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2019年第6戦 レースのシナリオ

2019年9月24日

■レース距離:251.804km(岡山国際サーキット3.703 km×68周)
(最大レース時間:1時間30分 中断時間を含む最大総レース時間:2時間10分)

■予選方式: ノックアウト予選方式
ノックアウト予選方式 (Q1:20分間 20→12台 Q2:7分間 12→8台 Q3:7分間)
公式予選Q1は、2グループ(A組・B組)に分けて実施する。
・グループ分けは抽選。参加車両が複数台のエントラントについては、少なくとも1台を別の組分けとする。
・Q1は、A組10分間、10分間のインターバルを挟み、B組10分間の走行。
・各組上位6台・計12台がQ2へ進出する。Q2進出を逸した車両は、Q1最速タイムを記録した組の7位が予選13位、もう一方の組の7位が予選14位、以降交互に予選順位が決定される。

■タイヤ:横浜ゴム製ワンメイク
ドライ2スペック(ミディアム,ソフト), ウェット1スペック

■タイヤ使用制限
ドライ(スリック) 新品はミディアム2セット+ソフト2セット
前戦までに使用した中からの”持ち越し”タイヤは3セット(ミディアム,ソフトは問わず)
金曜日は持ち越しタイヤのみ使用、競技会期間、すなわち土・日曜日における走行はマーキングされた6セットを使用する。
ウェット 競技会期間中(土日)を通して4セット

■予選における使用タイヤ
Q1 においてはミディアムタイヤを使用しなければならない。

■決勝中のタイヤ交換義務:あり
・決勝レース中に2種別(ミディアムとソフト)のドライタイヤを使用しなければならない。
・先頭車両が10周目の第1セーフティカーライン(ピットロード進入分岐点の仮想ライン)を交差した時点から、先頭車両が最終周回に入る前までに実施すること。
タイヤ交換義務を完了せずにレース終了まで走行した車両は、失格。
・レースが赤旗で中断している中に行ったタイヤ交換は、タイヤ交換義務を消化したものとは認められない。ただし、赤旗提示の前にピットインしていてタイヤ交換作業を行った場合は、交換義務の対象として認められる。
・レースが(68周を完了して)終了する前に赤旗中断、そのまま終了となった場合、タイヤ交換義務を実施していなかったドライバーには競技結果に40秒加算。
・決勝レース中にウェットタイヤを使用した場合は、これらのタイヤ交換義務規定は適用されない。

岡山国際サーキットにおけるタイヤ・パフォーマンス
・SF19でフロントタイヤの幅を広げ、ホイールベースをリア側で短縮したことによる車両運動における「前後バランスの変化」は、ここ岡山ではとくにバックストレートから後、小さな半径のコーナーをタイトに回り込む動きを繰り返すセクションで、「向きを変えやすい」特性に直結する。つまり、セクター3でタイム向上が期待できる。逆に1-2コーナーからモスS、アトウッドまでの前半セクションでは、リア側のグリップを安定させられるか、すなわちコーナリングの中でタイヤにしっかり荷重をかけておけるかどうかが、一発の速さと、連続走行においてラップタイムの維持~低下がどう現れてくるか、の両方に効いてくると思われる。
・第3戦と第5戦、ずっとドライ路面だった決勝レースのラップタイム推移を追ってみると、トップグループで速いペースを維持した時、ソフトタイヤがそれなりのグリップ・パフォーマンスを維持するのは走行距離にして160~180km程度という実績が現れている。岡山に当てはめれば43~49周となる。
ソフトで長く走り続けた中には200~220km(岡山で54~60周に相当)を走行して、その終盤でペースがあまり落ちず、順位をゲインしたケースもある。逆に、走行距離80~100km(岡山で20~30周に相当)ぐらいでグリップダウンを示すラップタイムの明らかな低下が生じているケースもけっこう多い。
・ミディアムタイヤに関しては、レースペースをどこまで速くできるか、そのセットアップを煮詰められるかが、ピットストップのタイミングとその自由度を左右する。

■燃料最大流量(燃料リストリクター):90kg/h(121.5L/h)
■オーバーテイク・システム: 最大燃料流量10kg/h増量(90kg/h→100kg/h)。
ステアリングホイール上のボタンを押して作動開始、もう一度押して作動停止。
レース全体を通して100秒間作動可能。(ロールバー前面のLEDフラッシュ)
一度作動させたらその後100秒間は作動しない。(ロールバー前面のLED、遅い点滅)
100秒間使用で燃料消費量増分は277.8g、374.9cc。

