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2022年第4戦オートポリス プレビュー

2022年5月14日

松下信治(B-Max Racing Team)による、雨中の逆転初優勝が演じられた第3戦鈴鹿から約1ヶ月。全日本スーパーフォーミュラ選手権第4戦は、5月21日(土)〜22日(日)、大分県オートポリスに舞台を移して行われる。九州地方で国内トップフォーミュラが走るのは、年に1回。チームやドライバーたちにとっても、唯一の走行機会ということで、腕の見せ所となるはずだ。

昨年のスタートの様子
 
山の斜面を利用して作られたオートポリスのコースは、前半・後半と2回に渡って下って上るレイアウト。特に最後の上りは左右にクネクネと回り込んでいくコーナーが多く、タイヤに厳しい区間となっている。マシンのセットアップに関しても、アンダーステア、あるいはオーバーステアをどう修正していくかが重要だ。ただし、前述のように、チームにとっても年1回しか走らないということで、データ量は潤沢ではない。現場に持ち込むマシンセットアップが重要なのは他のサーキットと同様だが、今季はリヤタイヤの構造が変わっていることもあり、走り出してからの修正も大切なポイントだろう。その分、土曜日朝のフリー走行は貴重な時間となる。今回の大会に向けては、各ドライバーに3セットの新品スリックタイヤが供給されるほか、鈴鹿大会から使用・未使用に関わらず3セットのタイヤを持ち越すことができる。鈴鹿のレースがウェットとなったため、中には前回大会からニュータイヤを持ち越せるドライバーもいるものと見られるが、その他のドライバーたちも通称・1アタック品と呼ばれる程度のいいユーズドタイヤを持ち越せるはず。それを使用して、フリー走行でどれぐらいのタイムがマークできるのかが、予選に向けての重要なポイントとなる。

  • 第2戦・3戦連続ポールの野尻智紀(TEAM MUGEN)

  • 第3戦で初優勝を果たした松下信治(B-Max Racing Team)

 
その後のノックアウト予選は、今年からQ1とQ2、2回のセッションで行われている。Q1は、ランキング順をもとにした2グループに分かれて行うが、今回のオートポリス戦では、Aグループが11台、Bグループが10台。いずれのグループでもQ2に進出できるのが6台ということを考えれば、今回はAグループの方が熾烈となる。また12台で争われるQ2も、コースに出てからのスペース確保など、タイミングが重要になってくるだろう。クルマのセットアップによって、また路面温度によって、今回もタイヤを温める周回数がドライバーによって違ってくる可能性があるからだ。アウトラップとウォームアップラップ、計約2周タイヤを温めてアタックに行くドライバーもいれば、アウトラップを終えていきなりアタックに行くドライバーも出てくるはず。それを考えると、ピットからコースに出るタイミングがドライバーによってまちまちになるのだが、もし運が悪ければアタックラップでトラフィックに引っかかるということも考えられる。そうした事態を避けつつ、クリアなアタックを行なってPPを獲得するのは誰になるのか。過去数年の予選を振り返ると、現在ランキングトップの野尻智紀(TEAM MUGEN)がオートポリスでは2回PPを獲得。ランキング2位の平川亮(carenex TEAM IMPUL)も1回PPを獲得しており、いずれも自信を持っているはず。さらに、今季開幕戦から常に上位争いを演じている宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)や復活の兆しを見せている山下健太(KONDO RACING)、サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)とKONDO RACINGの2台も気になる存在だ。さらに、前回優勝者の松下がどの位置につけるかにも注目。松下にとっては、昨年のB-Max Racing加入後、初表彰台獲得となったのがオートポリスと相性は悪くない。ランキングでも3位に浮上してきていることから、さらに野尻、平川とのポイント差を埋めたい所だろう。ただし、予選がウェットコンディションとなった場合は、ピットロードの出口に近いピットを確保している昨年のチームチャンピオンであるcarenex TEAM IMPULやランキング2位だったDOCOMO TEAM DANDELION RACINGにアドバンテージがあるはず。その場合は、3年前のオートポリスで優勝を果たしている関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)や前回の鈴鹿で今季初表彰台を獲得している牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)らの果敢な走りにも期待だ。また、雨を得意としている大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)や坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)も勢い走りを見せてくれることだろう。

  • 宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)

  • 平川亮(carenex TEAM IMPUL)

  • 今季好調のKONDO RACING山下健太

  • 現在ランキング4位 サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)

 
決勝に関しては、オートポリスの場合、特に序盤荒れ模様となることが多い。ドライの場合には、スタート直後のポジション争いで3ワイドのバトルが展開されることも多く、その中で接触やコースアウトが起きがちだ。マシン回収のためにセーフティーカーが導入される機会も多々ある。ドライの場合には、トップの車両が10周回目の第1セーフティーカーラインを超えてから、ファイナルラップに入るまでに4輪のタイヤ交換が義務付けられているが、セーフティーカー導入のタイミングによっては、多くのマシンがピットロードに雪崩れ込んでくるという事態が発生する。その際に勝負の分かれ目となるのは、やはり作業自体の時間。オートポリスの場合は、ピットロードがストレートの進行方向左側と、他のサーキットとは逆に位置しており、メカニックたちの作業手順も通常とは逆になる。そのためミスも出やすくなるのだが、素早くドライバーを送り出すことができれば大きく順位を上げるチャンスでもある。そのあたりも見所だ。またもそれとは逆に最後までタイヤ交換のタイミングを引き延ばす作戦をとるチームもあるはず。いずれにしても、誰が最適なタイミングでの作業を行い、最後に笑うのか注目だ。もちろん、オートポリスの場合、コース上でのポジションの逆転も可能。今回も各ドライバー、オーバーテイクシステムを計200秒使用することができるため、1コーナーから3コーナーにかけて、また第1ヘアピンを立ち上がってから第2ヘアピンにかけてなど、激しいバトルが随所で展開されることだろう。
 
最後になるが、そのオートポリスで、何と言っても気になるのは天候。昨年のオートポリス大会は、ウェットコンディションとなっただけでなく、レース自体も赤旗によって途中で終了となった。今年は、願わくばドライコンディションで、フルのレースディスタンスを走り切ってもらいたい。ただし、阿蘇の山々に抱かれる形のオートポリスは、標高800mと、国内サーキットでは最も高い場所に位置しており、市街地とは天候が違ってくることが多い。現段階では、レースウィークを通じて好天になるとの予報も聞かれるが、実際のレースウィークに入ってからどうなるのか。刻々と変わっていく予報には留意が必要だ。今年は、日本の梅雨入りは例年より早くなるとの予想もある。すでに沖縄や奄美地方が梅雨入りしているが、新緑の爽やかな空気の中で大会が行われ、九州地方のファンの方々が見守る前でドライバーたちが力いっぱい走れることを望みたい。

昨年この大会で初優勝を飾ったジュリアーノ・アレジ(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)

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