の数字に現れている。ただし、富士スピードウェイのような長いストレートであっても、速度の二乗に比例して増加してゆく空気抵抗を、エンジンの出力で“押し切る”ことで到達する速度の絶対値が10km/h程度低くても、その区間の走行タイムが大きく落ちるわけではない。粗い計算だが、富士スピードウェイのセクター1でも0.2~0.3秒程度のはずだ。

一方、フロントタイヤの容量・摩擦力を引き上げたことは、まずコーナーの入口での「向き変え」の動きが強く現れるようになり、そこから先、円を描く旋回運動に移ったところでも前輪が遠心力を受け止めて踏ん張る能力も上がる。これが旋回性能全般、とりわけタイトに深く回り込むコーナーでのタイム向上に現れてくる。これもセクタータイムの数字に現れている。
問題は、ダウンフォースが増えればそれが最も効果を発揮するのは、つまり旋回速度を高めることに直結するのは中高速コーナーのはずなのに、とくに富士のセクター2がSF14に対して速くなっていないこと。鈴鹿でも、セクター2と、セクター3の半分を占めるヘアピン先の右200Rからスプーンカーブにかけてのセクションはダウンフォースによるタイヤ摩擦力の増加が効くはずなのだが。
ひとつの見方としては、ダウンフォースとともにドラッグも増えているので、コーナーを一定速で回る速度が上がる半面、そこからの立ち上がり加速が鈍る可能性がある。しかしそれは、最高速とセクタータイムの関連程度か、それより少ないレベルにとどまる。
何人かのドライバーに直接、間接的に聞いたSF19のドライビング感覚(SF14との比較)としては、「コーナリングの中で体感する横G(遠心力)が増えて、身体にはきつい」というのだから、円を描くような状況での旋回速度は上がっている。
その反面、「コーナリング中の挙動がシビアになっている。SF14ならば(旋回運動の中で)リアが滑ったらそれに応じて対応すればよかった。でもSF19は、滑ったのを感知して反応しても(ステアリングを戻すなど)間に合わない。スパッと流れてしまう」というのである。「このクルマの実戦では、スピンするドライバーが増えると思いますよ」と語ったドライバーもいる。この、4つのタイヤの、とりわけリアの摩擦力のピークで踏ん張っているところから滑り出す瞬間の挙動変化のシビアさが、とりわけ中高速コーナーでグリップの限界を“on the edge”でコントロールするのを難しくしているのではないか。そのギリギリのところで4つのタイヤの摩擦力を最大に保つセットアップとドライビングを見出すのが難しく、それがタイムに現れているのではないか。そういう仮説が浮かび上がってきた。

旋回運動を支える力のつり合いが変わった。

SF14に対して50mm短くなったSF19のホイールベース(前後車輪の距離)。前輪とそのサスペンション機構、そしてモノコックタブ、エンジンまでの寸法は変わらないので、後輪が前に出た形だ。もう少し詳細に見ると、車両重量が10kg増加していて、そのほとんどはヘイローの単体、約7kgと、それを受け止めるモノコックタブ側の固定点と補強による。つまりドライバーを含めたクルマ全体の重心点に対して少し前のコックピット周辺でこの重量が増えているので、重心位置そのものも少しだけ前進したかどうか。
いずれにしてもSF19の「車両運動力学的バランス」は、重心点まわりで見ると、前はそこに作用する梃子(てこ)の腕の長さが変わらず、その腕の先を押すタイヤの力が8%ほど大きくなった。後ろはタイヤの力は変わらず、梃子の腕の長さが3%ほど短くなった。リアタイヤが重心点まわりに、車両全体が向きを変える動きを止めるための梃子の腕は確実に短くなっている。
つまり、SF14では若干だが『前<後』だった旋回時に遠心力に対して踏ん張りつつ、同時に向きを変える運動(ヨーイング)をバランスさせるモーメントのつり合いが、SF19では『前』が強くなったのに対して『後』が少し減り、『前≒後』になった。その結果、この前後のつり合いが崩れるところへ踏み込みやすくなった。その結果、このつり合い状態を微妙に保ち続ける高速円旋回の中で、ダウンフォース増加によって摩擦力が増大しても、その限界の「エッジ」を保ち続けるのが難しい。そういう状況が起きているのではないだろうか。これが今の仮説。
ということは、その領域でタイヤ・グリップの限界を引き出しつつ、ヨー・モーメントのバランスを維持できるような車両セットアップが見出せれば、さらにタイムアップする可能性もある。

