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「ソフトタイヤを充分に使うことが難しかったのではないか」ヨコハマタイヤ第5戦決勝レース総評
2019年8月23日
連日、厳しい暑さのなかで開催されたツインリンクもてぎ戦。各セッションでの気温は35度を超えることも多く、ドライバーはもちろんのこと、クルマそしてタイヤにとっても過酷な状況となった。一方、決勝ではミディアムとソフトの両タイヤをどのように用いるか、各チームがさまざまな戦略を採っていた。その展開を高口紀貴氏はどのように見守っていたのか。
「今回は決勝だけで言うと、小林可夢偉選手がミディアムタイヤを装着して速いラップタイム(ミディアムでのベストタイムは1分36秒085)で走ってくれたじゃないですか。あれには感謝ですね。一方、ソフトタイヤに関しては、(多くのドライバーが)あれだけタレた状況でヘロヘロになりながらもバトルをする必要があるのかと思ったりもしました。暑い夏の戦いとしては、ソフトはちゃんと(コンセプトどおりに)タレたし、ワンレースは持たないことがはっきり出たと言えます。
なお予選ですが、ポールポジションを獲得したアレックス・パロウ選手のタイム、1分31秒442は色んな条件から考えてもギリギリのラインだったかと思います。もしあのときに気温が1、2度高いだけでもあのタイムは出なかった可能性もあります。Q2からQ3で2〜3度温度が下がったんです。うまく気温も路面温度も下がったことで”助けて”もらえました。ただ、アタックラップのタイミングに関しては、気持ち的にはじわりじわりとゆっくりタイヤを温めてアタックする、というほうがいいのかなと思っています。とはいえ、決してその限りでもないし。正直良くわからないですね(苦笑)。
逆に決勝は気温、路面温度が高かったので、ソフトタイヤを充分に使うことは難しかったんじゃないでしょうか。結局、ドライバーによっては20周ほどでタイヤの摩耗が80%くらい進んでいました。最大というか、長く乗っていた64、20、5号車のドライバーは40周前後まで走っていましたが、そのタイヤに関してはもう”完全摩耗”の状態でした。(26周終わりにピットインした)19号車も完全摩耗ではなかったですが、充分に交換したくなるほどの摩耗具合でした。そういう意味では可夢偉選手が42周まで走れたのは、やはりすごいことだと言えますね。
今日のレースでミディアムタイヤの受け止め方がどこまで変わったかは気になります。はっきり言って、今回はほとんどミディアムで走ってませんよね!? 唯一、可夢偉選手が(ミディアムで)速かったことを印象付けただけで……。それ以外はきちんと使っていなかったので、ミディアムで速く走れたのは彼(可夢偉)だからじゃない? と思われるのもちょっとねぇ(苦笑)。ミディアムをソフト寄りの特徴、つまり(タイムが出せる)ピークがあってある程度タレるようなものをみんなが望んでいるのだろうかと思う一方、おそらくチームやドライバーは、ミディアムは何度になったらグリップがくるの? という気持ちで走っているようにも思われます。でも、ミディアムにはピークはないんです。つねに一定でピークが来ているんです。なので、ミディアムでちゃんと走れているというフィーリングを持てるか、逆に何をやっても変わらないというイメージで迷走するか……。受け止め方の違いでアプローチも変わってくるでしょうから、ソフトとミディアムの性格を知った上でその使い方を見極め、どうすべきかを考えていってもらえたら、と思いますね。
次の岡山戦ですが、去年は予選から雨模様だったので今年こそコースレコード更新を狙っていきます。ただサーキットの舗装が他のサーキットとまた異なる特性があってそこが難しくもあります。岡山ならではの路面にどこまで合わせていけるか、ですね。今年のクルマやタイヤの性格を次第に理解し、セッティングの煮詰めが進む中でうまくアタックできれば、レコード更新も可能ではないかと考えています」