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高桐 唯詩 スーパー・クリップ 鈴鹿大会編
2019年11月1日
クリップNo.17
「キイウィ魂ここにあり。リベンジは実った」
速い。タフである。レースに強い。
予選Q3、6番手でありながらガッツポーズ。
「レースでは行ける。パーフェクト」と自信に満ちていた。
決勝はソフトでスタートし、3周目に3位。
9周目から2位をキープしそのままゴール。チャンピオンに輝く。
思えば2018年、わずかの差で山本に逆転され逃した王座。
この日リベンジは実り、とめどない涙をヘルメットの中で流した。
25歳。明るい性格だが苦労人でもある。
ニュージーランドは、レース熱は高いが、ヨーロッパからは遠く、
コネや資金も豊富ではない。
親友になったダニール・クビアトに手助けされステップアップ。
やがてトムスから声がかかった。
キャリアの説明はもう良いだろう。
母国のラグビーも応援し、ニュージーランド、キイウィ魂は燃えに燃えた。
すべての力を出し切って、ライバルと闘い、勝ち取ったタイトルを誇ろう。
ニックもまた世界に通用する男。
美しいオークランドでオフを過ごし、また来年も大きく羽ばたいてほしい。
クリップNo.16
「鈴鹿燃ゆ。すべてを結集し、勝負は決した」
素晴らしいシーズンだった。実り多き最終戦に感動した。
山本尚貴は日本のレース界を背負って立つ自負と、責任感に溢れている。
F1トロロッソHONDAでパーフェクトな走りを見せた。
その上で展開していった最終戦JAFグランプリ。意識は高く、濃密なレースになった。
山本はすべてを賭けた。が、タイヤ交換後のポジションに福がなかった。
パロウのうしろでタイムロス。130Rで大バトルを繰り広げ、誰よりもレースを戦ったが、
キャシディに逃げられ、王座を逸す。
死力を尽くしたが負けは負け。シーズン半ばの不調も反省。
先にチームからごめんねと言われ、山本は涙が止まらなかった。
その足でキャシディを祝福しつつ、なおも涙が溢れる。
今の社会で、男が真剣に泣ける仕事ってあるのかい?
君はどう?
この涙の意味を多くの人に知ってほしい。
重く、燃え尽きたあとの男の涙の美しさを。
クリップNo.15
「ハーベスト(収穫)の時」
2014年SUGOでの鮮烈な勝利から5年、
お世話になったダンディライアンから老舗MUGENへの移籍。
得意のはずのSUGOで、頑張りすぎコースアウトを喫した。
しかし野尻は、ファイナルレースで自分らしさを取り戻す。
ストラテジー的には、速さを示すならソフトタイヤスタート。
SCリスクを考えるならミディアムでスタート。
全員悩む中、ソフトで快走、8周目の130RでTOPに立った。
スーパーフォーミュラは昭和時代の「やってみなければ分からないレース」ではない。
科学的分析、シミュレーション。分かった上で「タマ」を入れていく。
それでも「やってみなければ分からない謎の方程式」であるところが、実に人間的なのだ。
無限育ちの中野信治監督にとっても難しく、我慢を強いられた最初の1年だった。
確固たるエンジニアリングと、天の恵みともいえるクリーンなレースで、
素晴らしい収穫の時を迎えることができた。
クリップNo.14
「人をいつくしみ、山のいただきに立つ」
さずかった「仁嶺」という名の道程をまっすぐ歩んできた。
5歳でカート。小学生の頃、鈴木亜久里を知る。
HONDAフォーミュラ・ドリーム・プロジェクトでエリート教育。
まさに日本が期待する未来の大器の一人。
スーパーフォーミュラ最終戦には、微妙に「F1」というキーワードが存在していた。
2週間前のF1日本グランプリ。山本尚貴は「トロロッソHONDA」でフリー走行を走り、
キャシディは山本を激励しつつ親友クビアトを応援。パロウはベッテルの走りを手本にし、
仁嶺は親友アルボンにSUZUKAの攻略法を教えた。
世界の空気を知る男たちが、スーパーフォーミュラの舞台で世界クオリティーのレースを
展開。激しく燃えた。
仁嶺は予選Q1、B組のTOP。
決勝でも山本の「ガード役」などせず、自分のレースに徹し初の表彰台。頭角を現した。
しかし、あえて言おう。
もっと強く、もっと凄く、ふてぶてしく、頂きを目指せ!
強烈なインパクトを世界に与えるのだ。
クリップNo.13
「怪物パロウ、阿修羅の突進も実らず」
予選Q1。A組トップタイムながらQ2では5位。
そこでセットを替え、早めの猛アタック。
たった一人1分35秒台に入ってポールポジション獲得。
パロウもまたF1に刺激を受け、特にセクター1から2をF1(ベッテル)のように駆け登
りたいと願った。
SF19は決してF1カーではない。が、世界に存在するマシンの中では最もF1的である。
チームは要望に応えセッテング。ポールを取り、あわよくば優勝と王座を目指した。
ミディアムタイヤでスタートすると、3周目のセクター1で最速。
ソフトタイヤの野尻を置き去りにする阿修羅のような突進。
しかしソフトタイヤに変えてから、バランスを失い、S字やダンロップでマシンが、ぶれた。
21周目には山本に抜かれ、夢は完全に消滅。
負けてサバサバ。ルーキー・オブ・ザ・イヤーにニッコリ。
まったくパロウってやつは規格外。来期も絶対に目が離せない。
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Super Clip スーパー・クリップ
レースウイークエンドの鮮烈なモーメントを
超一流フォトグラファーと詩人が捉える新コーナー。
第7戦鈴鹿大会のインサイドをポエム的コラムで振り返る。
Photography by M.Kobayashi & Y.Onishi
Word by Tadashi Takagiri
執筆者紹介
Tadashi Takagiri
詩人&ジャーナリスト。1970年よりレース取材。フジテレビF1中継の
アバン・タイトル・ポエムすべてを執筆。F1総集編30年執筆。
伝説のラジオ番組「アドバンサウンドコックピット」構成者。