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関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)が劇的な大逆転で今季初優勝
2019年5月19日
雨に見舞われて、赤旗が頻発。まともにタイムアタックできないドライバーも多く、大波乱となった午前中の予選から4時間半。昼頃から天候が回復し、ドライコンディションのもとで行われた全日本スーパーフォーミュラ選手権第2戦の決勝は、変則ピットストップストラテジーを取ったチームと、序盤に出されたセーフティーカーの影響で大きく動いた。その中で、終盤までステイアウトを選んで大きなマージンを築き、見事優勝を果たしたのは、関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)。オープニングラップを終えて早くもピットに入った山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が2位、同じ戦略の大嶋和也(UOMO SUNOCO TEAM LEMANS)が3位表彰台を獲得した。
終日、1コーナーから最終コーナー方向に強い風が吹き続けた5月19日(日)の大分県オートポリス。サポートレースのTCRJの決勝が終わった頃からは、急激に天候が回復し、強い風によって路面も素早くドライアップした。そのため、全日本スーパーフォーミュラ選手権ではウェット宣言は出されず。タイヤ交換義務づけで行われることになった。
気温19℃、路面温度22℃というコンディションのもと、フォーメーションラップは午後2時にスタート。この時、PPの国本雄資(KONDO RACING)、2番グリッドの坪井翔(JMS P.MU/cerumo・INGING)はソフトタイヤを装着。その後方では、9番グリッドの塚越広大(REAL RACING)、12番グリッドの野尻智紀(TEAM MUGEN)、13番グリッドの牧野任祐(TCS NAKAJIMA RACING)、16番グリッドの関口もソフトを装着。その他のドライバーはミディアムタイヤを装着していた。また、午前中の予選でクラッシュしたアーテム・マルケロフ(UOMO SUNOCO TEAM LEMANS)は、マシンの修復が間に合わず、グリッドにつくことができなかった。
1周の隊列走行を終えると、19台のマシンが正規グリッドにつく。そして、シグナルオールレッドからブラックアウト。ここでPPの国本は、動き出しこそ今ひとつだったものの、トップを守って1コーナーへ。これに坪井、福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、中嶋一貴(VANTELN TEAM TOM’S)、ルーカス・アウアー(B-Max Racing with motopark)、石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO・INGING)と続く。一方、その後方では、野尻とハリソン・ニューウェイ(B-Max Racing with motopark)がエンジンストール。グリッド上でストップしてしまう。この影響で、2台は早くも周回遅れとなってしまった。
さて、オープニングラップを終えると早速動きが出る。石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO・INGING)と山下健太(KONDO RACING)、山本、大嶋の4人がピットイン。ソフトタイヤに交換してコースに戻る。ここから最後までソフトタイヤで走行する作戦を取った。そして、この4台がコースに戻った直後、コース上ではアクシデントが発生。ダニエル・ティクトゥム(TEAM MUGEN)が3コーナーのブレーキングで止まり切れずに芝生の上に飛び出したが、そこからコースに復帰したところでバランス崩してスピン。4コーナーのライン上にストップし、エンジンも止めてしまった。そのため、コース上にはすぐさまセーフティーカーが導入される。
このセーフティーカー導入を見て、多くのチームが動く。スタートから2周を終えたところで、坪井、福住、一貴、アウアー、塚越、小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG)、ニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)、アレックス・パロウ(TCS NAKAJIMA RACING)、平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)がピットに雪崩れ込み、タイヤ交換や給油を終えてコースへと戻った。ここで好位置に戻ったのは、坪井。坪井はセーフティーカーラインの前で、石浦と山下の間に滑り込み、大きくポジションを落とすことはなかった。一方、ここでステイアウトを選んだのは、ソフトタイヤでスタートした国本、関口、牧野の3人。スタートでストールした野尻とニューウェイもステイアウトした。また、ちょうどこの周、マシンの修復を終えたマルケロフがピット出口からコースイン。しかし、その直後、ステアリング系のトラブルから左側のガードレールにヒット。その場でマシンを止めてしまうこととなった。これにより、セーフティーカーランがさらに伸びることとなる。その間に、一旦ステイアウトしていたニューウェイが5周を終えてピットイン。ソフトタイヤへの交換を終えて、コースに戻った。
