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刻々変わってゆく路面を「手の内に収めて」勝つ。 テクラボ第2戦レビュー

2021年5月11日

両角岳彦

いつものように、「いつもと違う…」

レースウィーク始まりの土曜日午前。最初のフリー走行で、「路面が…(グリップしない)」という声がそこここから聞こえてきた。スーパーフォーミュラが履くタイヤが発熱・粘着して「ゴムが乗ってくる」前、とくに走り出しは路面粘着が弱いのはいつものこと、と言えなくもない。ただ、午後の予選でトップグループに進出したメンバーでも、この最初のセッションの走り出しは1分39秒台半ばから41秒台。1時間の走行の終盤にフレッシュなタイヤを投入して予選シミュレーションを試みたところでようやく1分38秒台の前半から半ばに届く、というラップタイム・ペース。昨年12月の第5・6戦では、走り出しでも1分38秒台が出ていたのだから、たしかにこの時の路面は「グリップしない」状態だったようだ。土曜日は野尻智紀と坪井翔の2車にオンボード映像伝送装置が搭載されていて、場内のモニターにはその映像も流れたのだが、特に野尻は操舵する手の動きがいつになく忙しく、ターンインでは多めに切り込まないと曲がらず、しかし旋回を深める中で向き変えのための横力が不足して切り増し、そのすぐ先で加速円に移る瞬間から今度はリアが外に滑って戻し方向の修正舵が入る、という状況が見てとれた。
そういえば、春の鈴鹿は恒例の「2&4」イベント。ピットにはスーパーフォーミュラとスーパーバイクが交互に並び、国内トップカテゴリー共演ならではの雰囲気を醸し出す。残念ながら観戦者の数も限られ、ピット側へのアクセスも制限されたために、華やかさは例年よりもかなり控えめだったが。この2輪、4輪併催のイベントではいつも以上に「路面が…」という声が聞こえがち。ただそれを言うなら、前後輪がほぼ1線の軌跡を描き、そのラインも異なるモーターサイクルの方が、4輪フォーミュラのタイヤが残した1mかそれ以上の幅を持ったコンパウンドラバーの帯が、1.5mほどの間隔で2本並んでいる、それを時には斜めに横切りながらコーナリングしてゆくのであって、彼らの方がよほど「路面」には神経質にならざるをえないのだが。さらにいえば、2輪レースのトップ&ミドルカテゴリーが2ストローク・エンジンだった時代は、当然ながら燃焼の中に潤滑油が混じり、その一部は未燃のまま排出されるので、2輪の走行ライン周辺にはその油分が残り、「いつも」とは比較にならないほどグリップしない、ということも起こっていた。20年ほど前までの話。(この件、Twitter,#SFormulaでも紹介した。)
閑話休題(それはさておき)…
こうして「経験値とも予想とも異なる路面コンディション」に直面して、フリー走行1回目ではシャシー・セットアップにかなり大幅な修正を加えたと見られるチーム・車両は少なくなかった。例えば場内配信映像がピット内に止まる野尻車を捉えた時には、フロントのアンチロールバーのねじり剛性を変更しているものと思われる作業風景が映っていた。レース後に野尻がコメントしたところによれば、「(セッティングとしては)こっちの方じゃないかな、と言ったんだけど、作業に時間がかかるということで…。少し走ってもう一度言ったら、メカニックとも相談して『何とかやりましょう』と動いてくれた。それで『今回の鈴鹿ではこんなマシン(の動きと反応)』というイメージにほぼ合ってきた」とのこと。たしかにSF14からは、サスペンションの調整の中でもモノコック前端部に“詰め込まれた”ダンパーとアンチロールバーの設定変更は、前と上のサービスホールから手探りで作業することになるので、ちょっと面倒で作業時間も必要になる。
ここで改めて計時データを見直すと、ほとんどの車両が7、8分から10分以上の時間をピット内で、それも複数回にわたって費やしている。つまりそれだけの作業時間を要するセッティング変更をこのセッションで試みていたわけだ。ただし、この段階で色々な方向性を考えすぎると、次第に路面コンディションが変わってゆく予選、さらに決勝レースに向けて、セッティングが煮詰まり切らない可能性もあるのだけれど。
しかしここからスタートしながらも、後述するように決勝レースではこれまでにないハイペースの周回を重ねるところまでマシンを煮詰め、ドライバーもそれに対応し、さらにタイヤの消耗までをコントロールする。この即応力の高さがスーパーフォーミュラという戦いの鍵を握る要素の一つなのである。

鈴鹿での「マイナス5kg/h」はどう現れる?

