Headline News
野尻智紀今季2勝目、通算8度目の優勝で有終の美を飾る
2022年10月30日
晩秋ながら、午前中から陽射しが降り注ぎ、日向では汗ばむような陽気に恵まれた10月30日(日)の三重県・鈴鹿サーキット。午後2時30分からは、今年を締めくくる全日本スーパーフォーミュラ選手権最終戦・JAF GPの決勝レースが行われた。序盤から多くのバトルが勃発し、アクシデントも発生。セーフティーカーが2度導入される荒れた展開となったこの最終戦を圧倒的な強さで制したのは、PPスタートの野尻智紀(TEAM MUGEN)。野尻は2年連続チャンピオンの貫禄を見せる堂々たる走りで、今季2度目のポール・トゥ・ウィンをマークした。これに続いたのは、スタートで宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)をかわした大津弘樹(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)。大津は今季初表彰台を獲得している。そして3位にはやはり今季初表彰台獲得となる宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)が入賞した。ドライバーランキング2位を争っていたサッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)は4位、平川亮(carenex TEAM IMPUL)は5位。軍配はフェネストラズに上がっている。また、三宅淳詞(TEAM GOH)は今日のレースで8位に入賞したものの、佐藤蓮(TEAM GOH)にはポイントでわずかに及ばず。ルーキー・オブ・ザ・イヤーは、佐藤が獲得した。
午前中に行われた予選終了から4時間40分。いよいよ今シーズンを締めくくる最終戦・JAF GPのフォーメーションラップがスタートする。気温21℃、路面温度32℃と、昨日の第9戦よりも温かいコンディションのもと、21台のマシンが隊列走行に入る。ゆっくりとタイヤを温めながら1周を終えると、メインストレートでは多くのドライバーがバーンアウト。最後までタイヤを温めながら、正規グリッドに着いた。全車がグリッドに停止すると、後方でグリーンフラッグが振られ、シグナルオールレッドからブラックアウト。31周先のゴールに向けて、一斉にスタートが切られた。ここでホールショットを奪ったのは、PPの野尻。3番グリッドの大津が得意のダッシュで宮田の前に出る。さらに、4番グリッドの笹原右京(TEAM MUGEN)も好スタートを切り、1コーナーまでに宮田の前に出ることに成功。笹原はその勢いのまま、1コーナーでは大津に並びかける。しかし、ここは大津が、2番手のポジションを死守した。その後方では、クラッシュが発生。18番グリッドからスタートした福住仁嶺(ThreeBond Drago CORSE)がオーバースピードで1コーナーに入ると、アウト側の縁石にフロアをヒット。マシンは急激に左に向きを変え、福住はコースアウト。スポンジバリアに突っ込んだ。
このアクシデントによって、コース上にはすぐさまセーフティーカーが導入される。この時のオーダーは、野尻、大津、笹原、宮田、坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)、平川、フェネストラズ、三宅、山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)、大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)、牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、小林可夢偉(KCMG)、ジュリアーノ・アレジ(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)、国本雄資(KCMG)、佐藤、関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)、山下健太(KONDO RACING)、松下信治(B-Max Racing Team)、阪口晴南(P.MU/CERUMO・INGING)、大嶋和也(docomo business ROOKIE)となっていた。
福住のマシンの回収は素早く、2周を終えたところからは、レースがリスタート。それを前に、セーフティーカーの屋根の上のライトが消灯。ドライバーたちは、リスタートに向けての駆け引きを見せる。シケインではトップの野尻が大きくスローダウン、後ろから迫る大津に対しての牽制を見せる。その後ろのドライバーはシケインに入る手前で加速を開始していたが、野尻が大きくスピードを落としたこともあり、ブレーキを踏む状況となった。そこで、スピードが落ち過ぎ、アンチストールシステムが稼働してしまったのが、3番手を走行していた笹原。笹原がシケイン立ち上がりで加速しないため、宮田、坪井がこれをかわしていった。さらに、平川も一旦は笹原に迫ったが、最終コーナーで笹原がアンチストールを解除して、加速。1コーナーでは笹原が平川の追撃を凌ぎ、5番手のポジションを守った。また、その後方では、リスタート直前に15番手を走行中だった佐藤が縁石に乗ってスピン。セーフティーカーラン中のスピンということで、佐藤には5秒加算のペナルティーが科せられている。一方、笹原をオーバーテイクしていった宮田と坪井は、危険回避ということで、ペナルティーは出されていない。
レースがリスタートしたところでのオーダーは、野尻、大津、宮田、坪井、笹原、平川、フェネストラズ、三宅。トップの野尻は、いきなり1分39秒台から40秒前半のハイペースで周回を重ね、大津を突き放して行ったが、その後方ではリスタート後すぐに、バトルが勃発した。4周目に入るとシケインで7番手を走っていたフェネストラズが、オーバーテイクシステムを使いながら前を行く平川に迫る。平川もオーバーテイクシステムを稼働させながら、応戦。このバトルは翌周の1コーナーまで続き、フェネストラズがインから平川の前に出ることに成功した。その後は、多少落ち着いた展開となったが、後方では7周目には山下がアレジをオーバーテイクして行くシーンなども見られた。
