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山本 尚貴が3度目の戴冠! レースは坪井 翔が今季2勝目獲得

2020年12月20日

午前中の予選に続き、美しい冬晴れに恵まれた12月20日(日)の静岡県富士スピードウェイ。午後からはいよいよ全日本スーパーフォーミュラ選手権最終戦の決勝レースが行われた。このレースで優勝を果たしたのは、フロントロウから好スタートを決めた坪井翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)。タイヤ交換のタイミングと作業が上手くハマり、後半には自力でポジションを上げた大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)が2位。大湯は、前回の鈴鹿に続き2戦連続表彰台獲得となった。3位には、シーズン後半から助っ人としてシリーズに復帰した松下信治(Buzz Racing with B-Max)が入賞し、今季初表彰台を獲得した。4位に入賞したのは、最後尾グリッドからスタートしたニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)。これが日本での最後のレースとなるキャシディは、決勝での強さを如何なく発揮し、数々の見せ場を作った。ポイントランキングトップでタイトル争いを演じていた山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)と平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)は、それぞれ5位と6位。タイヤ交換前後には直接対決となり、一旦は平川が前に出たものの、そのポジションを山本が取り返し、3度目のチャンピオンタイトルを手にしている。

午後1時40分からは、決勝に向けてのスタート進行が始まり、各車は8分間のウォームアップ走行に入る。そこでいきなり異変に見舞われたのは、関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)。走行中にギヤが入らなくなったという関口のマシンは、最終コーナーを立ち上がったところで大きく白煙を上げる。その白煙はみるみるうちに炎となり、マシンを包んだ。幸い関口は無傷で車両から脱出したが、この火災によって決勝への出場はならず。関口の車両回収と、コース路面の清掃が行われた後、ウォームアップ走行が再開されている。
フォーメーションラップがスタートしたのは、当初の予定より22分遅れの午後2時47分。気温9℃、路面温度13℃というコンディションの中、19台のマシンのエンジンに火が入ったが、ここでタチアナ・カルデロン(ThreeBond Drago CORSE)のマシンに異変が発生。クラッチがつながらず、走り出そうとするとエンジンストールしてしまう状態になり、カルデロンはピットスタートとなる。また、このフォーメーションラップ中、13コーナーでシャルル・ミレッシ(Buzz Racing with B-Max)がスピン。エンジンをストップさせてしまった。ミレッシはそのまま決勝のスタートを切ることなく、最終戦を終えている。

寒い時期ということもあり、2周のフォーメーションラップを終えると、各ドライバーは正規のグリッドに。全車がグリッドに着くと、後方でグリーンフラッグが振られ、シグナルオールレッドからブラックアウト。ここでホールショットを奪ったのは、2番グリッドの坪井だった。動き出しが鈍ったPPの野尻智紀(TEAM MUGEN)は、何とか2番手を守って1コーナーに入ったが、2コーナーの立ち上がりでは、4番グリッドからロケットスタートを決め、イン側のラインを爆走してきた松下の先行を許した。山本も一つポジションを落として4番手で1コーナーに。笹原右京(TEAM MUGEN)は5番手のポジションを守った。その後ろでは、アウト側から1コーナーに入って行った大湯とイン側のラインを取りながら、前が詰まる形となった福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)がつばぜり合いを演じ、軽く接触。福住は1コーナーでアウト側にはみ出しただけでなく、フロントウィングにダメージを負い、大きくポジションを落とすことになった。大湯もこの争いの中で平川の先行を許している。そのさらに後方では、最後尾スタートのキャシディがいきなり8つポジションアップを果たした。
上位集団では、僅差の戦いが続いていたが、その中で4周目にポジションを上げてきたのが、平川。最終コーナーの縁石に乗り、クルマが跳ね上がるシーンを見せた笹原の後ろに迫った平川は、1コーナーでアウト側から並びかけると、笹原をパス。5番手に浮上してくる。そこから前を行く山本を1秒以内の僅差で追った。8周目の1コーナーでは、オーバーテイクシステムを作動させながら山本の後ろに迫る平川。だが、ここでのポジション入れ替わりはなかった。同じ周には、キャシディがサッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)をオーバーテイク。11番手にポジションを上げてくる。

