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「全レースで勝者が異なるという展開をお見せすることができた」 ヨコハマタイヤ シーズン総評

2019年10月30日

岡山大会同様、決勝でのタイヤ交換義務の特別ルールが採用された最終戦の鈴鹿。スタート時は、ポールポジションのアレックス・パロウがミディアム、それを追う2番手の野尻智紀はソフトと上位陣でも装着タイヤの選択が分かれるなど、戦略としてセーフティカー介入の可能性を意識したチームも多く見られたが、結果としてクリアなレースが繰り広げられた。一方、今大会では決勝中にミディアムタイヤが安定した速さを見せ、ソフトタイヤに対して遜色のないパフォーマンスを披露するなど、これまでとはまた違った筋書きを演出することになった。SF19での初シーズンを終えた関係者に改めて話を訊いた。

「全レースで勝者が異なるという展開をお見せすることができた」

「今回、レース中にソフト、ミディアムどちらのタイヤでもあまりタイムが変わらず、1分42秒台を刻んでいたようです。この要因は、やはりポールポジションスタートのアレックス・パロウ選手がミディアムタイヤでスタートしたことにより、”フタをされて”(ペースを抑えられた)、ソフトタイヤのペースが上がらなかったということです。そのあとしばらくするとソフトは1分41秒台に入っていましたから。ただ、今回はパロウ選手が(ミディアムで)しばらくトップを守っていた。これはつまり、ミディアムタイヤの速さを証明できたということになりますね。
鈴鹿では、決勝日の気温、路面温度がレースウィーク中で一番高かったのですが、優勝した野尻選手はもちろん、各ドライバーがソフトタイヤを全摩耗させて走っていました。周回数に合わせ、タイヤの性能を最大限使う形のペースを刻むことができた、道具としてうまくタイヤを使い切った、と言えるでしょう。少なくとも、開幕戦ではここまでタイヤが摩耗しておらず、まだうまく使えずにレースを終えていました。振り返ると、開幕戦以外のイベントでは、レース終了時にタイヤを全摩耗する形でうまく使っていました。チーム側がタイヤ特性をしっかりと理解し、どのくらいのペースで走るのがいいのかうまく準備できるようになったのだと思います。
今回、最後の最後で正統な(SC介入のない)レース展開となったわけですが、シーズンを振り返ると、色んな展開となる中でソフトとミディアムの両タイヤをうまく使い、速さと強さのあるクルマをうまく操ったドライバーがチャンピオンになった、という感じがします。鈴鹿はその集大成であったと思いますし、すべての力を使い切った勝利だったのではないでしょうか。

今年は新たにSF19が導入されたことにあわせ、新たなスペックでタイヤを準備し、フロントのタイヤ幅もこれまでより2センチ広がりました。チームの皆さんからも色々と意見されましたが、レース展開そのものは面白くなったと思います。タイヤ選択で作戦が分かれる形もできました。ときには”M(ミディアムタイヤ)を捨てる(すぐに交換する)”という形も見られましたが、これは仕方ないと思いました。エントラントの総意は実に明確で、去年はミディアムが良かったけれど、今年はソフトがいいということでしたから。速く走りたい、勝ちたいという思いがある以上、少しでも長く速く走れるタイヤを着けるのは当たり前なこと。逆にS(ソフトタイヤ)を無駄にゆっくり走らせて、持たせる走りをされる方がイヤでしたから。クルマも変わり、タイヤも変わり、どうなることかと思う中でうまく行ったこと、そうは行かなかったこともありましたので、その点をしっかりと来シーズンに反映させていかなければならないと思います。
開発を進める中、速さを追求することには変わりありません。各サーキットでのコースレコード更新を狙いましたが、すべてにおいて実現できたわけではありません。今シーズンはSF19+ソフトタイヤでのアタックでしたが、鈴鹿でコースレコードをマークしたのは、幅の狭いミディアムタイヤ(2017年開幕戦:1分35秒907)だったことをお伝えしておきます。今年はSF19としての初戦だったので難しい状態でしたが、今回ポールポジションを獲ったパロウ選手は、アタック中にミスがあったということだったので、もしそれがなければ更新できた可能性もあります。そういう点からしても、来シーズンはコンディションさえ整えば、(レコード更新は)余裕だと思います。鈴鹿に限らず、他のサーキットでも更新を狙っていきたいですね。
今年のレース展開を見て感じたのは、ソフトタイヤだけでも十分に作戦のバリエーションを作ることができるだろうということでした。ただ、ミディアムとソフトという2スペックタイヤでレースをする以上、サプライヤーとしてできることは何か、またどのような2種類を提供していくかをつねに考えていかなければならないと思っています。ドライバーはワンメイクタイヤでのコンペティションとはいえ、コースレコード更新への挑戦含め、本能的にもっと速いタイヤを欲しがります。一方、一年間時間をかけてようやくSF19を理解し、タイヤのこともわかったというチームの立場からすれば、”また来年新しいタイヤを用意するの!?” という思いもあるでしょう。ワンメイクタイヤとしてイコールコンディションだとは言え、何をどう提供するかによって、チームへの有利/不利には違いがあるので、何をもって平等とするかは難しいです。変化によって悪いところが見えて改善できる、というケースもありますしね。ただ、今年提供したタイヤにより、結果として全レースで勝者が異なるという展開をお見せすることはできました。そういう話題性は提供できたと思います。」

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