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「高桐先生」を偲んで
2021年4月20日
「高桐先生」の肩書というのはむずかしい。フジテレビのスポーツ局で育った私との関わりを振り返るなら、やはり「放送作家」ということになるのだろうか。
先生との出会いは何といっても毎年の恒例行事として年末に放送されていた「F1総集編」。番組の制作現場にはあまり似つかわしくないとても静かな録音ルーム。あの番組は多くのスポーツディレクターにとって教科書だった。ひとつひとつ言葉がそれぞれの重みを持っていることを教わった。そう、彼は作家であると同時にジャーナリストであり、そしてレジェンドであった。
今もスーパーフォーミュラのホームページに掲載されている「スーパー・クリップ」。子ども、あるいは孫にも近い年齢のドライバーたちを暖かく包みこんでいる先生の言葉。
レースが終わるとしばらくしてスーパー・クリップの原稿がメールで送られてくる。そこには、私の知らないこと、気づかないことが沢山あった。レース会場でドライバーたちを直接見ていたはずの自分はサーキットで何を見ていたのか。
公開前の先生の原稿やドライバーの人選に、私たちは僭越ながら意見を述べることがあった。しかし先生には「大御所」にありがちな剛直さは微塵もなく、とてもしなやか。私たちのような若造の言葉もよどみなく吸収してくれる。だから私たちは先生と話したかった、もっと話したかったのに・・・。
私の上司である中嶋会長に「スタート直後の第1コーナーの密集をどうやって切り抜けるんですか?」と聞くと会長は「俺、上から見てるから大丈夫なんだよ」とさらりと答える。
どうもレジェンドにしか踏み込むことのできない「俯瞰」があるらしい。
きっとこれからもサーキットを訪れるたびに先生から見守られているような気がすることだろう。だから、自分にできることに全力で取り組まなくてはいけない、としみじみ思う。
高桐唯詩 紹介
Tadashi Takagiri
詩人&ジャーナリスト。1970年よりレース取材。フジテレビF1中継の
アバン・タイトル・ポエムすべてを執筆。F1総集編30年執筆。
伝説のラジオ番組「アドバンサウンドコックピット」構成者。
「日本放送作家協会」「日本モータースポーツ記者会」会員
2019年より公式ウエブ「スーパー・クリップ」執筆。
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Photography by M.Kobayashi & Y.Onishi