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2018年第4戦「テクラボ流」レースのシナリオ

2018年7月5日

2018年第4戦「テクラボ流」レースのシナリオ
両角岳彦

■レース距離:250.965km(富士スピードウェイ4.563km×55周)*最大1時間30分
• 富士スピードウェイは以前からのイメージで「高速コース」と思われがちだが、1周の平均速度で見るとスーパーフォーミュラのレースが行われる6つのサーキットの中では、ツインリンクもてぎと同程度の「中速コース」だと言える。とはいえ、コースとしてのキャラクターが極端に異なる3つのセクションによって構成されているのが特徴。
• まず最終コーナーから1コーナーまでの長いストレートがコース全長のほぼ1/3を占め、その後半~終端に至る到達速度が高く、そこにオーバーテイクの機会を見出せる。1コーナー(TGRコーナー)-2コーナーからコカコーラコーナーと比較的低速な区間を抜けた先は、トヨペット100Rコーナーからアドバンコーナー、さらに300Rと、国内のサーキットの中でも屈指の高速コーナリング連続区間であり、スーパーフォーミュラ車両では200km/h前後で自重の2倍を超えるような(1.5~2tと推測される)ダウンフォースを生成しつつ、4Gレベルの遠心力が作用する旋回が右・左・右と続く。その先、ダンロップコーナーからはがらりと趣が変わり、上り勾配の中を小さく深く回り込む深いコーナーが連なって、最終コーナーに至る。
• 3つに分けられたセクターで見ると、「セクター1」は、メインストレート中間の計時ラインから始まり、スーパーフォーミュラでは300km/hを超える速度に到達するが、その先の深く曲がる1-2コーナーからコカコーラコーナー手前まで至る区間なので、平均速度は最速で230km/h程度。「セクター2」はコカコーラコーナー、100R、アドバンコーナー、300Rと抜けて300R入口までであり、平均速度が最速で230km/hに届こうかという高速セクションである(つまり、平均速度で見るとセクター1とセクター2はほぼ同じ)。「セクター3」はつづら折れの上りタイトコーナー区間からメインストレートの計時ラインまで。後半に直線加速区間を含みながらも平均速度は160km/hに止まる。いかにこの上りセクションが、速度が落ちるコーナーの連続なのかがうかがえる。なおかつセクター3の区間タイムは1周のラップタイムに対して48%も占めるので、ここをどれだけ速く走るかが、コース攻略の重要なポイントとなってくる。それもタイトコーナーへの対応だけでなく、最終コーナーからの脱出加速、そこからの速度の伸びも同時に求められるセクターである。

■予選方式:ノックアウト予選方式 (Q1:20分間 19→14台 Q2:7分間 14→8台 Q3:7分間)

■タイヤ:横浜ゴム製ワンメイク
ドライ2スペック(ミディアム,ソフト), ウェット1スペック

■タイヤ使用制限:ドライ(スリック) 競技会期間中を通して6セット
そのうち新品はミディアム2セット+ソフト2セット
前戦までのものからの”持ち越し”タイヤ2セット(ミディアム,ソフトは問わず。新品のままの持ち越しも可。持ち越しタイヤの種別組み合わせとそのコンディションがひとつのポイント。)
ウェット 競技会期間中を通して4セット

■予選における使用タイヤ:Q1 においてはミディアムタイヤを使用しなければならない。

■決勝中のタイヤ交換義務: あり
決勝レース中に2種別(ミディアムとソフト)のドライタイヤを使用しなければならない。
スタート時に装着していた 1 セット(4本)から、異なる種別の1セットに交換することが義務付けられる。車両に同時に装着する4本は全て同一種別でなくてはならない。
決勝レース中にウェットタイヤを使用した場合は、タイヤ交換義務規定は適用されない。
先頭車両が1周目を終了した時点からレース終了までに実施すること。タイヤ交換義務を完了せずにレース終了まで走行した車両は、失格。
先頭車両がフィニッシュ(55周完了)する前に赤旗中断、そのまま終了となった場合、タイヤ交換義務を実施していなかったドライバーには結果に40秒加算。
レースが赤旗で中断した中に行ったタイヤ交換は、タイヤ交換義務を消化したものとは認められない。ただし、赤旗提示の時点でピットにてタイヤ交換作業を行っていた場合は、交換義務の対象として認められる。

