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王者の風格 野尻智紀が今季初のポール・トゥ・ウィン
2022年4月10日
終日好天となり、日中は上着がいらないほどの天候となった4月10日(日)の静岡県富士スピードウェイ。午後からは全日本スーパーフォーミュラ選手権第2戦の決勝レースが行われた。このレースで王者の風格を見せ、今季初のポール・トゥ・ウィンを果たしたのは野尻智紀(TEAM MUGEN)。予選は8番手だったものの、そこから巻き返した平川亮(carenex TEAM IMPUL)が開幕戦の勝利に続き、2位表彰台を獲得した。前半2位を走行していたものの、タイヤ交換後に平川の先行を許した宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)は3位に入賞。今季初の表彰台を獲得している。
照りつける日射しによって、気温が23℃、路面温度が32℃まで上昇する中、開幕戦と同じく、午後2時半にフォーメーションラップがスタートする。1周の隊列走行を終えると、21台のマシンは正規グリッドにロックオン。後方でグリーンフラッグが振られると、シグナルオールレッドからブラックアウト。41周先のゴールに向けてスタートが切られた。ここでホールショットを奪ったのは、ポールスタートの野尻、宮田も好スタートを決め、2番手で1コーナーに入っていく。しかし、予選3番手だった笹原右京(TEAM MUGEN)は、開幕戦に続いてエンジンストールし、最後尾までドロップしてしまった。その後方で抜群のスタートを切り、宮田の後ろに続いたのは、予選5番手だった山下、予選6番手だった小林可夢偉(KCMG)、予選8番手だった平川亮(carenex TEAM IMPUL)ら。ここに予選7番手だったサッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)や予選9番手だった三宅淳詞(TEAM GOH)も加わり、序盤から激しいポジション争いが繰り広げられる。そのさらに後方ではアクシデントも発生。最後尾グリッドから得意のロケットスタートを決め、さらにポジションを上げようとしていた松下信治(B-Max Racing Team)がダンロップコーナーに向けてのブレーキングで、牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)に追突することになった。牧野はここでバランスを崩してスピン。横を向いた状態でエンジンがストップし、コース上を塞ぐ形となってしまった。(松下にはその後、ドライブスルーペナルティが科されている)
オープニングラップを終えてのオーダーは、野尻、宮田、山下、フェネストラズ、可夢偉、平川、三宅、佐藤蓮(TEAM GOH)、ジュリアーノ・アレジ(Kuo VANTELN TEAM TOM’S)、大津弘樹(DOCOMO TEAM DANDELION RACING) 。この中で、2周目の1コーナーの立ち上がりでは、可夢偉がフェネストラズをオーバーテイク。4番手までポジションを上げてきた。
同じ頃、牧野のマシンはまだコース上。自力では動けない状態となっていたため、野尻が2周目を終える前に、セーフティーカーの導入が決定。各ドライバーはセーフティーカーの後ろに隊列を組んで走ることになる。しかし、マーシャルが素早く作業を行い、4周終了時にレースは再スタート。この再スタート後の1コーナーでは、フェネストラズがオーバーテイクシステムを作動させながら、可夢偉からのポジション奪還を狙う。また、8番手争いでは、 同じく1コーナーで、佐藤のインにアレジが飛び込んでいくなど、各所でバトルが勃発した。さらに、その後方でも松下がコカ・コーラコーナーで福住仁嶺(ThreeBond Drago CORSE)に並びかける。ここは福住がポジションを守ったが、ダンロップコーナーでは松下が福住の前に出ることに成功した。このバトルの中で、マシンに異変が発生したのは、可夢偉を攻略したフェネストラズ。「フロントのブレーキがなくなってしまった」というフェネストラズは、アドバンコーナーでオーバーラン。その後、タイヤにも問題を抱えて大きくポジションを落とすことになってしまった。そこからの数周は、4番手争いと10番手争いがさらに激化。6周目には福住、松下のバトルに大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)も割って入り、三つ巴に。この中で、上手いタイミングでオーバーテイクシステムを使い、ポジションを上げたのは大湯だった。さらに、7周目には平川と可夢偉がオーバーテイクシステムを使いながらのバトル。平川はイン側のラインを取ったが、アウト側の可夢偉攻略はならなかった。そればかりか、8周目の1コーナーで、平川は三宅の先行を許す。9周を終えたところでのオーダーは、野尻、宮田、山下、可夢偉、三宅、平川、佐藤、アレジとなっていた。