そして、今回は早めにピットも動き始めた。坪井が10周を終えての第1セーフティーカーラインを超え、タイヤ交換のウィンドウが開くと、3番手を走行していた野尻がピットイン。また大湯、山下健太(KONDO RACING)もピットに入る。だが、野尻のクルーはオートポリスと同様、右フロントタイヤの交換に手間取る。ホイールガンからナットを飛ばしてしまい、新しいナットに付け替えなければならなかったため、作業には11秒6を要してしまった。これで大湯が野尻の真後ろにつくこととなる。優勝するしかタイトルの目がない野尻にとっては、痛恨のミスとなった。
これに続き、11周を終えたところでは、石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO・INGING)と中嶋一貴(VANTELN TEAM TOM’S)、大津弘樹(TCS NAKAJIMA RACING)、12周を終えたところでは大嶋和也(ROOKIE Racing)もピットイン。さらに、コース上での山本とのバトルが膠着していただけでなく、タイヤ交換後の野尻や大湯とのタイム差を考慮して、14周を終えたところでは平川がピットに入った。平川のピット作業は7秒3とまずまず。しかし、コースに戻ったのは、野尻の後ろ、大湯の前。さらに平川は1コーナーでオーバーランし、大湯の先行を許した。その翌周には、今度は松下と山本がピットイン。松下は野尻、大湯の前でコースに戻ることに成功した。山本は、平川とほぼ同等の7秒3というタイヤ交換作業で、野尻の後ろでコースに復帰。しかし、その先の1コーナーでは大湯が山本をかわして行く。さらに、オーバーテイクシステムを作動させながら山本の後ろに迫ったのが平川。野尻が勝てない場合、この2台の位置関係が、そのままタイトル争いとなるため、ここが決勝の勝負所だ。すでにタイヤが温まっていた平川は100Rで並びかけると、ヘアピンで山本を一旦はかわして行く。しかし、同じ周の最終コーナーからオーバーテイクシステムを作動させた山本が、今度はメインストレートで平川をオーバーテイク。平川は、前の周にオーバーテイクシステムを使っており、ここでは使うことができなかった。

この事実上のタイトル争いが過熱する中、16周を終えてピットに入ったのはトップを走る坪井。坪井のクルーは難なく作業を終え、松下の前に坪井を送り出した。これで見た目上のトップに立ったのは、笹原。これにキャシディ、サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)と続いたが、フェネストラズは17周を終えたところで、笹原は20周を終えたところでピットイン。キャシディだけがステイアウトを続けていた。前方が開けてからのキャシディは、鬼気迫る猛プッシュ。タイヤ交換を終えた組のトップにいる坪井や松下、大湯よりも早い1分22秒台のタイムを連発して行く。ほぼ毎周のように自己ベストを更新するまさに”王者の走り”だった。
一方、いよいよレースが終盤に差し掛かろうかというところで、異変に見舞われたのは、野尻。左フロントタイヤにダメージを負った野尻は、29周目のヘアピンの入り口で突如マシンを止め、リタイヤとなっている。この瞬間、野尻のタイトルの可能性は完全に消滅した。

この野尻のトラブルを見て、動いたのがVANTELIN TEAM TOM’Sのピット。セーフティーカー導入の可能性も考えたためか、30周を終えたところでキャシディをピットに呼び戻す。ここで7秒8というタイムで作業を終えると、キャシディは山本の後ろ、平川の前でコースに復帰した。2コーナーを立ち上がったキャシディは、後方から迫った平川を制止するように手で合図。そこから前を追った。この時点で、トップの坪井までは8秒9。残り周回数とペースを考えれば、ひょっとすると優勝さえ狙えるのではないかという状況だった。もちろん、キャシディが逆転優勝すれば、キャシディの2連覇となる。

そのキャシディは32周目に1分22秒342、33周目には1分21秒680と好タイムを連発して、山本に迫る。その前方では、2番手争いも白熱。後半に入ってペースを上げていた大湯が、1コーナーで松下を捉えて、2番手に浮上した。また、それに続いて山本とキャシディの4番手争いも接近。2台はサイド・バイ・サイドで2コーナーを立ち上がり、意地と意地の踏ん張り合いを見せたが、Aコーナーでタイヤの状態がいいキャシディが前に出ることに成功した。キャシディと前を行く松下の差は、この段階で4秒3。そこからキャシディはジワシワとトップ3に迫って行った。
最終盤に入ると、そのトップ3の争いも超接近戦に。36周目の1コーナーでは、大湯がオーバーテイクシステムを作動させながら、アウトから坪井に迫る。大湯はここでオーバーテイクシステムを使い切り、坪井はポジションを死守。トップの座を明け渡さなかった。そこからチェッカーまで大湯、松下も1秒以内の差。最後は等距離でキャシディも加わってきた。

しかし、この後の順位の入れ替わりはなく、最終ラップまでオーバーテイクシステムを残していた坪井が逃げ切り。第2戦岡山に続き、今季2勝目を挙げた。その結果、坪井はランキング3位となっている。2位には前回の鈴鹿で涙の初優勝を果たした大湯。大湯は、ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得している。3位には、今季中盤からシリーズに復帰した松下。
このレースで日本から去ることを決めていたキャシディは、大いに見せ場を作り、4位で最後のレースを締めくくった。5位に入った山本が3度目のチャンピオンを獲得。6位に終わった平川は、ランキング2位で1年を締めくくっている。また、チームタイトルは、VANTELIN TEAM TOM’Sが獲得した。


 

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