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「SF19」シェイクダウン 記者発表も開催
2018年7月4日
7月4日(水)、静岡県富士スピードウェイで、全日本スーパーフォーミュラ選手権の次期新型車両「SF19」のシェイクダウンテストが始まった。今回テストを担当したのは、ホンダの開発車輛。現場のメインテナンスはDOCOMO TEAM DANDELION RACINGが担当し、同チームのエース野尻智紀が、イタリア・ヴァラーノでの動作確認テストに続いて、ステアリングを握った。また、正午には、倉下明JRP代表取締役社長と、デザインを手がけたダラーラアウトモビリ社のファビオ・グリッパSF19プロジェクトリーダーによる発表会も行われ、この新型車両の概要が説明された。
初日のセッションは午前9時から11時、午後2時から4時と計4時間が設定されていた。しかし、日本海側を進んでいる台風7号と、それに刺激された梅雨前線の影響で、富士スピードウェイ周辺も朝は雨。走行開始時刻の午前9時には、相当の雨量だったため、なかなかSF19もコースに出ることが叶わなかった。だが、次第に天候は回復方向となり、午前9時34分、いよいよ野尻はコースへと入って行った。動作確認を終えた野尻は、その後、新スペックのレインタイヤや基本的なセットアップを確認するためのテストに突入。9時52分にストレートを1本通過。午前10時09分になると、計測ラップに入る。この時点では、まだコース上の水の量が多かったものの、セッション終盤になるにしたがって、路面も回復方向に。午前10時52分、路面に合わせてフロントの車高を下げ、6回目のアウティングでコースに入った野尻は、アウトラップを終えた翌周に1分39秒672というセッションベストをマークしている。
セッションのインターバルでは、ピットビル3階のクリスタルテラスに場所を移して、SF19の説明会が行われている。会場では、まず倉下社長から開発の経緯が語られた。JRPサイドからは、これまでの“クイック&ライト”を継承しつつ、「よりオーバーテイクをしやすい」ことを第一の目標にして欲しいというリクエストを出したそうだが、それが開発のスタート地点となっている。
また、JRP側の意向として、SF14のパーツをできる限りキャリーオーバーし、コストを抑制して欲しいというリクエストもあった。そうしたリクエストに加え、2016年から施行されているFIAの安全規定に合わせて、シャシー開発は進められたとグリッパ氏は説明。具体的には、まずFIAの規定に合わせて、フロントノーズの位置が低くなっている。それによって失われるダウンフォースを取り戻すために、SF19ではフロントウィングのフラップが従来の2枚から3枚に増加。真上から見た時のフラップの形状も、これまでの直線的な物から、U字型になっている。また、サイドポンツーンの前に「シャシーウィング」と呼ばれる空力付加物を追加。ダウンフォースを増やすと同時に、サイドポッド内に空気を流す役割も担っている。サイドポンツーンの上には、「ポッドウィング」が追加されており、これもダウンフォースを増加させる。さらに、リヤの翼端板も、これまでのフラットな形状から、後ろに向かって少し開いたような形状となった。さらに、オーバーテイクシーンをより増やすために、横浜ゴムからは、従来より幅の広いフロントタイヤの使用した方が良いという提案があり、SF19では左右ともに20㎜幅が広いフロントタイヤが採用されている。その幅広タイヤの影響で乱流が起きることを考慮して、ダラーラではフロアの前方に切り込みを入れた。さらに、フロア自体の設計を完全に新しくすることで、下面でのダウンフォースを増大。このことにより、前方のクルマに近づいた時でも、空力バランスが変わり辛く、よりオーバーテイクしやすいクルマに仕上げたという。しかも、新しい安全規定を満たしながら、車重に関しては、SF14よりも8㎏、現行F1よりも80㎏軽く仕上げることに成功。全体のダウンフォースレベルは、現行F1に限りなく近いとのことだ。
午後2時からは予定通り、2回目の走行が開始。セッション開始から間もなくコースに入った野尻は、走り出すとすぐに1分39秒755と、午前中にマークしたベストに近いタイムを出した。その後、再び雨が降ったり止んだりを繰り返す中、野尻のマシンは車高やクルマの姿勢などを変えながら、メインストレートを定速で走るというテストを繰り返した。これは空力のデータ取りを行うため。セッション終了となる午後4時まで、この空力テストは続けられ、初日の走行を終えている。
野尻智紀選手のコメント
