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野尻智紀が波乱の予選を制してP.P獲得
2020年11月15日
季節外れといってもいいほどの暖かな好天に恵まれた11月15日(日)の大分県オートポリス。当初の予定よりも5分遅れて、午前10時20分からは全日本スーパーフォーミュラ選手権 第4戦のノックアウト予選が行われた。Q1から赤旗が提示される波乱の展開となったこの予選でPPを獲得したのは、野尻智紀(TEAM MUGEN)。2番手には福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、3番手には山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)と、ホンダエンジン勢がトップ3を独占している。
前日の土曜日に引き続き、高気圧に覆われた日本列島。九州地方では、場所によって夏日になるという予想も出されているほど、暖かな1日となった。標高が高いオートポリスでも朝からポカポカした陽気。気温21℃、路面温度25℃というコンディションのもと、午前10時20分からノックアウト予選が始まった。Q1はA組とB組に分けられ、それぞれ10分間の走行。まずはA組の走行から行われる。セッションが始まると、福住、ニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)、牧野任祐(TCS NAKAJIMA RACING)、野尻、タチアナ・カルデロン(ThreeBond Drago CORSE)がユーズドタイヤを装着してすぐにコースイン。まずはマシンの感触を確認する。また、ここで同様にコースに出たかった松下信治(Buzz Racing with B-Max)は、ギヤボックス系のトラブルが発生しピットロードでストップ。一旦ピットに戻されることとなる。またセッション開始から3分というところでサッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)もコースに入り、マシンの確認を行うとすぐにピットインしている。セッションを折り返すと、いよいよ各車がニュータイヤを装着してアタックへ。カルデロンを先頭に、福住、牧野、関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)、石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO・INGING)といった順でコースに入っていった。
そして、残り時間が1分30秒となったあたりから各ドライバーがフルアタック。最初にアタックに入ったカルデロンはセクター2まで自己ベストをマークしていたが、どこかでミスがあったようでこの周は途中でプッシュするのを止め、仕切り直すことになった。これに続いてアタックに入っていたのは、牧野。牧野はここで1分25秒619をマーク。早くもコースレコードを更新する。これに続いてアタックしていた福住は、1分25秒152と牧野のタイムを上回りトップに立った。石浦は1分25秒725と今ひとつタイムを伸ばせず、その後のドライバーたちのアタックを待つ形となった。だが、ここでセッションは赤旗によって中断される。これは小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG)の代役として出場している中山雄一が最終コーナー手前の左コーナーでスピン、クラッシュしたため。セッション残り時間14秒という段階での赤旗だった。このマシンの回収が終わると、セッションは午前10時40分に再開。残り時間3分ということで、Q2への戦いが繰り広げられた。この時、福住はピットから動かなかったものの、他のドライバーは再びコースイン。1周タイヤを温めた後、残り時間が1分を切ったところからアタックに入る。ここで福住を上回り、1分24秒907を叩き出したのが2セット目のニュータイヤを投入したキャシディ。野尻も1分25秒707をマークしてセッション4番手に浮上する。この時、ユーズドタイヤでアタックしたフェネストラズは1分25秒857、2セット目のニュータイヤを装着した松下は1分25秒908と25秒台後半のタイムに留まったが、何とかQ1を突破した。これに対して、Q1敗退となったのは、関口、カルデロン、そしてクラッシュした中山だった。
10分間のインターバルを経て、Q1のB組の走行が始まったのは、午前10時53分。ここでもセッションが始まるとすぐ、山本、山下健太(KONDO RACING)、シャルル・ミレッシ(Buzz Racing with B-Max)、大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)、国本雄資(carrozzeria Team KCMG)らがユーズドタイヤでコースに入り、マシンの状態を確認してピットイン。タイヤをニューに交換する。その他のドライバーたちはニュータイヤを装着した状態で、ピットに待機。コースインのタイミングを待った。そして、残り時間が6分を切ると、山本が最初にコースへ。これに平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)、中嶋一貴(VANTELN TEAM TOM’S)の代役として出場している宮田莉朋、大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)、坪井翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)と続き、残り時間が4分半となったところで山下健太(KONDO RACING)、シャルル・ミレッシ(Buzz Racing with B-Max)もコースイン。