そして、野尻が10周を終えたところで、ピットには動きが出る。可夢偉を先頭に、佐藤、アレジ、笹原、山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)、阪口晴南(P.MU/CERUMO・INGING)がタイヤ交換のためにピットロードに滑り込んできた。この中で、素早い作業を見せ、最初にコースに戻ったのは、アレジ。これに可夢偉、佐藤と続く。可夢偉と佐藤は、ファストレーンを走ってきた後続のマシンたちの通過を待たなければならなかったため、ポジションを落としている。またその翌周には、大津、国本雄資(KCMG)がピットイン。タイヤ交換を終えて、コースに戻った。ここから国本は山本との激しいバトルを演じた。
一方、トップ集団では、11周目に平川が三宅を再逆転。可夢偉がすでにピットインしていたため、平川は4番手に浮上する。そこから平川は山下との差を詰め、18周目のストレートではオーバーテイクシステムを使いながら前に出ることに成功。3番手までポジションを上げてきた。抜かれた側の山下は、前半ペースの落ち込みに苦しみ、前の宮田に5秒近いギャップを築かれていた。そこで、山下は19周を終えたところでピットイン。すでにタイヤ交換を終えた中で一番前にいたアレジの目前でコースに戻る。その周のダンロップコーナーでは、アレジが一旦山下をオーバーテイク。しかし、タイヤが温まると、21周目には山下がストレートでアレジをオーバーテイクし返した。その山下の前に現れたのは、20周を終えたところでピットに入った三宅。山下はアドバンコーナーの立ち上がりから、その三宅に迫る。その背後にはアレジも着いていた。そして、ダンロップコーナーの進入で、山下がインに飛び込もうとしたが、三宅も防戦。その後ろでは、アレジがブレーキロックし、オーバーランする場面もあった。アレジはここで前の2台から少し離されることになってしまう。山下は、その翌周に三宅を攻略。これでタイヤ交換組では最上位に浮上する。
P.2 平川亮(carenex TEAM IMPUL)
一方、トップ集団では、22周を終えたところで3番手を走行していた平川がピットイン。クルーは6秒2という素早い作業を見せ、山下の前に平川を送り出す。平川は、ここからファステストラップを書き換える走りを展開した。そのため、24周を終えたところで2番手を走っていた宮田がピットイン。こちらも6秒3という短い作業を見せ、宮田は平川の前でコースに復帰する。しかし、勢いが優っていたのは、すでにタイヤが温まっていた平川。平川は100Rで宮田を捉えると、実質2番手に浮上してきた。そして、宮田がピットに入った翌周、25周を終えたところでトップの野尻がピットイン。野尻は平川が最終コーナーからストレートに入ったあたりでコースに戻り、きっちりと首位のポジションを守った。
この時、まだピットに入っていなかったのは、関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)と坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)。坪井は野尻の翌周、26周を終えたところでピットに入ったが、関口は29周を終えるところまで引っ張ってからタイヤ交換を行なっている。
P.3 宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)
そして、全車がピット作業を終えると、トップは野尻。平川、宮田がそれに続く。この3台はラップタイムもほぼ同等で1分24秒前半から中盤のタイムを刻み、それぞれ2秒以内で差が縮まったり開いたりという状態で周回を重ねていく。最後までジリジリとした神経戦となったが、全く動じることなくトップチェッカーを受けたのは野尻。開幕戦を制している平川が2位、昨日は表彰台まであと一歩の4位だった宮田が3位でそれに続いた。
トップ3台から少し遅れて続いたのは山下。その1秒ほど後方には三宅と続く。終盤、その2台に迫っていったのが、タイヤ交換を最も遅らせた関口だった。残り10周というところで関口と三宅の差は7秒以上。しかし、関口のペースは速く、最後は2秒を切るところまでその差を詰める力走を見せた。だが、逆転はならず。山下が表彰台まであと一歩の4位、三宅が5位、関口が6位。以下、大津、アレジ。さらに、後半幾度もポジション争いを演じた可夢偉と笹原までがポイントを獲得している。
次回、第3戦は2週間後。三重県鈴鹿サーキットに舞台を移すが、このレースで最後に笑うのは誰なのか。今回とはまた違うストーリーが待っているはずだ。