ティクトゥムとマルケロフのマシン回収が終わり、レースがリスタートしたのは、7周を終えた時点。セーフティーカーの回転灯が消灯すると、トップの国本はペースダウン。十分な間合いを取ったところで加速を開始する。国本はそのままトップを守って1コーナーへ。これに関口、牧野、石浦、坪井、山下、大嶋、山本と続いたが、1コーナーではソフトに交換した山下がミディアムに交換した坪井をオーバーテイク。山本も大嶋をここで交わした。さらに、同じ周に、山本と大嶋は坪井をオーバーテイク。坪井はなかなかペースを上げられず、ポジションを落としていくこととなった。
見た目上の上位3台は、石浦以下を引き離してピットインのロスタイム分だけマージンを稼ぎたいところ。しかし、雨寄りのセットアップを施していた国本は、なかなかペースを上げられない。そこに迫ったのが関口。「後ろにつくとダウンフォースが抜けて、なかなか前に行けないので、タイヤを温存しながらタイミングを待っていましたが、思った以上に前がタレてきているのが分かったので、一発OTSを使って行ってみようと思ったら前に出られました」ということで、関口は13周目の1コーナーで、アウト側のラインから国本をオーバーテイク。これでトップに立った関口は、1分30秒台後半から31秒台前半のタイムを連発して、2番手以降を引き離していった。
一方、ピットインを終えた集団の中でもバトルが勃発。22周目には山本が山下を捉え、その翌周には大嶋もOTSを使いながら1コーナーで山下の前に出る。山下も国本同様、雨寄りのセットアップを施していたため、なかなかペースを上げられなかった。また、大嶋が山下を捉えたのと同じ23周目には、山本が石浦をオーバーテイク。石浦は、リヤタイヤを守るセットアップで走行していたが、アンダーステアに苦しんでおり、フロントタイヤにグレーニングが出るような状況。やはりなかなか思うようにペースを上げられなかった。これでピットインを完了したドライバーの中では、山本が最上位に浮上。この時点で、関口と山本の差は29秒余りとなっていた。
この頃、見た目上の2番手争いも白熱。24周を終え、牧野が国本までコンマ4秒と迫る。その先の1コーナーから3コーナーにかけて、牧野は国本に並びかけた。そして、第1ヘアピンで牧野が国本のインにノーズをねじ込む。ここで牧野は若干バランスを崩したが、国本が上手く避ける形で接触を回避。牧野がポジションアップに成功する。また同じ周には大嶋が石浦を捉え、ピットイン完了組の2番手に浮上した。
こうした後方での争いを尻目に、まだピットインしていない関口は飛ばしに飛ばす。「オーバーステアが出ていてすごくクルマがナーバスでしたし、何度もハーフスピンしかけました」という関口だが、他のドライバーより1周あたり1〜2秒速いペースでの周回を重ね、30周を超えると山本との間に40秒以上のマージンを築いた。そして、その差が45秒以上に開いた40周終了時点で、関口はようやくピットイン。給油とミディアムタイヤへの交換を終え、コースに戻る。その時点でも山本に対してマージンを残しており、アウトラップでの攻略を許さなかった。また、ミディアムが温まってからの関口のタイムは、山本のラップタイムとほぼ同等か、コンマ数秒遅れで、大きく差を縮められることはなかった。
一方、この時点でもまだステイアウトしていたのは、牧野。関口がピットに入ると、牧野はペースアップ。フル満タンでスタートした牧野は、燃料が軽くなったところでラップタイムも31秒台に入ってくる。そして、50周を終えたところでピットイン。45周目に石浦をかわした福住の前でコースに戻ることに成功し、アウトラップでもポジションを守り切った。また同じ周には国本もピットイン。すでに山本や大嶋、福住に先行されていた国本は、ピットに入るとさらにポジションを下げ、16番手でコースに戻っている。
これで全車がピットに入ると、関口、山本、大嶋、牧野、福住、石浦、後方から数々のオーバーテイクを成功させたアレックス・パロウ(TCS NAKAJIMA RACING)、山下というオーダーに。トップ5台はそのままチェッカーまで順位を入れ替えることなく走り切った。しかし、その後ろでは終盤に入ってもバトルが勃発。52周目にはパロウが石浦を捉え、その翌周には山下も1コーナーで石浦をパス。続いてキャシディも石浦をかわしていく。ポジションを防御するために、たびたびオーバーテイクシステムを使用していた石浦は、100秒を使い切って最後は丸腰となり、後方からの追撃を退ける術がなかった。その結果、チェッカーを受けた時には、パロウが6位、山下が7位、キャシディが8位。石浦は残念ながら、ポイント圏外でレースを終えることとなった。
最後はミディアムタイヤにピックアップがあったため、用心してペースを落として走り切ったという関口は、昨年の第6戦岡山以来の優勝。開幕は悔しいリタイヤで終えたが、その悔しさを晴らすような今季初の勝ち星を挙げた。これに続いたのは、開幕戦でも2位表彰台を獲得している山本。3位には今季体制が変わって「驚くほどクルマがグリップするようになった」という大嶋。大嶋にとっては、2017年第5戦以来の表彰台獲得となった。