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第7回CN開発テスト インサイドレポート

2022年12月4日

2022年の全日本スーパーフォーミュラ選手権が閉幕して約3週間。山々の木々が赤や黄色に染まった11月21日(月)〜22(火)には、栃木県モビリティリゾートもてぎで、「SUPER FROMULA NEXT50」プロジェクトの柱の一つ「カーボンニュートラルの実現に向けた素材・タイヤ・燃料の実験」、「ドライバーの力が最大限引き出せるエアロダイナミクスの改善」を目的とした開発テストの7回目が行われた。前回、10月26日(水)〜27日(木)に三重県鈴鹿サーキットで行われた第6回の開発テストでは、新たなエアロキットが登場して話題を呼んだが、塚越広大がステアリングを握るホワイトタイガーSF19 CN、石浦宏明がステアリングを握るレッドタイガーSF19 CNともに今回も新エアロを装着。鈴鹿とはまた性格が違うもてぎのコースを疾走している。

11月に入ってから小春日和が続いていた関東地方。しかし、今回のテスト開始前日となる11月20日(日)は、関東地方でも午後から雨が本降りとなった。夜にはほぼ止んだものの、テスト初日の21日(月)の朝は、どんよりとした曇り空。もてぎ周辺の道路も路面がしっとりと濡れていた。今回、テストの大きな目的のひとつは、ウェットタイヤの比較テストということで、願ってもない天候だったと言える。しかし、雨は完全に止んでおり、そのままでは路面が乾いていく方向。そのため、事前の予定通り4台1チームの散水車を2チーム稼働させ、セッション開始前からコースでは散水作業を行なわれた。サーキット内で一度使用されたものと、貯蔵された雨水から作った再生水を使用して、散水が行われたのは東コース。初日はフルコースではなく、東コースでウェットタイヤのテストが重点的に行われている。

最初のセッションが始まったのは、午前9時。この時点では、気温が12℃、路面温度が14℃と肌寒いコンディションとなったが、永井洋治テクニカル・ディレクター、土屋武士アンバサダー、さらにTRDやHRC、横浜ゴムのエンジニアたちが熱いまなざしで見守った。毎回持ち回りとなる車両のメインテナンスに関しては、今回ホンダエンジン搭載のホワイトタイガーSF19 CNをTEAM MUGEN、トヨタエンジン搭載のレッドタイガーSF19 CNをcarenex TEAM IMPULが担当している。TEAM MUGENのピットには、今年2年連続でのチャンピオンタイトルを獲得した野尻智紀(TEAM MUGEN)の姿も。野尻は今後シリーズに投入されるであろうエアロパッケージやカーボンニュートラルタイヤでのテストを真剣に見守っていた。

路面の散水作業が終わり、セッションが始まると、ホワイトタイガーSF19 CN、レッドタイガーSF19 CNは、まずこれまで使用されてきたレギュラーのウェットタイヤでコースイン。マシンセットアップの確認を行う。一旦ピットに戻った2台は、そこからレギュラーのウェットタイヤで追走に入る。これは新たな空力パッケージのオーバーテイクに対する効果を見るというよりは、前車が巻き上げる水飛沫の量と巻き上げ方、後方車両のドライバーの視界がどうなるかを確認するテスト。このテストをまずはレッドタイガーが前、ホワイトタイガーが後ろという隊列で2周実施した。そこからピットに入ってポジションを入れ替え、ホワイトタイガーが前、レッドタイガーが後ろという隊列でも2周行なっている。
この追走を終えると、両車はいよいよカーボンニュートラル素材を配合して作られたウェットタイヤのテストに入る。今回、持ち込まれたのは、スリックのケーシングBと同じ材料で作られた新たなウェット用のケーシングBをベースに、7月の富士でテストしたコンパウンドAとコンパウンドB、さらにAをハード寄りにしたコンパウンドDをそれぞれ組み合わせたもの。午前中は、この3種類のタイヤでショートランを行なった。ホワイトタイガーは、コンパウンドA、B、Dの順。レッドタイガーはその逆で、コンパウンドD、B、Aという順でテストを行なっている。常にウェット路面がキープされるよう、各コンパウンドのテスト前後には、散水作業が続けられた。
この最初のセッションは、2時間半に渡って行われ、午前11時30分にチェッカー。塚越が54周を消化して1分16秒549というベストタイムをマーク。石浦は55周を消化して、1分16秒140というベストタイムをマークしている。

2時間のインターバルを経て、2回目のセッションが始まったのは、午後1時30分。1回目のセッション終了後、もてぎには青空が広がり、パドックの路面は完全なドライとなった。しかし、この2回目のセッションもウェットタイヤテストが2時間半に渡って行われる予定となっていたため、散水車チームはインターバルの間も何度もコースに出て、散水を続行。気温17℃、路面温度20℃というコンディションのもと、ホワイトタイガー、レッドタイガーはコースに向かう。このセッションでは序盤、レギュラーのウェットタイヤでマシンセットアップを確認した後、ロングランに突入。まずレギュラーのウェットタイヤでロングランを行なった後、ホワイトタイガーはコンパウンドB、レッドタイガーはコンパウンドDでのロングランを行なった。それを終えると、今度はウェットパターンを複数テスト。まずはレギュラーのケーシングとコンパウンドを使用したパターンAでショートランした後、レギュラーのケーシングにコンパウンドCを組み合わせたパターンBをテストしている。このコンパウンドCは、7月の富士テストで使用したもので、これまでのパターンに組み合わせた場合には、狙った性能に到達できなかった。しかし、今回は、パターン違いのタイヤに仕上げられ、テストに持ち込まれている。
これら、すべてのテストを完遂し、午後4時にチェッカー。2回目のセッションでは、塚越が57周を消化して1分16秒890というベストタイムをマーク。石浦は64周を消化して、1分16秒551というベストタイムをマークしている。