3時間半が過ぎて土曜日午後、予選の時間帯。この時期の鈴鹿には珍しく海から山に向かう風向きで、風速は平均10+km/h相当。メインストレートでは向かい風で速度の伸びが鈍り、S字からデグナーカーブにかけては背風となって、その風速分だけダウンフォースが低下する。空気力は対気速度の2乗に比例するので、場所によってはタイヤ荷重が5~6%も減って、その分だけ摩擦力が減るという概算になる。つまり、タイムを詰めるのには難しい状況になっていた。
それ以前にもうひとつ、ラップタイムに影響する要素が最初から加わっていた。いわゆる燃料リストリクター、エンジンに供給されるガソリンの最大流量が前戦・富士に続いてここ鈴鹿でも、これまでの95kg/hから90kg/hへと削減されている。その意味するところについてはこの連載の前戦レビューで詳しく紹介したのでここでは省略するとして、計時データに現れたその影響について簡単に整理しておくと…
まず西ストレート終端近くの速度計測では、土曜日のフリー走行、予選では風向きの影響もあって昨年12月初旬の第5・6戦よりも10km/h近く、5%ほど低下していたが、日曜日は風向きが逆、つまりメインストレート、西ストレートともに追い風方向で、とくに決勝レースの時には20km/hほどの風が吹いていたので、直線速度もその分は確実に伸び、数値だけ見れば燃料流量95kg/hだった昨年12月とほぼ同等。気温が5℃ほど上がった分、大気密度が下がって空気抵抗が多少減ったことを考えても、直線到達速度としては2~3%の低下に止まっている。
予選のファステストタイムは、前述の風向も影響してさすがに昨年第6戦でN.キャシディが渾身のアタックで記録した1分34秒442には届かず、ベストは福住仁嶺の1分36秒449。ラップタイムとしては2%の低下。ちなみに昨年第5戦Q3で福住自身が記録したポールタイムは1分34秒809で、これと比較すると1.7%ダウン。ちなみにその福住、そして野尻、平川亮、大湯都史樹の今回の予選上位4人のセクタータイムを並べて比較してみると、興味深いことにメインストレートから東コースの登りコーナー連続区間を走るセクター1のタイム低下幅が3%前後と大きく、立体交差下から西ストレート終端までのセクター3のタイム低下幅は1%前後と少ない。セクター1・2の区切りは各車が一瞬アクセルを戻してアンチラグ・システム(ターボチャージャーの回転落ちを抑えるためにシリンダー内に燃料を少量だけ噴射して着火せず、排気管に出てから燃焼させる)の間歇燃焼音を響かせる、まさにその区間にあり、ストレートを走って2コーナーでブレーキングするところではアクセルを戻すものの、SF19+NREはコーナー連続区間でもエンジン回転を燃料リストリクター作動領域に保ったまま、登り勾配に対してクルマを押す駆動力をかなり強く使い続けていることが、このセクタータイム低下に現れている、と理解しても良さそうだ。
そうしたエンジン側の、そして外的状況の中で、福住はQ3で乱れをほとんど見せない1周のダライビングを完結させ、2番手の野尻に0.196秒と、スーパーフォーミュラとしてはかなり大きな差をつけてポールポジションを手中に収めた。野尻と平川の差は0.028秒、6番手の宮田莉朋まではトップ福住から0.47秒と、いかにもSFらしい凝縮された時間軸の中の戦いが展開されたのではあったが。