・OTS作動時は、8000rpm手前から上のエンジン回転では、トルクが燃料増加分の約10%増え、そのまま回転上限までの「出力一定」状態が燃料増量分だけ維持される。すなわちその回転域から落ちない速度・ギアポジションでは、コーナーでの脱出加速から最終到達速度までこの出力増分が上乗せされる。
・岡山国際サーキットのコースレイアウトを考えると、まずはアトウッドカーブの登り勾配の旋回から直線に向けて立ち上がるところからバックストレートをずっと作動させ、ヘアピンへのブレーキング開始でオフ、というのが、追い越しにもラップタイム短縮にも効く定石の使い方。
・その先、登りのダブルヘアピン(レッドマン~ホッブス)からマイク・ナイト、最終コーナーへと続くタイトコーナー連続セクションも、それぞれの立ち上がりで短く、しかし強く加速するので、OTSがセクタータイム向上につながる可能性がある。ただし、駆動力が強まることでOTSを使っていない時に比べて車両が後ろからより強く押し出されて旋回円が外にふくらむ、いわゆる「プッシュ・アンダー」的な挙動が現れやすい。
・一度作動させてしまうとその後100秒間作動不可、ということは、レースラップが1周・1分15~18秒(75~78秒)ほどかと予想される岡山では、作動オフにしたポイントから1周以上先まで使えないことになる。
・前後に連なって走る車両がともにOTSを作動させた時、後続車は前車のレインライト点滅を視認しつつ追えるので、早めにOTSを停止すると100秒の作動不可時間が後続車の方が早く終了し、前走車がまだOTS作動不可の状態で何十秒かのパワー・アドバンテージを得る、というような駆け引きもある。

■決勝中の給油作業義務:なし
■燃料タンク容量:ぎりぎり満タンで95L(その全量を使い切るのは難しいが…)
上記満載時のガソリン重量 約70kg
燃料流量上限規制(燃料リストリクター)の設定90kg/hでのレースとして、今年のオートポリス、SUGO、もてぎの実績を見ると、2.5km/L(3.31km/kg)程度で走れそう。もちろん加速終端で少しだけ早めにアクセルを戻す「リフト&コースト(戻す&惰行)」の使い方によって、もっと良い燃費を示しているケースもある。しかし、省燃費走行をしても順位のゲインは得られにくい、という傾向が明確になってきた。
さらに今戦では、前述のように「タイヤ交換のためのピットストップは10周目(スタートから37km走行)以降」という規定が加わったことで、レース開始早々にピットストップしてタイヤ交換義務完了、そこから燃料残量と「相談」しつつペースを設定しつつゴールをめざす、という戦略は見られなくなる。
レースペース走行での燃費を2.5km/Lと仮定する。250kmのレースを走り切るのに必要な燃料総量は約100L。実戦ではこれに低速周回3周分(ピット→グリッド/フォーメーションラップ/ゴール→車両保管)+OTS作動による消費量増加分、合わせて約1.8Lが加わる。すなわち、燃料タンク満タンでスタートした場合、7.5~9L(5.6~6.7kg)の燃料をレース中に補給する必要がある。上記想定で1周あたりの消費量 約1.48L、重量にして約1.10kg。

■ピットレーン速度制限: 60km/h

■レース中ピットレーン走行によるロスタイム:およそ25秒(近年の岡山国際サーキットでのレース状況から概算した目安程度の値)。ピットストップによって”消費”される時間はこれに作業の静止時間が加わり、タイヤ交換(とくに4輪)を行った場合はコースインしてから作動温度域に達するまでのロスタイムが加算される。

■ピットストップ:
・タイヤ4輪交換を燃料補給と同時に実施するのに要する時間は11~12秒程度。
・タイヤ4輪交換だけならば静止時間5~6秒程度。
・燃料補給におけるガソリン流量は毎秒2.5L(1.85kg)程度かと推定される。
・ここまでの想定値に基づく、満タンでスタートした場合の”ピット・ウィンドウ”(燃料補給のピットストップが1回で済む周回数)は規定の10周目以降、64周までの間のどこか、と見込まれる。(極端な燃料消費節約走行をしない/セーフティカー・ランなどがない、という前提で)
ただしレース終盤における赤旗中断~中止、セーフティカー導入などの可能性を考えると、ピットストップ・タイヤ交換を最終盤まで“引っ張る”のはリスクが高い。
・タイヤ交換のためのピットストップが必要、かつ燃料補給も必要ということならば、作業者3名で4輪交換するのにかかる12秒ほどの間、燃料補給ノズルを差し込んでガソリンを入れてもロスタイムは変わらない。この時間をフルに使った場合、燃料補給ノズル接続時間は11秒、27.5L(20.4kg)を補給できる。スタート時にその分だけ燃料搭載量を減らすと、満タンでスタートするのに比べて約20L、14.8kgほど軽い状態にできる。この場合、「ピット・ウィンドウが閉じる」(燃料タンクが空になる)のは平均燃費2.5km/Lで49~50周完了あたり、となる。

