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高桐 唯詩 スーパー・クリップ 2020年第4戦オートポリス 編

2020年11月27日

クリップNo.49 野尻 智紀

「プロとしての自覚で磨いた技」

 

レーシングドライバーの本分って何だろう?
野尻のSF初優勝は2014年の菅生。メンタルもフィジカルも弱かった青年が、
あの瞬間からプロとして自覚。進むべき道を決めた。
野尻は職業に対して、真摯な考え方を持つ。
「人の役に立ちたい。今やっていることを極めたい」
だから必要以上に自分を大きな存在に見せたりはしない。
チームにおいても、さまざまな役割の人がいるから他人の立場を敬う。
じっくりクルマを煮詰め、レースを組み立てていく。
体調と体重をコントロールするため、食事に気を遣う。
弱く見えた青年は、年齢と共にたくましい男に成長。
スーパーGTでも見事な勝利。
いわゆる「乗れている状態」でオートポリス入りした。
FP1から、上位に名を連ね、見事ポールポジションを獲得。
中野監督「今、何をなすべきか非常によく分かっている男」
GTの先輩、土屋圭市からは「俺はお前の速さに惚れたんだ」
そう言わしめるほどの存在になり、やるべきことをやり、優勝した。
見事、職業人として、一つの見本を見せた。
レーシングドライバーには円熟の時間が、必要なんだと思い知る。

 
 
 
クリップNo.48 タチアナ・カルデロン

「すべてが学び。日本でレースできる幸せ」

 

不思議な存在である。
タチアナがいるだけで、そこに光が当たり、
みんなが彼女のために夢中になってしまう。
はじめてのオートポリス。波乱の予選。残り3分のアタック。
トラフィックに引っかかりながらも1分27秒168。
決勝は周回ごとにタイムを上げ1分30秒台をコンスタントに並べた。
「反省することが多い」と振り返ったがテストもままならない中、
立派なレースだった。
コロナの自粛期間が終わると日本を満喫。
九州の田舎景色や房総、都心で秋の味覚を楽しんだ。
欧州は今、自由に外出できない状態。「今の君は最もハッピーだね」
と言うと「本当です。日本でたくさんのことを学んでいます」と笑う。
さあ次はグランプリサーキットの鈴鹿。どう攻める?
「まず伊与木さん(エンジニア)とコースを歩くと思います。
F1ドライバーが称えるサーキットですから身震いするほど楽しみです。
ファンの皆様、ガンバリマス」
ベストな食事とトレーニングで体を整え、鈴鹿に挑め。

 
 
 
クリップNo.47 シャルル・ミレッシ

「日本で鍛えられるフランスの若者」

 

B-Max Racing Teamは神奈川県綾瀬市にある輸送機部品製造業に
端を発したチーム。
レースにかける情熱は熱く、どこにも負けない。
以前のF3=スーパーフォーミュラ・ライツも含め、技術力と友情と心意気のチームだ。
2020年、セルジオ・セッテ・カマラとシャルル・ミレッシでエントリー。
ミレッシは2001年3月4日、フランス、コートドール県タラント生まれの19歳。
コロナの余波で、ようやくオートポリスで実戦が実現した。
FP2では1分25秒764で15番手だったが、予選は波乱があり26秒台。
本山哲スーパーバイザー「まだまだ若いです。冬のテストでは体も細いし、
体力が持つのか心配しましたが、スピードの感覚は持っています。これが
初レースですし、学ぶことは多いですね」
決勝はしばらく18位。結果は15位。フォーミュラ・ルノー時代に
モナコで優勝した実力があるだけに慣れてくれば上位も狙えるだろう。
事情で来日不可能となったセッテ・カマラ選手について本山哲は
「ワイルドに見えて実はすごく素直で、あらゆることを一から百まで
聞いてくるんです。だから速くなる。シャルルもいろいろ聞いてきます。
ここから経験を積んで勉強ですね」
強豪だらけの中、シャルル・ミレッシの今後が楽しみだ。

 
 
 

クリップNo.46 松下 信治

「人生の急展開。未来に向かって再出発」

 

F1を目指しFIA F2に挑んでいた松下信治。NOBU。
2015年ハンガリーで日の丸を上げ、2016年はモナコを制した。
2019年にはモンツァでも勝ち、今年はスペインで勝った。
日本期待の星が、9月にヨーロッパを離れ帰国。
セルジオ・セッテ・カマラのピンチヒッターとして、
B-Maxからレースに臨んだ。電光石火、あっという間の決定だった。
予選から存在感を見せQ3まで進出。6番手から決勝を迎えた。
スタートが切られると松下は4位に上がり山本とバトル。
その後、ピットストップで7位。最終結果は6位。悔しいリザルトだった。
本山哲スーパーバイザーは言う。
「カート時代、僕が監督でチームをやりました。今回シートがない状態から、
チャンスを得て、次につなげる意志は見せることが出来た。
表彰台に乗るパフォーマンスはあり、3位の可能性があっただけに、
タイヤ交換で時間を食い、申し訳ないことをしました」
走り方に関して本山哲もアドバイス。松下も修正し、完璧にこなし、
久々の国内フォーミュラに充実感を感じた。
「松下を始め、日本の若手ドライバーたちにはどんどん優勝して時代を変えてほしいです」
海外雄飛の若者に今、苦境の時代が来た。未来を切り開け。みんな頑張れ。

 
 
 
 
 
 

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Super Clip スーパー・クリップ
レースウイークエンドの鮮烈なモーメントを
超一流フォトグラファーと詩人が捉える新コーナー。
今回は「オートポリス、天高く秋に羽ばたく」というテーマで。

Photography by M.Kobayashi & Y.Onishi
Word by Tadashi Takagiri

執筆者紹介
Tadashi Takagiri
詩人&ジャーナリスト。1970年よりレース取材。フジテレビF1中継の
アバン・タイトル・ポエムすべてを執筆。F1総集編30年執筆。
伝説のラジオ番組「アドバンサウンドコックピット」構成者。

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