スタートからの「一撃」か、タイヤ温存か。

日曜日朝のフリー走行2回目、決勝レースに向けて燃料を完走に必要な55kgほどか、あるいはもう少し削ってレース序盤から中盤を想定してマシンのグリップバランスや、そしてもちろんラップタイム・ペースを確かめるセッション。ここではまず野尻が1分40秒台前半で4、5周を走り、福住は1分40秒2が1周、1分41秒を挟むタイムで6周ほど。平川のこれに近いタイムで周回を重ねる、という状況。ある程度の燃料搭載重量と周回を重ねたタイヤでのレースペースは、トップグループでこのくらいかな、という目処がここで見えてくる。燃料を少なめにして、一発の速いタイムを試みるドライバー&車両が必ず何車かいるのだが、それはあまり気にしなくていい。
そこから5時間、決勝レースがスタートする。気温は4℃、路面温度は日照もあって15℃ほど朝よりも上昇している。走行ペースを上げるには厳しい条件と言っていい。そんな中、ポールポジションからクリーンな発進加速を決めた福住は、スタンディングスタートだというのに1周目を1分40秒697で帰ってきた。そこから2、3、5周目と1分40秒台後半のラップを続け、後ろを走る野尻、平川との間隔を広げていった。野尻との間のギャップは5周を走って2.5秒。
6周目、7周目と1分41秒台半ば、野尻と同じペースで走った野尻は8周目、再び1分40秒813までペースアップ。しかしそこでアクシデントが起こる。9周目のヘアピンを立ち上がった先あたりから福住車の左リアタイヤの内圧が徐々に下がり始めたのだ。そのままスプーンカーブでその左後輪に負荷をかけつつ旋回、さらに西ストレートをアクセル全開で駆け上がる…と、ここでそのマシンの後部から白煙が上がる。内圧低下によって屈曲した状態で転動・変形を繰り返す中でタイヤのサイドウォールが壊れ、撚った繊維とゴムからなる骨格がいわゆるバースト状態に陥ったのだった。そのまま130Rを通過し、何とかピットロードへとマシンを持ち込んだ福住だったが、ダメージは左リア・サスペンションにまで及んでいて、ここでリタイアせざるをえなかった。
改めてこのレース序盤にトップグループがどんなラップタイムで走っていたかを見直すと、福住はスタート直後から一気にペースを上げているのに対して、野尻、そして平川は、前述のフリー走行でのペースに近いラップタイムで、安定した走行を重ねている。福住は序盤から一気に速いペースに持ち込むべく、ソフトタイヤが新品から10kmかもう少しの距離、暖まって粘着力を発揮したところからそのグリップを維持する、いわゆる「一撃」をフルに引き出して走っていたのではないか、タイヤ内圧も含めたマシンの微調整もそこに合わせていたのではないか、と思われる。

決勝レースで10位までを占めたドライバー&マシン、そこに予選の3セッションを制してポールポジションからスタートした福住を加えて、各車の毎周のラップタイムを追って見たグラフ。福住の1、2周目の群を抜く速さと、その先でラップタイムが落ち込み始めている傾向から、フレッシュなタイヤ(グリッドでの写真に映るトレッド表面状態から見ると予選1アタック品か)の「一撃」を巧みに引き出した速さだと理解できる。車両側の微調整、グリッドで刺繍調整したタイヤ内圧も、そこに合わせ込んでいたのではないか。いったん、6~7周目に後続の野尻と同じペースに落ち、そこからもう一度ペースを上げた直後にタイヤの内圧低下に襲われてレースを去った。一方、野尻、そして平川と、一定距離を走り切る中でのタイヤの使い方に定評があり、かつ速さも持っている二人は、スタートから序盤を一定に近いラップペースで走っている。福住のアクシデントの後、1秒以上ペースが落ちているのは、黄旗振動区間の減速、そしてタイヤや車体の破片(デブリ)が残るところを慎重に走ったことをうかがわせる。規定最少周回の10~周でピットストップ、タイヤ交換した面々の中でも、大津、笹原、関口、山本は「一撃」グリップを使ってピットアウト直後の1周を突出して速く周回している。野尻は、平川のラップタイムが自車と交差するラインで上がってきたのに反応して13周完了でピットイン。平川は次の14周でピットインし、どちらもピットアウトの次の周回では「一撃」的なハイペースでは走っていない。そこで国本のアクシデントによるSC導入。この先導走行が明けた直後から、この2車が他を引き離す1分41秒±のラップタイムを8~9周にわたって続けていることにも着目したい。