残り時間が2分を切ったあたりから、いよいよ各車がアタックに入る。まずアタックに入った山本はここで1分25秒590をマーク。だが、その直後に再び波乱が起こる。現在ランキングトップの平川がセクター2まで全体ベストをマークしていたものの、A組の中山と同じく最終手前の左コーナーでスピン、アウト側に飛び出してクラッシュ。ステアリングを両手で叩きながら悔しがる平川だったが、このクラッシュにより残り時間30秒というところで、セッションは赤旗によって中断された。このマシンの回収が終わり、セッションが再開されたのは午前11時15分。A組と同様、残り時間3分でアタックの仕切り直しが行われる。ここで山本、宮田、笹原、坪井、大嶋らは2セット目のニュータイヤを投入することとなった。再開と同時にコースに雪崩れ込んだドライバーたちは、残り時間が1分となったところからアタックへ。ここで山本が1分24秒693と、A組のキャシディが出したタイムを上回ってくる。続く宮田は1分25秒057。さらに前半セクターで驚速ぶりを見せていた大湯が1分24秒836、笹原が1分25秒223と自己ベストを次々に更新。だが、山本のタイムを上回るドライバーはおらず、山本はQ1をトップで通過。これに大湯、国本、宮田、坪井、笹原、赤旗後にユーズドタイヤでアタックした山下が続く。一方、Q1で敗退となってしまったのは、大嶋、ミレッシ、平川だった。
そこから10分間のインターバルを経て、14台で争われるQ2が始まったのは、午前11時28分。今回は通常の7分から10分間にセッションが延長されて行われたが、グリーンシグナルが点灯すると福住、牧野、野尻、松下らはユーズドタイヤでコースイン。マシンの状態を確認した。そして、残り時間が6分を切ると、タイヤのウォームアップを2周行う予定にしていた宮田、石浦、山本、フェネストラズ、福住らがコースイン。ウォームアップを1周に留める予定のドライバーたちは、そこからしばらく待ち、残り時間が4分を切ってからコースへと向かっている。そして、残り時間が2分となったあたりで、まず宮田がアタックに突入。宮田はここで1分24秒544と、これまで最速となるタイムをマーク。続く石浦は1分25秒080と24秒に入れなかったが、山本は宮田と1000分の1秒まで同じタイムをマークして2番手に滑り込む。その後、この2人のタイムを上回るドライバーはおらず、宮田はトップでQ2を通過。山本が2番手。これに福住、キャシディ、坪井、野尻、松下、大湯と続いた。一方、Q2で敗退となったのは、フェネストラズ、石浦、国本、牧野、山下、笹原。中でも、開幕から3戦続けて予選トップ3に入っていたフェネストラズは、大湯とわずか100分の4秒差で涙を飲む結果となった。
そして、いよいよPPを決定づけるQ3が始まったのは、午前11時48分。この時点で気温は21℃と変わらないものの、路面温度は28℃まで上昇。Q3も今回は通常の7分ではなく、タイヤのウォームアップを考えて10分間に延長されているが、その措置が杞憂に終わるほどの暖かさとなっている。さて、セッションが始まると、まずは野尻がフロントだけニュータイヤを装着してコースイン。1周のスクラブを終えるとピットに戻る。その他のドライバーたちは、ピットで待機することとなった。そして、残り時間が5分15秒ほどとなったところで、まずは山本がコースイン。福住がそれに続く。さらに残り時間が3分となったところで野尻がフロントにスクラブしたタイヤとリヤにニュータイヤを装着してコースイン。続く宮田はQ2までに持っていたニュータイヤを全て使用してしまったため、ユーズドタイヤでコースイン。さらに坪井、松下といった順でコースに入っていく。そして、セッションの残り時間が2分となったところで、最後までピットに待機していたキャシディが動き出そうとしたが、ここでまた波乱が発生。ピットを後にしようとしたキャシディは、まさかのエンジンストール。メカニックが再びエンジンを始動させるが、キャシディは残り時間が1分半となってからのピットアウトとなってしまったのだ。この時、キャシディは野尻の目前でコースに入ったが、一方の野尻にとっては、アタック開始直前のタイミング。すでにプッシュを開始していた。そんなハプニングもありながら、野尻は動じることなく各セクターで自己ベストをマーク。セッション残り5秒の段階で1分24秒140を叩き出す。これに続いてコントロールラインを切ったのはアウトラップのキャシディだったが、この時には無情にもセッション終了のチェッカーフラッグが提示されており、キャシディはアタックを行うことができなかった。その後、タイヤのウォームアップを2周行なっていた山本が1分24秒257をマークするものの、野尻には届かず。これに続いてアタックしていた福住は、1分24秒155と山本を上回ってきたものの、野尻には100分の1秒余り及ばなかった。続いてアタックしたドライバーたちも24秒台後半から25秒台に留まり、上位進出はならなかった。その結果、野尻が今季初のPPを獲得。福住が2番手、山本が3番手。以下、坪井、大湯、急遽参戦が決まった松下、Q3はユーズドタイヤでのアタックとなった宮田、アタック自体ができなかったキャシディと続いている。
予選は全体的に荒れ模様だったが、午後に行われる決勝レースでは、どんな出来事が展開されるのか。上位につけたドライバーたちがそのまま決勝での好結果を残すのか。あるいは、後方から追い上げを図るドライバーがドラマを起こすのか。かなりタイヤに厳しい状況となっているだけに、一波乱も二波乱も起こりそうな予感だ。