そして、各車が10周を終え、タイヤ交換のウィンドウが開くと、笹原、三宅、山本、牧野、可夢偉、山下、アレジがピットイン。ここでもポジションの入れ替わりが起こる。笹原は順調に作業を終えピットに入った中ではトップでコースに戻る。しかし、2番手でピットに入った三宅のクルーは若干作業に手間取り、静止時間が8秒8。ここで山本が先にコースに戻った。また、この翌周、11周を終えたところでは、大津、坪井、国本がピットイン。坪井は、笹原の前でコースに戻ると、すでにタイヤが温まっている状態で後方から迫る笹原の追撃を凌ぎ切った。ところが、笹原は追撃の手を緩めず、13周目のシケインでは、坪井のインに飛び込んだ。坪井もアウト側ギリギリまで避けたものの、笹原のフロントウィングと坪井のリヤが接触。笹原はフロントウィングにダメージを負って、そのままピットロードに滑り込むと、フロントノーズの交換を行なった。その間に、笹原はラップダウンとなっている。また、その後方では、同じく13周目のシケイン進入で、松下がアレジのアウト側に並びかけ、オーバーテイクを試みるが、2台は接触。松下はコースアウトし、クラッシュしてしまう。ここでコース上には2度目のセーフティーカーが導入された。
このセーフティーカー導入によって、13周を終えたところで野尻、宮田、フェネストラズ、平川、大湯、関口、阪口と、まだタイヤ交換を行なっていなかったドライバーたちが一斉にピットイン。野尻は大津の前、宮田は大津の後ろでコースに戻る。また、フェネストラズは坪井の前でコースに戻ったが、平川は坪井の後ろ。ドライバーズランキング2位の座を争う2人の間には坪井が挟まれることとなる。
全車がタイヤ交換を終え、セーフティーカーの後ろに隊列を作った時のオーダーは、野尻、大津、宮田、フェネストラズ、坪井、平川、山本、三宅、大湯、牧野、可夢偉、山下。さらに平川との同時ピットで待たなければならなかった関口、阪口、アレジ、大嶋、国本、佐藤、笹原となっていた。
松下のマシン回収が終わり、レースがリスタートしたのは17周を終えた時点。このリスタートでも、野尻はガッチリとトップをキープするが、その後方では5番手にいた坪井がいきなりオーバーテイクシステムを作動させ、後方に対して逃げを打った。また、このリスタート直後には、大湯が1コーナーでアウト側から三宅をオーバーテイク。8番手に浮上している。その翌周からは多くのバトルが勃発。19周目のスプーンコーナーの入り口では、平川が坪井をオーバーテイク。さらに、続く130Rでは山本がアウトから坪井をオーバーテイクして行く。実は、坪井のマシンは笹原との接触でフロアにダメージを負い、ペースを上げられなくなっていた。その後も坪井にとっては苦しい展開。20周目の1コーナーでは大湯がアウトから坪井の前に出ただけでなく、同じ周のシケインでは三宅も坪井に並びかけ、翌周の1コーナーではアウト側から豪快に抜いて行った。その後、坪井は牧野にもかわされ10番手までドロップしている。また、19周目のバックストレートの後半では、前を行くアレジに迫った佐藤が、アレジの右側に並ぼうとしたが、佐藤のフロントウィングがアレジのリヤのフロアに接触、佐藤はダメージを負い、そのままピットに入って、フロントノーズ交換を行なっている。
ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得した佐藤蓮(TEAM GOH)
その後は10位の1ポイントを争う戦いが激化。19周目に可夢偉をかわして12番手に浮上してきた山下が、22周目の1コーナーでは関口に迫る。しかし、関口はS字まで山下の追撃を凌ぎ切った。さらに、23周目に入ると、一旦山下にかわされた可夢偉が、ヘアピンからの立ち上がり、200Rで山下を抜き返した。その前方では、10番手の坪井と11番手の関口が丁々発止の争い。24周目のシケインでは、関口が一旦坪井を攻略するが、次のストレートではオーバーテイクシステムを稼働させた坪井がポジションを取り戻す。関口にはこの時、もうオーバーテイクシステムは残っていなかった。しかし、25周目のシケインでは、再び関口がアウトから坪井をオーバーテイク。さらに、その後方からは可夢偉が迫り、ストレートではそれまで余り使わずにキープしていたというオーバーテイクシステムを稼働させて、1コーナーではイン側から2台をまとめて抜いて行くという離れ業を見せた。これで可夢偉はポイント圏内まで浮上し、関口、坪井が続く形となる。坪井と関口のバトルはその後も続行。27周目のストレートでは坪井が一旦前に出るが、その周のシケインでは関口が坪井を三度オーバーテイク。その後、坪井の再逆転はならなかった。また、同じく27周目のシケインでは、三宅の後ろに牧野が迫るが、牧野は進入のブレーキングでオーバーラン。前に出ることはできなかった。
決勝1位 野尻智紀(TEAM MUGEN)
決勝2位 大津弘樹(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
決勝3位 宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)
その頃、トップの野尻は、2番手の大津に対して5秒以上のマージンを築き、独走状態。それでも、最後まで全開でプッシュして行く。ファイナルラップも、残っていたオーバーテイクシステムを全て使っての走行。チャンピオンの風格漂う圧倒的な強さで、今季2度目のポール・トゥ・ウィンを達成した。これに続いたのは大津。大津は、野尻にこそ届かなかったものの力走を見せ、今季初の表彰台を獲得している。そして、3位には宮田。これまで予選でたびたびフロントロウを獲得してきた宮田だが、決勝ではこれが今季初の表彰台となった。以下、フェネストラズ、平川、山本、大湯、三宅、牧野、可夢偉までが入賞。最終戦を締めくくった。
来季、野尻の3連覇はあるのか。それとも新チャンピオンが誕生するのか。今から2023年の開幕戦が待ち遠しくなるような雰囲気の中、最終戦JAF GPは幕を閉じた。