これに対して野尻は、担当する一瀬エンジニアによれば「野尻さんは、(レースでは)『一撃』をほとんど使わないんです」。例えばレース途中でタイヤ交換を行った直後、それが暖まったところで一気にラップタイムを上げ、数周回だけ極端に速いペースで走るドライバーは少なくない。しかしレース全体を見渡すと、そこでタイヤの消耗を早めてしまうことも起こる。新しいタイヤはじっくりと「熱を入れて」良い状態に持ってゆき、できるだけ長い距離・周回にわたってパフォーマンスを保てるようにする、というのもドライビングとしての「戦略」。野尻はこの方向でタイヤを使うドライバーだということだ。平川の序盤8周のペースもまた、同じようにタイヤをいたわりながら、どこでどれだけの負荷をかけいけばいいか、を経験値に照らし合わせながらドライバー自身が組み立てたもの、灯ることができそうだ。
こう考えると、スタート直後のマシン・バランス、タイヤのコンディションに着目して「一撃」を引き出していた福住と、タイヤの初期消耗を抑えつつその中でどこまで速く走れるかを探っていた野尻、そして平川と、少なくとも1セット目のタイヤで走る100km前後の距離の中で、どこかでレースペースが交差するような状況になったのではないか。さらに2セット目ではマシンのセッティングと、内圧設定・走り出してからの変化の組み合わせの中で何が起こりえたのか。必ずしもシンプルな「福住、独走」になったとは限らず、「その先」を見てみたかった。ラップタイムや周辺状況を整理してみて、改めてそう思う。