一夜明けたモビリティリゾートもてぎは、深い霧に包まれていた。この日の朝は、関東一円で霧が発生。湿度が高い状況となる。その後は天候が回復し、小春日和に。セッション開始予定の午前9時の段階では、もてぎにも日が射し始めていたが、路面はなかなか乾かなかった。そのため、セッションの時間はディレイ。午前11時から午後0時までの1時間、午後1時から2時45分までの1時間45分と、当初の予定よりも15分短い計2時間45分となっている。
気温が21℃、路面温度が26℃まで上昇する中、この日最初のセッションが始まると、まずはホワイトタイガーSF19 CN、レッドタイガーSF19 CNともにレギュラーのスリックタイヤでセットアップを確認。新しいエアロパッケージを装着して、ドライコンディションのもてぎを走るのは、このセッションが初めてということで、何度かピットイン・アウトを繰り返して、セットアップを細かく調整していった。その作業が終わると、追走テストに入る。今回、この追走テストでは、ダウンヒルストレートで後方の車両のみがオーバーテイクシステムを使用。ギリギリまで前走車に近づいてのデータ採取を行っている。まず石浦がステアリングを握るレッドタイガーが前、ホワイトタイガーが後ろというポジションで2台はコースイン。そこから1周ごとにポジションを入れ替え、計4周の走行を実施する中で、各周ともにオーバーテイクシステムを稼働。これまでの追走テストよりも2台が接近し、その時のデータを今後解析することとなっている。この追走テストを終えると、1回目のセッションは間もなくチェッカー。このセッションでは、塚越が22周を消化して1分32秒211というベストタイムをマーク。石浦が21周を消化して、1分32秒424というベストタイムをマークしている。

1時間のインターバルを経て、2回目のセッションが始まったのは、午後1時。気温22℃、路面温度26℃というコンディションのもと、このセッションの前半は、グリーンの帯が入ったカーボンニュートラル素材使用のHというコンパウンドのタイヤを2セット使用し、ブレーキのテストが行われた。これは、新しいエアロパッケージになって、車体周辺の空気の流れが変わっているため。全日本スーパーフォーミュラ選手権が行われるサーキットの中で、もてぎは最もブレーキに厳しいサーキットということで、新しいエアロパッケージでも、ブレーキの冷却に問題がないかどうかを確認した。このブレーキテストに関しては、塚越が20周のロングランを2回実施。石浦は15周のロングランを2回実施している。

その後、セッション終盤には、石浦がタイヤテストを実施。ケーシングFに組み合わせた、Kという新たなタイヤコンパウンドを装着してショートランを行った。このKというコンパウンドは、数年後のシリーズへの投入を目指して、カーボンニュートラル素材の比率を高めたもので、今後さらなる開発が進められることになっている。
この2回目のセッションでは、塚越が55周を消化して、1分31秒863というベストタイムをマーク。石浦が、44周を消化して、1分32秒319というベストタイムをマークしている。

これで年内の開発テストは終了。しかし、今後さらにカーボンニュートラル実現に向けて歩を進めるため、来年以降も続けられる予定となっている。

野尻智紀のコメント

「厳密に言うと、鈴鹿の搬入日にも見ていたので、開発テストに来たのは2回目です。まずフォーミュラでは、僕たちも走る機会が少ないので、今開発している車両がどういう特性なのか知りたかったというのはありますね。また、今回のテストでも、基本的には僕がシーズン中にやっていたセットアップを反映していると思うので、どれぐらい外から見たクルマの動きと自分が乗っている時のクルマの動きに違いがあるかということを、やっぱり目で見て確認しないといけないと思いました。なので、「見学したいんですけど」とチームにお願いして許可をもらって来ました。

今回は、散水でウェットテストというのがメインだったと思いますが、色々見ている中で、面白いことはいくつかありました。水煙もよく見えるので、予選などでも集団の中でアタックしたらダメなんだなとか。同じタイヤを履いていても、クルマによって路面に違うタイヤ痕が残ったりするんですよね。そういった所を見ながら、「雨の時はこういうセットアップをしましょう」といった常識みたいなものを、僕たちが今使っているマテリアルに関して、当てはめていいのだろうかといったようなことも思いました。どちらかというと、ドライバー目線というよりは、エンジニア目線のような、そういう見方をしていましたね。

新しいエアロパッケージになって、やっぱりクルマの動きはかなり違いますよね。逆にいうと、今までのSF19ってタイムを見てもそうですけど、かなり完成された状態にあったと思うんです。対して、新しい車両のコンセプトはバトルを多くしたりとか、エンターテインメントに振っていると思うので、一発のパフォーマンスがどうかというのは、これからそれぞれのチームが詰めていった時にしか分からないと思うんですね。その辺を引き出すのが、難しそうだなというイメージはあります。前に寄ったり、後ろに寄ったり、コーナリング中のバランスに一貫性を出すのが難しそうだなという印象でした。

自分の意識としても、今回のテストに来ることで、何か発見が欲しいと思っていましたし、何か持ち帰りたいなと思っていました。その辺、たくさん参考になった点もありましたし、来て良かったと思います」

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