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高桐 唯詩 スーパー・クリップ

2019年12月2日

クリップNo.21

「もう世界のレジェンドといって良い」
 
2~3歳の頃から、ロンドンやラングレー。鳥のさえずりが聞こえる家で暮らした。
「Go Nakajima! Be careful!」英語で父を応援した。
青年時代は、静かな学園都市オックスフォードで生活。
だから中嶋一貴には、英国人のようなたしなみが身につき、
せかせかした日本人の営みとは一線を画す人格を持つに至った。
しかも、カートで走ってみたら速かった。DNAとは不思議なものだ。
2007年のGP2、ハンガリーでの2位表彰台を、
あのサトル・ナカジマが目を細めて眺めた日から12年。
一貴は、F1を経て、日本のフォーミュラで2度チャンピオン。
2度のル・マン勝者。WECのチャンピオンとなって世界に名をとどろかす。
一貴の存在はもうすでに世界のレジェンド級である。
私たちの国に、こういう素晴らしいドライバーがいることを、
私たちはもっと誇りに思って良い。

クリップNo.20

「「人と違う道を行け だから雄飛は面白い」
 
運転免許取得年齢に達しない15歳で、限定Aライセンスを発給された。
行こうと思えばF1に行けたはず。
しかし速すぎる少年は、進路が定まらないまま成人。
ようやくイタリアのフォーミュラで武者修行。
フェラーリのアカデミーからF1という栄光の道もあったかもしれない。
しかし雄飛のレース人生は一直線にはいかず、大いなる道草の末に
2016年スーパーフォーミュラにたどり着いた。
この年の、菅生のレースは圧巻だった。
2位以下を大きく引き離したところでセーフティカーが入り、
「雄飛一人が、絶対不利」の状況から神がかり的走りで、優勝を果たした。
闘将、星野一義が思わず涙を流して感動した。
「人と違う道を行け」雄飛の生き方は奔放そのもの。
なぜ、君はそんなに速いのか? と一度聞いたことがある。
「きっと、そこが才能と呼ぶ部分だと思います」と彼は言った。
他人が想像する最大の限界を、さらに超えたところに、
雄飛の限界が存在するのだろう。
毎年毎年、一回は優勝する。だけどもっと勝ち続ける姿を見てみたい。
無敵の雄飛を見たいのだ。

クリップNo.19

「特別な魔術はない。良き友と良き人々が支えてくれた」
 
普通のサラリーマンの子が地道にレースを始めた。
大学生の時、父の仕事に同行し中嶋企画を訪れ、小暮選手から
サインをもらったエピソードがある。
カート選手権出身でもなく、フォーミュラトヨタのスクールでは、
速いが、最年長を理由に不合格。
理不尽な状況。資金もなく、コネもないところから這い上がる。
可夢偉や、大嶋との友情を大切に、一歩一歩進むうち、
友や、良き師、支援者に恵まれ、日の当たる場所に出てきた。
転機は2014年スーパーフォーミュラへの復帰。
2015年岡山でポールを奪い、懐かしの可夢偉とのバトルを制し初優勝。
初のチャンピオン獲得。一気にブレイクした。
石浦には特別な魔術があるわけではない。
強いて言えば、手堅く乱れず、一周一周が速い。
最終コーナーなどの上手さはアラン・プロストのようだ。
2017年はガスリーやローゼンクヴィストなどを抑えて2度目のチャンプ。
苦労人だが、苦労を見せず、いつもさわやかでユーモアに溢れている。
普通の子だってスーパースターになれる。苦労した分幸せは大きい。

クリップNo.18

「天才カート少年、ベテランの域に達する」
 
父の勧めで6歳からカートを始めた。
速さは磨かれ、ジュニアカートJAFカップチャンピオンをはじめ、
多くのタイトルを獲った。
山本尚貴とは2歳兄貴分。ともに栃木県のイメージアップに尽くし、
時には、山本といじり、いじられる良き友であり、ライバル。
2008年海外遠征し、シリーズ6位になったが、その頃のF1は下降傾向にあり、
道はなかった。
活躍は国内に絞られ、2012年のオートポリスで鮮やかに初優勝。
近年は一台体制でもがく日々が続くが、
時に、すごいストラテジーでサーキットを沸かせている。
チームも本人もモチベーションは高く、まだまだ頂点を目指す。
是非もう一度、優勝する姿を見たい。その力は十分ある。
また、これから出てくる若い人たちのために、
広大のレース論を、自身の走りで伝えていってほしい。
 
 

クリップNo.1~4はこちら
クリップNo.5~8はこちら
クリップNo.9~12はこちら
クリップNo.13~17はこちら

 
 

Super Clip スーパー・クリップ
レースウイークエンドの鮮烈なモーメントを
超一流フォトグラファーと詩人が捉えるコーナー。
オフシーズン第一弾はSFに参戦する「ベテラン」ドライバーのモーメントを捉える。
Photography by M.Kobayashi & Y.Onishi
Word by Tadashi Takagiri
執筆者紹介
Tadashi Takagiri
詩人&ジャーナリスト。1970年よりレース取材。フジテレビF1中継の
アバン・タイトル・ポエムすべてを執筆。F1総集編30年執筆。
伝説のラジオ番組「アドバンサウンドコックピット」構成者。

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