SF19を(イタリアで)外から最初に見た時は、カッコいいと思いました。シャシーウィングも、ポッドウィングもカッコいいなと思いましたし、フロントウィングも。付加物があればあるほどカッコいいと思いますよ。それに、誰しもがシェイクダウンを担当できるわけではないので、こういうチャンスをいただいたことに対して、すごく感謝しています。不思議なもので、その時々のタイミングで、僕はそういう場面にいられることが多いんですね。F3が312になった時も、国内で多分ホンダが最初に走らせた時も乗ったと思いますし、もっと前で言うと、カートの時も日本に初上陸したエンジンに日本人で最初に乗ったと思います。幸運なことに、そういう環境にいさせていただいているので、不思議なものだなと思う反面、やはり一生懸命やってきたから、こういう機会が巡ってきたのかなとも思います。なので、これからも自分のやれることをしっかりやって、レースと向き合っていこうと思います。(開発ドライバーは)大きい仕事じゃないですか。だから、この仕事をしっかりやらなきゃって。嬉しいですよ、もちろん。だけどそれ以上に“ちゃんとしよう”と。今日走っていてもクラッシュなんて絶対にできないですし、気は抜けない。それも自分にとって大きな経験になると思いますし、そういう経験をさせていただけているという嬉しさを感じています。
残念ながら今日はレインコンディションになってしまいました。SF19の場合は、タイヤも少し違いがあるんですけど、富士で今ぐらいの気温・路面温度の中で、現行のレインタイヤを装着したSF14で走行した経験も余りないので、直接的な比較は少しし辛いですね。それが今日走った印象です。前回、イタリアのヴァラーノではドライで走れましたが、SF14と比較してというのは、やはり難しいですね。ただ、その時は強大なダウンフォースがあると感じましたし、それを上手に使えれば、今のクルマより速くなるのかなと。そういうピークのダウンフォースの高さは感じました。より有効的にダウンフォースを使っていかないと速く走れないでしょうね。それはSF14でも同じことが言えると思いますが、同じダラーラ社が作っているので継承されている部分もあるでしょうし、そこからどれだけ今までのクルマと比べてパフォーマンスを上げられるか。そこは、今後、しっかり詰めていくことによって再現されると思います。SF14の延長線上にあるとは思いますが、ダウンフォースが抜けないようにということを思って作っているのかなという感じもしています。どういう状況でもダウンフォースを使って、速く走らせようみたいな。反面、ダウンフォースの使い方がすごく難しいという感触。前後どちらかに多くダウンフォースがあっても困りますし、バランスを上手に取るのが今まで以上に難しいのかも知れません。その辺は、日本のエンジニアやチームにとっても、挑戦しがいがあるクルマなんじゃないですか? 可能性は大いにあると思っていますし、決まったらものすごく速いと思います。ひょっとしたら富士の100Rは全開で行けるんじゃないかと思っていますよ(笑)。
今日は午後からの一定速のテストがメインでした。その一定速のテストに入る前、午前中はセットアップである程度のバランス取りをしましたね。ただ、雨でコース上に幾つか川もできていたので、すごくマージンを持ってのドライブでしたし、今日の所は何とも言い難いです。レインタイヤに関しては、ウォームアップは現行のものと変わらないかなと。幅がワイドになったということで、よくあるのはハイドロしやすいというのがありますが、今日の所はそこまで現行の物と大きな違いは感じられませんでしたし、グリップは決して低くない。スリックもヴァラーノで履きましたけど、違和感はありませんでした。見た目は少し変わっているのかも知れませんが、乗っていると“一緒”と感じますし、しっかりした狙いで作って、それを表現しているのかなと思います。
SF19を(イタリアで)外から最初に見た時は、カッコいいと思いました。シャシーウィングも、ポッドウィングもカッコいいなと思いましたし、フロントウィングも。付加物があればあるほどカッコいいと思いますよ。それに、誰しもがシェイクダウンを担当できるわけではないので、こういうチャンスをいただいたことに対して、すごく感謝しています。不思議なもので、その時々のタイミングで、僕はそういう場面にいられることが多いんですね。F3が312になった時も、国内で多分ホンダが最初に走らせた時も乗ったと思いますし、もっと前で言うと、カートの時も日本に初上陸したエンジンに日本人で最初に乗ったと思います。幸運なことに、そういう環境にいさせていただいているので、不思議なものだなと思う反面、やはり一生懸命やってきたから、こういう機会が巡ってきたのかなとも思います。なので、これからも自分のやれることをしっかりやって、レースと向き合っていこうと思います。(開発ドライバーは)大きい仕事じゃないですか。だから、この仕事をしっかりやらなきゃって。嬉しいですよ、もちろん。だけどそれ以上に“ちゃんとしよう”と。今日走っていてもクラッシュなんて絶対にできないですし、気は抜けない。それも自分にとって大きな経験になると思いますし、そういう経験をさせていただけているという嬉しさを感じています。