◇考えられるタイヤの“使い方”
富士スピードウェイのレースでタイヤ2種別装着義務が課せられるのは、今回が初めて。
加えて、ここまでの3戦でソフトタイヤが車両の操縦性にどう影響するかというキャラクター、新品から走り始めた直後、いわゆる“一撃”のグリップの高さとその引き出し方、その後走り続ける中で、ピークグリップがどの程度の走行距離でどのくらいの高さで現れ、それが走行を続ける中でどう落ちて行くか(いわゆる「デグラデーション」)、ミディアムタイヤとグリップレベル(ラップタイム)が同等にまで落ちるのはどのあたりか、さらに摩耗限界はどれほどか…などの特性を十分に把握できているチームは未だない、と見て良さそうである。
さらに富士スピードウェイは、コース・レイアウト、舗装路面の特性ともに、これまでの3サーキットとはまた異なるコースであり、ここでのソフトの特性、そしてミディアムとの使い分け、加えてレースで両者を履き替えて走る時の車両セッティングの合わせ込みなどまで最適化できるかどうかが、それぞれのドライバー+エンジニアにとって大きな課題となるはず(だった)。
しかし、レースウィークはずっと雨になりそう。少なくとも金曜日の専有走行から土曜日までは降水確率がかなり高い。そうなると別のシナリオを考えなくてはならないわけで…。
全ての走行セッションがウェット路面になったとすると、専有走行・フリー走行、予選を合わせておよそ3時間、フルに走り続けると100周、450kmほども走行することになる。レースもウェット路面になればさらに250km。これを、ウィークエンドを通して4セットのウェットタイヤで走りきらなくてはならない。予選、レース用に1セットずつ新品を取り置くとすれば(予選の雨量=路面水膜量が多ければ、セッション毎に新品を投入したいところだが)、セットアップなどのための走り込みを2セットで進める必要がある。ウェットタイヤの耐久性は、路面全体に水が乗っている状態では問題ないと思われるが、問題は水が少なく部分的に舗装路面が現れてくるようなコンディション、いわゆる“ちょい濡れ”(ダンプ)状態。その状態ではトレッド面が擦られ摩耗を起こし、急速に消耗する。
チームとしては天気予想とにらめっこでタイヤの使い方を組み立てて行くことになりそうだ。

■燃料最大流量(燃料リストリクター):95kg/h(126.0L/h)

■オーバーテイク・システム:最大燃料流量10kg/h増量(95kg/h→105kg/h)。
20秒間作動×レースを通して5回まで
1回使用あたりの燃料消費増加は55.6g(約73.8cc)。5回使用で277.8g(368.8cc)増。

■決勝中の給油作業義務:なし

■燃料タンク容量:ぎりぎり満タンで95L(その全量を使い切るのは難しいが…)上記満載時のガソリン重量 約70kg
燃料流量上限規制(燃料リストリクター)の設定が同じ95kg/hであった鈴鹿での開幕戦での燃費は一般的には2.4km/L(3.23km/kg)程度。レース中盤まで燃料節約に徹した関口が記録した燃費がおそらく最良で、2.49km/L(3.35km/kg)程度と推測される。
燃料流量上限(リストリクター)95kg/hにおける燃料消費2.4km/Lと仮定した場合、レース完走に必要な燃料総量は約104.5L。実戦ではこれに低速周回3周分(ピット→グリッド/フォーメーションラップ/ゴール→車両保管)+OTS作動による消費量増加分、合わせて約2Lが加わる。すなわち、燃料タンク満タンでスタートした場合、11~12L(8.3~9kg)の燃料をレース中に補給する必要がある。

■ピットレーン速度制限:60km/h

■レース中ピットレーン走行によるロスタイム:30秒弱(近年の富士ラウンドの状況から概算した目安程度の値)。ピットストップによって”消費”される時間はこれに作業の静止時間が加わり、タイヤ交換(とくに4輪)を行った場合はコースインしてから作動温度域に達するまでのロスタイムが加算される。

