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「負け嫌い」のトヨタ、巻き返しなるか 2018年 全日本スーパーフォーミュラ選手権 第2戦プレビュー

2018年5月7日


『全戦2スペックタイヤ制』という新たな競技環境のもとでスタートした2018年の全日本スーパーフォーミュラ選手権。4月下旬に行われた鈴鹿サーキットでの開幕戦は、レース距離が300㎞という条件だったこともあり、各チームのタイヤの使い方にそれぞれ違いがみられた。ピットに入るタイミングや回数なども、クルマの仕上がり具合や作戦によって様々。お互いに手の内を読まなければならない展開となったうえ、コース上でのアクションも多く、見応えのある1戦だったと言っていいだろう。そこで2年ぶりにポール・トゥ・ウィンを達成し、勝利の美酒を味わったのは、No.16 山本尚貴(TEAM MUGEN)。予選14番手から大躍進を見せたNo.19 関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)が2位、スタートのミスを走りでリカバリーしたNo.5 野尻智紀(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が3位と続いた。


その鈴鹿戦から3週間のインターバルを経て、5月12日(土)~13日(日)には、大分県オートポリスに舞台を移し、注目の第2戦が開催される。例年、オートポリスは秋口に大会が開催されてきたが、今年は初夏の開催。しかも、今年の5月は例年より気温が高い傾向にあるとの予想が出ているということで、ドライコンディションになった場合には、気候条件も予選、決勝の結果に影響を与えるかもしれない。
さて、そのオートポリスは、阿蘇の大自然に抱かれ、地形を生かしたコース。大きく2回のアップダウンがあり、フルブレーキングするポイントは余りない。第1ヘアピン、第2ヘアピンと、2つの低速コーナーを除けば、ほとんどが中・高速コーナーで構成されたレイアウトだ。特に、後半の上り区間は、クネクネとコーナーが連続しており、タイヤへの負荷が高いと言われている。しかも、オフシーズンのテストが実施されていないため、この季節、このコースで、新スペックのソフトタイヤがどれぐらいの周回、性能を保てるのかということは、まさに未知数だ。


昨年の場合、SUNOCO TEAM LEMANS(現UOMO SUNOCO TEAM LEMANS)が、金曜日の専有走行からソフトタイヤのライフを入念にチェック。ミディアムタイヤでスタートしたものの、序盤にピットインを行って、ソフトタイヤで残りの周回を走り切るという大胆な作戦を採用した。その結果、同チームのフェリックス・ローゼンクヴィストと大嶋和也が、それぞれ2位&3位表彰台を獲得している。また、予選上位のドライバーたちが前半のタイヤとしてミディアムを選択する中、予選5番手だったピエール・ガスリーがソフトを選択。スタートで大きくポジションを上げただけでなく、作戦面もピタリとハマッて優勝した。その他、オートポリスはピットロードのロスタイムが少ないこともあり、2ピット作戦を採ったチームなども見られた。つまり、前回の開幕戦同様、今回のオートポリスでも、チームがその時々の状況で、多種多様な作戦を繰り出してくる可能性が“大”ということだ。その作戦を可能にするためには、やはり持ち込みのクルマのセットアップの良し悪しや金曜日の専有走行でのデータ収集が重要となる。開幕戦から持ち越せるタイヤは2セット。ほとんどのドライバーが今回ミディアムとソフトを1セットずつオートポリスに持ち込むが、そうしたタイヤでのセットアップ確認や、タイヤ自体の持ちの確認が初日から重要な作業となるはずだ。特に、今年のソフトタイヤは昨年スペックよりも柔かく、“敢えて持たない仕様”と横浜ゴムが発表しているだけに、タイヤに厳しいオートポリスでのグリップダウンに関して、決勝前に確実なデータを取りたいところ。開幕戦では、関口が51周のうち24周もの長距離にわたってソフトタイヤを持たせたが、オートポリスでは誰が最も上手くソフトタイヤを使いこなせるのか。その点は、決勝レースに大きな影響を与えるポイントだ。


また、エンジンウォーズに関しても、気になるところ。決勝こそトヨタエンジンユーザー勢が挽回を見せたものの、開幕戦の予選ではホンダエンジンユーザー勢がトップ5を独占するという躍進ぶり。それが、オートポリスではどのような戦略図になるのだろうか。鈴鹿ではコーナー区間でホンダ勢のセクタータイムが速かっただけに、オートポリスの予選も席巻するのか。あるいは、“負け嫌い”のトヨタが巻き返してくるのか。その点も興味深いポイントだと言っていいだろう。


さらに、今回のオートポリス戦では、他カテゴリーとの日程重複により、No.15 福住仁嶺(TEAM MUGEN)とNo.7 ピエトロ・フィッティパルディ(UOMO SUNOCO TEAM LEMANS)が欠場し、福住の代わりには阪口晴南、フィッティパルディの代わりにはトム・ディルマンが出場する。特に、阪口にとっては今後を見据えた時、非常に重要な経験となるだけでなく、存在感を示すいいチャンス。ホンダ陣営の若手ドライバーとして、ぜひ『俺もここにいる!』という走りを期待したい。一方のディルマンは、日本のコース&レース未体験ということで、いきなり順応するのは簡単ではないかも知れないが、その走り次第では日本でキャリアを積むという選択肢も出てくるだけに、奮闘してもらいたいところだ。
そして、もちろん開幕戦で期待したほどの戦績を記録できなかったドライバーたちも奮起するはず。中でも、開幕ノーポイントに終わったNo. 18 小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG)や8位に留まったNo.36 中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM’S)といった元F1ドライバー、また予選Q1で圧倒的な速さを見せたものの、その後の流れに翻弄されたNo.6 松下信治(DOCOMO TEAM DANDELION)ら、ここからさらに上を目指す若手ドライバーには、オートポリスでの巻き返しに期待がかかる。さらに、開幕戦の決勝日朝に担当の山田健二エンジニアが急逝し、精神的に厳しい中でレースを走り切ったNo.8 大嶋和也(UOMO SUNOCO TEAM LEMANS)には、今回最大のエールを送っていただきたい。昨年の表彰台の再現はあるのか。悲しみに沈む間もなく毎週レースを戦わなければならない大嶋にとって、スーパーフォーミュラではオートポリスがある意味“弔い合戦”。ファンの皆さんの声援は彼にとって、何にも勝る後押しとなるだろう。

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