ピットタイミングの想定、そして決断

野尻が先頭に立ち、その3秒後方に平川、さらに3秒後方に笹原右京が続く、という隊列になって、レースの流れが一瞬落ち着いた、かというところでタイヤ交換実施の最小周回の10周を完了。ここで状況打破を狙ってピットに飛び込んだのが4番手に付けていた関口雄飛、その直後5番手の大津弘樹、予選で中団以降に沈んでいた山本尚貴、山下健太、松下信治、阪口晴南、T.カルデロン、大嶋和也の8車。次の周回では笹原、国本雄資、中山雄一も入って、この段階でコース上の半数を越える11車がタイヤ交換義務を消化した。
トップグループのセオリーとしては「ピットストップをちょっと先にして、速いペースで後続との差を広げる、かと思いきや、12周目にOTSを使って1分41秒455までラップタイムを上げていた野尻が次の13周を終えるところでピットロードに滑り込んできた。その後方ではスタートで遅れた大湯もタイヤ交換へ。これに対応すべく1周だけ先頭を走った平川も14周を終えてピットストップ。
もちろんセーフティカーが入るようなアクシデントが起こればリードは帳消しになるので、この段階でのピットインはその危険性を消す意味もある。レース終了直後に一瀬エンジニアは「(12周目を走っている時に平川のピットスタッフがタイヤの準備を始めたことについては)フェイントの可能性もあると思って見てました(笑)。今回のレースのタイヤ履き替えは、計算上は“均等割り”が基本で、引っ張ったとしても17、18周まで。それより早いタイミングがいいと当初から考えていました。後続の20(平川)との差がちょっと詰まりかけたのと、この路面温度ならばタイヤのウォームアップにもそんなに時間がかからないし、早めにピットに入れてタイヤを(野尻流に)暖め、後からピットストップしてから『一撃』を使って速いラップタイムで何周か走り、追ってこようとする人たちに対抗するのがいいと判断しました」とこの状況を振り返る。
そして野尻はといえば、このアウトラップを回ってメインストレートを駆け下るところでもOTSを使い、しかしそこから1コーナーへの飛び込みでオーバーラン。舗装のエスケープゾーンを走ってことなきを得たが、「我々のクルマは車高(底面地上高)をかなり低めに設定していることもあり、走り出し1周でタイヤの内圧がまだ上がりきっていない状態で(すなわち膨らみが少なく転動時の有効半径が何mmか小さい)、ボトミング(車体底面が路面の膨らみに接触)してしまい、ステアリングを切り込んでも(タイヤ荷重が抜けていて)車が反応しない状態になってしまった。戻ってこられてリードも失わなかったけど、今日のドライビングの中では『失敗』として記憶されるもの」と野尻自身がその瞬間を解説してくれた。
そして16周目、国本が130Rを抜ける中でリアのグリップを失った形で突然スピン、そのままアウト側にコースアウトしてクラッシュバリアに突っ込んでしまう。このアクシデントでセーフティカー導入。国本の左リアタイヤ(5周前に交換)はこの130Rで一気に内圧を失ったという状況で、同じ場所でタイヤ骨格がバラバラになって足まわりやボディワークにもダメージが及んだ福住車が残したデブリを踏んだ可能性も、考えられなくはない。
ここまでピットストップを遅らせて見た目上は先頭に出ていたTOM’sの2台はこのSCボード提示の瞬間にピットロードに滑り込み、ダブルストップ敢行。これで野尻がトップに戻り、平川、笹原、関口、大津、その後ろに戻ってきた宮田…という隊列が形成された。
このSC先導走行は3周で解放され、残り10周のスプリントレース。野尻はここから3、4周をタイヤのグリップを引き出してペースを上げ、トップを堅守する態勢に持ち込んでゆく。平川はSC明けからはまず背後の笹原とOTSを撃ち合いつつの攻防を凌ぎ、そこから解放されてからは野尻とほぼ同じラップタイムを続けた。とくに残り4周というところからは野尻を上回るペースで追ったのだが、野尻に勝負を仕掛けるには至らず。
その後方でも、各車の間隔が縮まった中でOTSの撃ち合い、その作動終了から100秒間の作動不可時間のやりとりも含めた仕掛けが各所で展開され、コースの各所に散った観戦者にとっては見どころの多い、濃い終盤戦となったのではあった。かえすがえすもこの終盤、トップ争いの中に福住の白とピンクのマシンが加わっていれば…。その戦いを見守る次の機会は、きっと訪れる、と思う。

メインストレートのコントロールタワー前の計時ラインを、優勝した野尻が通過した各周の時刻を基準に、全車の通過時刻の差を全周回にわたってプロットしていったグラフ。毎週の各車の順位が上から順に並ぶのとともに、その周回での時間間隔も同時に表される。つまり各車個々のタイム差も同時に示される「ラップチャート(順位変動表)」となっている。福住が時スタートから6周で1秒あまりの差を野尻に対してつけ、それがいったん落ち着きそうになったところでアクシデントに遭遇したことが見て取れる。この後、福住と野尻、そして平川のタイヤ消耗と燃料搭載重量減少が組み合わさったそれぞれのラップタイム推移がどうなったか、それによってお互いの時間-順位線がどこかで一気に接近したり、交差したりすることが起こりそうな変化率がうかがえて、「この後が見たかった」と改めて思わされる。多くの車両が10、11周でタイヤ交換義務を消化する、パターン化された戦略を採った後、野尻も「基本の」均等割りよりも2周早くピットイン。1周後に平川も「反応」してピットアウト直後はまず前に現れて1コーナーでオーバーランした野尻との差がピットイン前より詰まり、無理して「一撃」を引き出さない同士、しかしじわじわと野尻に迫る、が、ここで国本のアクシデント→SC導入。19周完了・20周目から戦闘再開したところからは野尻が巧みに差を広げ、それを維持してゴールに至る。この20周目以降、6~15番手の線が接近し、所々で交差しているのは、接近戦とオーバーテイクが、少なくとも計時ラインに戻ってきたところでの順位変動があったことを示し、見るに値する戦闘シーンが各所で演じられた10周回であることを示している。

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