■ピットストップ: ピットレーンでの作業が認められる要員は6名まで。ただし1名は「車両誘導要員」として、いわゆる“ロリポップ“を手にしての誘導に専念することが求められる。また給油に際しては給油装置のノズル保持者に加えて消火要員(消火器保持者)1名を置くことが規定されている。したがってタイヤ交換と給油を同時に実施する場合はタイヤ交換に関われるメカニックは3名となる。この人数の中で、前後のジャッキアップ~4輪交換~ジャッキダウンを行うことになり、誰がどのタイミングでどこに移動して、何の作業を行うか、それぞれのチームが知恵を絞り、トレーニングを積んでいる。
燃料補給を行わずにタイヤ4本交換のみ行う場合は作業要員5名。前後ジャッキとタイヤ4本に対して個々に要員を配置するには1人足りない。この場合の作業手順についても同様に工夫が続けられている。
ここで、ピットストップ戦略を組み立てる基本的な要素について整理しておく。
• タイヤ4輪交換を燃料補給と同時に実施するのに要する時間は14秒程度。
• タイヤ4輪交換だけならば静止時間6秒程度。
• タイヤ交換と同時に燃料も補給するのであれば、そして燃料消費を気にせずにタイヤのグリップをフルに使って速いペースで走ろうとするのであれば、平均燃費2.4km/L想定で、フルタンクでスタートした場合の不足量約11~12L。燃料補給におけるガソリン流量が毎秒2.3L(1.73kg)程度かと思われるので、燃料補給ノズルを車両に接続している時間としては4.8~5.2秒、これにノズルの抜き差しにかかる1秒ほどを加えた時間で燃料補給が終わる計算になり、ピットストップの静止時間はタイヤ交換の時間で決まってくることになる。
•• ここまでの想定値に基づく、満タンでスタートした場合の”ピット・ウィンドウ”(燃料補給のピットストップが1回で済む周回数)は6周完了~49周までの間のどこか、と見込まれる。(極端な燃料消費節約走行をしない/セーフティカーランなどがない、という前提で)
•• タイヤ交換のためのピットストップが必要、かつ燃料補給も必要ということならば、作業者3名で4輪交換するのにかかる14秒の間、燃料補給ノズルを差し込んでガソリンを入れてもロスタイムは変わらない。この場合、燃料補給ノズル接続時間は12~12.5秒、27.6~28.75L(20.8~21.7 kg)を補給できる。スタート時にその分だけ燃料搭載量を減らすと、満タンでスタートするのに比べて15~18L、11~13.5kg軽い状態にできる。この場合、ピット・ウィンドウが“閉じる” (燃料タンクが空になる)のは平均燃費2.4km/Lで40周完了あたり、となる。
さてそうなると、今回のレースを戦うストラテジーの選択肢は…

A. 基本は「1ストップ」戦略
規定されているタイヤ4輪交換と燃料補給を同時に実施する。
ソフトタイヤの特性が読み切れなければ、あるいはミディアムタイヤと燃料重量が重い状態での速さに自信があれば、ミディアム装着・フルタンクでスタート。
逆にソフトを履きこなせていない状況では、早めのピットストップでミディアムに換装、満タンにして残りを走り切る、という選択もありうる。
スタートダッシュで前に出たい、順位を上げたい場合など、ソフト装着・ピットストップ補給分だけ燃料搭載量を減らしてスタート。

B. 「2ストップ」戦略がありうるとすれば…
「より速く走る」ことを狙い、かつソフトの性能変化に応じて対応するためのアプローチと考えると、必然的にソフトを2回、ミディアムを1回履くことになる。グリップの高さを活かしてまずスタートダッシュ、そのグリップ低下=いわゆるデグラデーションを見てタイヤ交換、再びソフトを履かせて送り出す。つまり、ソフト→ソフト→ミディアムが良さそうに思える。
ソフトのグリップを活かすために、またタイヤの消耗を抑えるために、スタートから燃料搭載量を減らして車両重量が軽い状態で走らせ、燃費も気にせず、2回のピットイン毎に補給するとすれば、最初に50L(36.7kg)積んでおけばいい計算になる。この場合は1ストップ勢に対して、45秒程度をコース上で取り戻して同じペースということになる。
あえて1ストップと同じ燃料搭載量でスタート、2回のピットストップのうち1回はフルサービスで14秒を費やし、もう1回はタイヤ交換だけにして6秒で送り出せば、このタイヤ交換ストップのロスタイム約36秒だけをコース上で取り戻せばよい。
いずれにしても、土曜日までが雨で、レースだけドライ路面で実施された場合は、タイヤ装着の順番、ピットストップ戦略など全てが“ギャンブル”となる。

C. ウエットレース
スタート時点で路面が雨に濡れ、ウエットタイヤでスタートすれば、そこでタイヤ交換義務が無くなる。この場合はフルタンクでスタートするのが定石。ウェット路面では旋回速度、最高速度が下がる一方、ラップタイムが遅くなることで、アクセルペダルを深く踏み込んで燃料がリストリクターによる流量上限でエンジンに送り込まれる時間も長くなるため、(とくに富士スピードウェイでは)必ずしも燃費が良くなるとは言えない。ドライビング次第ではあるが、燃料消費とピットストップに関しては変動幅が増えるのは間違いない。富士スピードウェイのコース・レイアウトと燃料リストリクター95kg/h設定では、燃料補給が必要になると考えられるが、天候と路面状況の読みによっては無給油作戦を試みるドライバー+チームがあるかもしれない。

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