さてそうなると、今回のレースを戦うストラテジーの選択肢は…
A.基本は「1ストップ」戦略
基本は1ストップ作戦。
問題は、スタート時の装着タイヤにどちらを選ぶか? どのタイミングでピットストップを行うか?
1.ソフトタイヤでスタート→後半でピットストップ、ミディアムタイヤに履き替え
第3戦以降の優勝者を振り返ると、山本=ポールポジション、パロウ=ポールポジション、平川=グリッド2番手と、予選で速さを見せたドライバー&マシンが決勝レースでも速さを発揮して戦いを支配する、ある意味で“フォーミュラカーのレースらしい”パターンに落ち着きつつある。今戦は、オーバーテイクのポイントが少ないと言われる岡山国際サーキットのコースレイアウトを踏まえても、まず予選で前方のグリッド・ポジションを確保すること、が勝利を含めて良い最終結果を得るための必要条件になる。
その前方グリッドを確保したドライバー&車両にとっては、スタートで装着するタイヤに「ソフト」を選ぶのが定石。なぜならば、スタートダッシュの瞬間のタイヤ粘着力が高く、そこから序盤、ソフトタイヤの暖まりの良さと初期グリップの高さを活かして速いラップタイムを刻むことが重要になってくるから。そしてソフトタイヤの全摩耗が近づき、ラップタイムがほぼ新品のミディアムと同等まで落ちてきたところが、タイヤ交換のためのピットストップのタイミングとなる。ここで、ミディアムタイヤに履き替えたところでは路面状態もかなり変化しているはずなので、それに合わせてグリップを引き出せるようなマシン・セッティングやタイヤ内圧の設定ができたか、が後半の勝負を左右する。

2.ミディアムタイヤでスタート→早めのピットストップ、ソフトタイヤに履き替え
スタートでミディアムタイヤを履く、ということは中盤から後半にかけて、燃料搭載重量が減ってゆく一方、路面に“ラバーが乗って”タイヤ・コンパウンドとの粘着性が良くなってゆく状況で、ソフトタイヤで速いペースをキープして順位を上げることを狙う作戦となる。スターティンググリッドが後方になったドライバー&車両、それも全体としては前の方であっても周辺の競争相手とは異なるパターンで順位を上げることを試みる場合にも、序盤だけミディアム、中後半をソフトで走る、という選択がありうる。ただし今戦では「タイヤ交換は先頭車両が10周を消化して以降」という縛りが加わったことで、それより前にソフトタイヤに履き替えることができなくなった。
10周完了でのピットストップであれば、残り215kmを走り切るだけの燃料を積めばいいので、ピットアウト時の燃料搭載量は87L、64.5kgあたり。満タン状態より6kgほど軽いところから始められる。さらに早めのピットストップに決めておけば、スタート時の燃料搭載重量を満タン状態よりも約20kg軽くできるのは前述のとおり。それを活かしつつミディアムタイヤのグリップの初期ピークを引き出せば、早期ピットストップが「10周以降」となったことのデメリットはないと思われる。もちろん、早期ピットストップを行った後にセーフティカーが入るような事象が起これば、順位を上げる可能性が高まる。

3.2ストップ作戦は?
岡山国際サーキットは1周の距離が短く、平均速度も高くないので、レースが進行してもコース上を走る車両があまり散らばらず、それぞれのペースで走ることが続く。その一方で、前走車に対するラップタイムのアドバンテージがある程度大きくても、追い抜くことがなかなか難しい。したがって岡山でこの作戦を選ぶことはリスクが高い。
ただ、ソフトタイヤでスタートして前方のポジションを占めている状況で、中途半端な周回数を走った段階でセーフティカーが入り、その先かなり摩耗が進んだソフトで走り続けるか、あるいは速さが落ちるミディアムに履き替えるか、どちらも難しい…という場合に限って、そこで2セット目のソフトを投入、という選択をするドライバー&チームが出ることは考えられる。

4.ウェットになったら…
ウェットタイヤをレースで使った時にはタイヤ交換義務はなくなり、ここまでの検討は意味を持たなくなる。

◆岡山国際サーキットという”舞台”
岡山国際サーキットは、1周3.7kmと、現在スーパーフォーミュラのレースが開催されるコースとしてはスポーツランドSUGOとともに最も短い部類に属する。そしてSF開催6サーキットの中では周回平均速度が最も低いコースである。
とはいえ、単純に「低速コース」という表現を当てはめて済ませるわけにはいかないレイアウトを持つ。コース全体が「低速」で一括りにできるのではなく、性格の異なる=挙動の組み立て方と車両セッティングの狙いどころが異なるエリアが、考え方にもよるが3~4種類組み合わさったコースなのである。

◆岡山国際サーキットのセクター平均速度
*2017年スーパーフォーミュラ第2戦レース1予選最速タイム(関口雄飛:1分13秒387)にて計算
メインストレート後半から1-2コーナー、モスS(T3-5)立ち上がりまでのセクター1は高速コーナー連続、
アトウッド(T6)を上りバックストレートからヘアピン(T7)、リボルバー(T8)、パイパー(T9)と回り込んでパドック裏直線中間までのセクター2は距離も長く、直線区間をはさんでいるのに平均速度は意外に高くない。
レッドマン(T10)~ホッブス(T11)の“ダブルヘアピン”からマイクナイト(T12)~最終コーナーとタイトコーナー(30~50R)が連なるセクター3は、平均速度は低くなるがラップタイムに占める時間も3割を占める。

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