エンジニアたちの作戦計画
第1戦 鈴鹿サーキット
Engine Supplier Honda/M-TEC HR-417E
粂川 誠司
株式会社M-TEC
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今シーズンは、7戦を通してエンジン1基で戦うことになりましたが、その対応も含めて、パワーユニット開発のポイントとされたところを教えてください。
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エンジンの基本部分は、昨年仕様がベースとなっています。年間1基のエンジン使用制限を目標にパフォーマンスの維持と信頼性確保が開発コンセプトです。エンジン・マイレージ確保の為、不安要素部分の改善に取り組みました。
*マイレージ:積算走行距離のこと
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3月に2回実施された合同テストに使用したエンジン、そこから1年間の実戦に使用するエンジンと、順次供給されたことと思いますが、その生産(組み立て)とデリバリーの流れ、作業状況などについて教えてください。
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今年仕様のエンジンは、鈴鹿・富士テストに1台の車両に供給しました。SF19車両への搭載確認と、2回のテストで例年同様に開幕戦に向けた最終的な適合作業を行うなど性能確認を行いました。実戦用エンジンは、車両9台分+スペア数基を4月上旬までに組立・ベンチでの初期性能確認・不具合チェックを行います。全てのエンジンが確認を終えた時点で、JRPの立ち合いのもと抽選を行い、各エンジンの搭載車両が決定されて封印作業が行われます。その後、各チームに発送されます。順次供給ではなく同じタイミングでの供給になります。
*ベンチ:エンジン(など)を単体で固定し、性能などの試験を行う設備。
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エンジン本体は年間1基ですが、コース特性と気候などに応じて、各戦ごとに適合作業などが行われるかと思います。具体的にはどんな要素についての「適合」(ファイン・チューニング)が行われるのでしょうか?
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サーキットでの適合は、気象条件もありますが、特にターボエンジンの課題であるドライバビリティ向上を念頭に、コース特性とドライバーからの要求に対して適合作業を進めています。
*ドライバビリティ:ドライバーが運転操作の中で意図したとおりの反応が現れるか、エンジンの場合はアクセルペダル操作、競技運転ではとくに踏み込みに対して遅れなく、操作量に応じたトルク上昇が現れるか、を意味する。ターボ過給の、とくにガソリンエンジンは、アクセル踏み込み→吸入空気量増加→燃焼ガス増加→排気タービン加速・過給効果(空気加圧)増加、というプロセスを踏まないと明確なトルク上昇が発生しないので、その応答遅れ(ターボラグ)をどう減らすか、がポイントのひとつ。
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前問の現地での適合作業なども含めて、今シーズンのスーパーフォーミュラに対するエンジニアリング・サポート体制について教えてください。
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体制は昨年と変更なく、現場サポート引き続きM-TECが担当します。各チームに1人のエンジニアがチーム担当者として2台(チームによっては1台)のエンジンサポートをいたします。
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レース中の総使用時間100秒、一度作動させた後は100秒の間隔が設定されることになったオーバーテイクシステム(OTS)について、どんな使い方が生まれると考えていますか? あるいは「こう使うと良さそう、おもしろそう」というアイデアはありますか? 加えて、予選Q3での使い方はどうなるでしょうか?
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昨年までの1回20秒のOTSから変更になった事で、使用パターンが増えると思います。一度に100秒全部を使うという使い方は、ほとんどないと思いますが、それはそれでおもしろそうですね。OTランプとレインランプ(車両後面・リア翼端板後縁部の赤色LED)の点滅状態で、前走車・後続車とも使用したタイミングがお互いに把握できること、先に使用されてオーバーテイクされても、そこから100秒間は、相手が使えなくなること、などの設定の中、勝負どころのどこでOTSを有効に活用するのか、見る側も楽しめると思います。
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SF19という新車両について、昨年の開発テストからこの3月の合同テストを通して、エンジン側のデータや走りっぷりから見ると、どんなところが変わり、どんなキャラクターの車両になったとお考えでしょうか?
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各ドライバーさんのコメント同様、ダウンフォースが増え、フロントタイヤが太くなったので、コーナーリングマシンのキャラクターがより強くなったと思っています。
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スーパーフォーミュラに密着する技術者の視点から、今年の「見どころ」としてどんなポイントが浮かび上がってきていますか? 個人的に楽しみにしていること、なども含めて自由回答でかまいませんが…。
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今年は、新車両1年目、ドライバーの変更・移籍等もあり、2回の合同テスト結果だけでは、今シーズンの予測が現場で対応している我々でもわからないのが正直なところです。元々、予選ではほとんどの車両が1秒以内に入ってくるカテゴリーなので、いち早くSF19車両の“ツボ”を見つけたチームがシーズン序盤をリードするのかなと思います。加えて今年から乗る新人や若手ドライバーもテストで好調でしたので、見どころのひとつだと思います。SF19車両の初年度ですが、昨年に引き続きホンダ・エンジン・ユーザーがチャンピオンを獲得できるように精いっぱいサポートして行きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。