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いよいよ開幕!開幕戦もてぎ大会プレビュー
2020年8月26日
3月下旬に富士スピードウェイで行われた合同テストから、約5ヶ月。ようやく全日本スーパーフォーミュラ選手権が、8月30日(日)に栃木県ツインリンクもてぎで開幕戦を迎えることとなった。他のカテゴリーや他のスポーツと同様、スーパーフォーミュラも新型コロナウィルスのパンデミックによって、大きくカレンダーが変更。さらに今回のレースウィークにも大きな変更点がある。現在でも、日本国内では流行の第二波が続いていることもあり、今季は予選、決勝を1日で開催。開幕戦の場合、決勝距離は35周(168.035km)に短縮され、レース中の給油も禁じられる。タイヤ交換義務もない。つまりコンディションが一定の場合、ノーピットでスタートからゴールまで駆け抜けるという本来のスプリントレーススタイルになる。
ただし、ドライバーたちにとってフォーミュラカーに乗車するのが数ヶ月ぶりになることから、いきなり公式日程に臨むのは危険も伴う。そのため、今回はレースウィークの金曜日にテストセッション、そして土曜日には他の大会と同様、フリー走行、各曜日ともに2時間の走行枠が設けられることとなった。金曜日の走行に関しては、「合同テスト」となり、各ドライバーごとに前回の走行から持ち越したタイヤが3セット使用できるだけでなく、ニュータイヤが3セット供給される。公式日程に入ってからも、同様に持ち越し3セットに加え、ニュータイヤがそれぞれに3セット供給される。公式日程には合同テストで供給されたニュータイヤを持ち越すこともできるため、各チームがテストで何セット、ニュータイヤを使ってアタックするのか、どのようなタイヤを公式日程に持ち越すのかという部分がひとつの戦略となってくる。ちなみに、今年はスリックタイヤのスペックが通年1種類に変更。昨年までソフトタイヤと呼ばれていたもののみが使用されることとなった。特に、予選では、Q1からQ3まですべてソフトでのフルアタックとなり、さらに見応えのあるものになるはずだ。その中でも2組に分けて行われるQ1は、最も緊迫するはず。各組ともに10分間というセッションのため、いきなりニュータイヤでのアタックとなるからだ。そして、テストからニュータイヤを持ち越している場合、予選前に行われる最終のフリー走行で予選シミュレーションをしておくという選択肢もある。いずれにせよ、3日間を通してのタイヤの使い方は、ひとつのポイントとなるだろう。
一方、出場ドライバーの顔ぶれにも若干の変更が出ている。これもパンデミックの影響によるものだ。すでに発表されているが、ThreeBond Drago CORSEは当初の予定通り、タチアナ・カルデロンが搭乗。カルデロンはビザの再発行が許可されただけでなく、ヨーロッパの出国72時間前までと日本入国時のPCR検査が陰性。2週間の自己隔離期間を日本で過ごしてから、もてぎの現地へと入ることになる。それに対して、日程的な問題もあって日本入国が叶わなかったのは、TEAM無限のユーリ・ビップス。当該チームからは、すでに開幕戦で笹原右京が代役としてシリーズデビューを果たすことが明らかとなっている。今の所、BUZZ RACING with B-MAXのセルジオ・セッテ・カマラとシャルル・ミレッシについては正式発表がなされていないが、現段階(8月25日時点)で日本への入国ができていないということで、開幕戦に出場できるかどうかは不明。代替ドライバーを起用するかどうかも含めて、チームからの発表を待たなければならない。また、WEC世界耐久選手権に参加しているKONDO RACINGの山下健太、carrozzeria KCMGの小林可夢偉、VANTELIN TEAM TOM’Sの中嶋一貴に関しては、8月15日にベルギーのスパ・フランコルシャンサーキットで行われたレースに参加後、即座に帰国。本人たちは入国時のPCR検査で陰性だっただけでなく、その後も自己隔離を続けている。その間にも、JRPは厚生労働省や外務省、スポーツ庁などといった関係各所と連絡を取り、協議した上でアドバイスを得た。そして、本人たちに発熱などの症状がないことだけでなく、あらゆる感染拡大防止対策を実施した上で、JRPとしては彼らの開幕戦への参加を認める決定を下している。
ただし、前述のように、フル参戦を予定していながら、それが叶わないドライバーもいることや、今後自らに落ち度がなくても感染してしまうドライバーが現れるかも知れないという可能性を考慮して、今季のスーパーフォーミュラは全戦のポイントではなく、5戦分の有効ポイントでチャンピオンが決定される。また、ポイントシステムも変更。予選トップ3にそれぞれ3、2、1点が与えられるだけでなく、決勝でも10位までが入賞となる。PPの3点ももちろん大きいが、優勝のポイントが20点と非常に大きいため、勝つことの”価値”はより大きくなるはずだ。
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タチアナ・カルデロン(ThreeBond Draago CORSE)
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中嶋 一貴(VANTELIN TEAM TOM’S)
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小林 可夢偉(carrozzeria Team KCMG)
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山下 健太(KONDO RACING)
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サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)
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笹原 右京(TEAM MUGEN)
さて、こうした様々な変更点がある中、開幕の舞台となるのがもてぎだが、この大会の開催時期は例年よりも2週間ほど遅い。それでもまだまだ残暑厳しいコンディションとなりそうだ。その点、3月の富士とは全く条件が異なることから、誰が好結果を出すかというのは予想しづらいが、少なくともルーキーには難しい1戦となるだろう。今年は前述のカルデロンだけでなく、スーパーGTでも活躍を見せているサッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)といった注目のルーキーたちが参戦するが、彼らにとって夏場にスーパーフォーミュラに乗るのは今回が初めてとなるからだ。その点、ベテラン勢はこれまでの経験があり、組み立てもしやすいはず。その中で誰が好調ぶりを見せるのか。昨年は平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)が予選2番手から初優勝、一昨年は石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO・INGING)がポール・トゥ・ウィン。オーバーテイクがなかなか容易でないもてぎでは、まず予選結果が重要となってくる。特に、今年はピット作業がない分、走り出したら作戦も何もない。それだけに各ドライバーの予選にかける意気込みは並々ならぬものがあるはずだ。まずは金曜日のテスト、土曜日のフリー走行の結果から、誰が予選で前に来そうなのか、楽しみにしていただきたい。そして、決勝では、何と言ってもスタートとタイヤがまだ温まり切っていないオープニングラップでの各ドライバーのつばぜり合いに注目。昨年は可夢偉がロケットスタートを決めるシーンが見られたが、今年はどんな名場面が見られるのか。感染対策から観客数を絞っての大会となる開幕戦。いずれにしても、久々の国内最高峰レースの興奮を心ゆくまで味わっていただければ幸いだ。