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ヨコハマタイヤ 第3戦レース総評
2018年5月29日
従来のコースレコードを多くのドライバーが更新するアタック合戦となった前回のオートポリス大会。だが、決勝は天候不良によるキャンセルで、特性の多いコースをいかにマネージメントするのか、その様子を見る機会が惜しくも失われてしまった。そして迎えた今回のSUGO大会。セーフティカー導入で混乱した展開をどう見たのか、ヨコハマタイヤの高口紀貴氏に訊いた。
「Sタイヤは熱しやすく冷めやすい。ストレートでタイヤが冷えた」
ちょっとよくわからない展開になりました(苦笑)。ただSC(セーフティカー)が入ったというのが、このレースのキモになったことには違いないですね。まず予選ですが、Q2、Q3でのコースレコード更新についてですが、金曜日の専有走行の時点でタイムは出ないかなと思っていました。当日は路面温度も高かったですからね。これは無理だろうと思ったら、(翌日から)徐々に気温、路面温度が下がったじゃないですか。なので土曜日のフリー走行でみんなタイムアップし始めてきたし、『これはコースレコードを切るのではないか』という思うようになって。結果的にレコードを更新したので、路面温度なりだった(下がった路面温度に準じてのタイム更新だった)のかなと思います。
一方、課題としては、前回からずっとある、”Q2からQ3でのタイムアップ”が今回もなかったことが挙げられます。今回はたまたま野尻智紀選手がQ3でQ2のタイムを上回り、コースレコードを更新することができました。(平川選手もQ3で自己ベストを更新。)あとは(アタックの)ウォームアップが2周必要なのかどうか。まだ2周目と3周目の両方が見られました。本来ゴムは、熱しにくく冷めにくいものなんです。熱を入れても簡単に芯まで温まらず、だけど冷まそうと思っても簡単に冷めないというのが本来あるべき姿です。一方、S(ソフト)タイヤは、熱しやすく冷めやすいものになっています。つまりストレートでタイヤが冷えてしまう。本来のゴムであれば、蓄熱によってそんな簡単に冷めずに次のコーナーに入っていけるのですが・・・。なので、ウォームアップの仕方がどうこう、という話ではないような気がしてきました。今後の改善点としてやっていくべきところですね。
レースでは、ニック・キャシディ選手がミディアムからソフトに換えて62周走りましたが、ペース的には上げられなかったですよね。当初はあのタイミングでピットインしたので2ピットなのかと思いました。それにしてはガソリンがもつタイミングだし・・・と戸惑いました。どういう確信があってやっているのだろうと思いました。個人的な考えてとしては、最初にSタイヤを着け、燃料ウィンドウを消化してからすぐミディアムに交換、というのが常套手段だと読んでいたのですが、彼はまったく逆の作戦でしたね。M(ミディアム)タイヤに関しては、比較的どのような使い方をしても作動してくれるので、ドライバーによっては大半をMで走るという使い方があって当然だったと思います。ただ、Mタイヤで61周まで走り、Sタイヤを着けた石浦宏明選手の場合、温まっていないSタイヤでアウトラップを走らないといけない、それが時間的にも路面が冷え切っている状態だったということもあり、タイヤが温まらずに苦労したんじゃないでしょうか。逆に今回のタイヤの使い方としては、SCが入った段階でピットインはしませんでしたが、小林可夢偉選手は最初のSタイヤでちゃんと後続とのマージンを取っていって、さらにピットストップ分もマージンを取る走りができていましたね。ピット作業含めてうまく行っていれば、Mタイヤを着けたあとのウォームアップでちょっと踏ん張って走ってそのまま勝てていたでしょう。この展開ができていれば、Sタイヤの評価も上がったのではないかなと思います。