空力効果の変動が速く、大きく現れる。

SF19のコーナリング挙動が“シビア”になっている要因としてもう一点、スキッドブロックが薄くなったことも検討してみる必要がありそうだ。もちろん車両中央部底面に取り付けるこの圧縮合板がSF14の10mm厚から5mm厚になったことで、その分だけ、車体底面全体を路面に近づけたセッティングで走ることができる。車体底面と路面の間の薄く広い隙間を流れる空気が負圧を生み、それがかなりの面積を持つ底面全体に作用することで大きなダウンフォースを得て、それがタイヤを路面に強く押し付け、摩擦力を生み出す。これが、今日的レーシングマシンの強烈な運動を生み出す源泉であることは、何度となく語ってきたとおりだ。
その車体底面と路面の間の隙間空間を狭める=薄くしたことでダウンフォース発生能力が高まったSF19だが、それは逆に車体の上下動で路面との隙間の広さや角度が変動した時、SF14で同じ動きが起こった時よりもダウンフォースの大きさや着力点(底面の圧力分布)の変動が大きく現れる、ということを意味する。F1車両/チームの一部ほど極端ではないが、スーバーフォーミュラでも前輪側の地上高を低く、後輪側を高く設定することで、底面全体が後ろ上がりになる姿勢(これを「レーキ」という)を設定して、後端部のディフューザー(はね上げ面)の空気引き抜き効果を強めるのも定石になっているが、この角度変動の影響も大きく現れる方向だ。
もちろんブレーキング-旋回-脱出加速というコーナリング・プロセスの中では、車体は前後に揺れたり(ピッチング)、左右に傾いたり(ロール)するのだが、その動きによって底面と路面の間隙、路面に対する底面の傾きなどが変動する。同時に車速も減少-ほぼ一定-増加と変化し続けるのだが、知ってのとおり空気の流れが生む力の大きさは速度の二乗に比例して変化する。あるいは底面前端部が路面に近づきすぎると、空気が流れ込まなくなって空力効果が急に減る「チョーキング」という症状も出る。
ということは、SF19になってコーナーを走り抜けるプロセスの中で、必然的に起こる車体の動き1~2mmの違いが、ダウンフォースの変動、とくに「減る」方向への変化につながりやすくなった、はずだ。エンジニアとドライバーとしてはより大きなダウンフォースを得るために地上高はぎりぎりまで下げたい。しかしそこを「攻める」と思わぬグリップの「抜け」に襲われやすくなる。とくに高速コーリングの中で路面のうねりを通過する時など、初期車高の設定、そしてサスペンションをどう動かし、どう止めるかが、今まで以上にシビアになっているはずだ。

SF14の経験則をリセットしたほうがいいのかも…

さらに、車高を変えるとサスペンションアームの角度が変わり、とくにリアのロワーアームの上反角(車体側から車輪側へ斜めに上がってゆく)が増えると、4輪の中で最も大きな横力を受ける旋回外側輪では、車体を押し下げる「ジャッキダウン力」が強まって、旋回挙動においては神経質な動きが出やすい…など、まだまだ細かい要素はいつくも浮かび上がってくるのだが、今回のポイントは「前後のヨーモーメント・バランス」と「車体底面と路面の隙間」に尽きる。
テストでの走行を見守り、マシンの挙動を観察し、そしてセクタータイムを整理してみた中で確認したいくつかの「なるほど」と、いくつかの「はてな?」。そのひとつずつを追いかけてゆく中でいくつかの仮説が形づくられてきた。かくしてこの稿の最初の一言、「少々手ごわい」へと私の思いは巡っていったのである。
機械要素の面では前作SF14との共通性が高い。サスペンションアームや車輪保持部、トランスミッションの内部機構など共用しているパーツも少なくない。だから、とくにマシンに直接触れている人々にとっては「変わった」印象は薄いだろう。しかし車両運動、そして空気力学の基礎において「変わった」内容と特性は、けして小さなものではない。エンジニアもドライバーも、SF14を走らせたイメージと経験則にとらわれず、まったく新しい「道具」として取り組むことが、少なくとも走り始めは良い成果に結びつきそうに思えてきた。実際、SF14の実戦経験を持たないパロウとデータ解析を重視する加藤エンジニアの組み合わせが、テストでは鈴鹿、富士ともに一発の好タイムを出している。
この初見の難しさから、どのエンジニアとドライバーのコンビネーションが最初に一歩抜け出すか。これまでと同様にラップタイムで1/10秒、1/100秒を競いしのぎを削る状況はすでに見えている中で、さらに頭ひとつ抜きんでるコンビが現れるだろうか。ここが2019年シーズンの最初の「鍵」になりそうだ。

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